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嫌われ者  作者: 弥生
第一章
16/46

11

 今日も雨が降っていた。二日連続の雨。これでは洗濯が進まない。

今日はグンターは所用で出かけるとの事で、ハルヤは朝一番に呼び出されてお見送りをさせられた。

ただ単にグンターの部屋から鞄を持って、玄関までついて行くだけだ。鞄は大きくて、小柄なハルヤが持つと一層大きく見える。玄関前には立派な馬車が待っていた。

メイドの中ではハルヤだけがお見送りを担当した。その様子をエッダとドリスが階上の窓からそっと見ていた。

雨が降っていて、これでは今日も洗濯は出来ないなと思いつつ、ハルヤは外を眺めながら窓拭きをしていた。


「洗濯をしなさい」


にわかに信じがたい事を言ってきた。ハルヤが振り向くとそこにいたのはドリスだった。

雨が降っていて洗濯は出来ないと返答したが、ドリスは厳しい表情を全く変えずに同じことを言う。


「何を言っているのですか。雨が降っています」


ハルヤが思わず強い口調で言い返すと、ドリスは表情を変えないまま真直ぐハルヤの眼前にやってきて、右手で頬を平手打ちした。

「パン」という短い音が長い廊下に響く。カーラは気づいていたが下を俯いたまま、エッダは見て見ぬふりをする。

そのままハルヤの眼前でドリスは言った。


「口答えするな」


そういうと振り向いて立ち去っていった。

 ハルヤは雨の中、洗い物が沢山入った洗濯桶を持って裏庭の井戸に向う。

井戸には屋根が無い。当然すぐに全身下着まで濡れた。水分を吸ったメイド服は重く、洗濯桶の中の洗い物も水分を含んでとても重くなった。

そんな中で洗濯をしても無意味なのは言うまでもない。意味があるのは、ドリスだけだろう。

髪は濡れて顔に張り付き、雨が川のように顔を流れる。雨はまだ冷たかった。ハルヤは涙が全て枯れるほどに泣いた。

嗚咽は雨のザーザーという音でかき消された。

 ずぶ濡れの状態で屋敷に戻ると、濡れたままの状態で屋敷に入る事を拒否された。

屋敷が水浸しになってしまうからだ。ハルヤは躊躇せず全部脱いで屋敷に入り、そのままの姿でドリスに洗濯の完了を告げる。

ドリスは満足げだったし、ハルヤの惨めな姿を見て笑っていた。

ハルヤの目は虚ろだった。

 全裸のままで掃除を始めたハルヤをさすがに惨いと思ったのか、カーラが隙を見てこっそりハルヤの自室に行き、馬小屋の掃除をした時に使った大き目の布を持ってきた。

カーラは何も言わなかった。いや、何も言えない。

無言で俯いたまま、布をハルヤに手渡してすぐに自分の持ち場に戻っていった。

ハルヤが手に持った布を見ると、そこにまた涙が落ちた。

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