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魔物の街 6

「これから本部で見るものは他言無用で」 

 住宅街から幹線道路へ出ようとハンドルを切る茜ははっきりとそう言った。

「良いんですか?私も来ちゃって……」 

 後部座席にラーナと誠にはさまれてもじもじしているサラはそうつぶやく。

「オメーも保安隊の隊員だろ?いずれは見なきゃならねーもんだ。まあそれにいまさら緘口令も……一時的なものになりそーだしな」 

 助手席にちょこんと座っているランがそう言った。後ろからまるで見えないところが誠の萌えの心を刺激する。

「じゃあラーナ。二人に説明してあげてちょうだい」 

 信号に引っかかった車。ハンドルを指ではじきながら茜がそう言うとラーナは再び小型の端末を取り出す。

「先ほどのミイラ化した死体ですが身元はすべて判明しているんです。ただ、年齢、職業、出身地とかいろいろ当たりをつけてみたんですけどまるで共通点が無くて……」 

「法術適正は?」 

 誠のとりあえず言いました的な言葉に噴出すラン。

「あのなあ、神前。法術適正が無ければ勝手にミイラになるわけがねーだろ?それ以外の共通点の話をしてるんだよ」 

 子供に意見されたようでつい口を尖らせる誠。ラーナはそんな誠を見て少し微笑んだ後、再び目の前に画像を展開させる。

「全員の共通点では無いんですが、あえて特徴を挙げるとすれば、7人のうち4人は租界の難民でした。しかもその四人全員が女性なんです。特徴として言えるのはこれくらいでしょうか……」 

 そう言って再び首をひねるラーナ。何しろデータを取るには7人と言う数は少なすぎると誠は思った。

「でもそれだけじゃデータを取る意味が無いんじゃないですか?」 

 そんなサラの言葉に頭を掻くラーナ。今度はランはその体に大きすぎるシートから身を乗り出して三人を眺めてくる。

「あのなあ、見つかったデータが少ねーのは良いことじゃねーか。それとも何か?もっと大量の仏さんが出来るまで捜査は待ってくださいと司法局に泣きつこうってのか?」 

 またランが引っ込む。サラは困ったような表情でラーナを見つめている。

「そうですわね。確かに共通点を割り出すには少ない人数とは言えますけど、逆にこれだけ共通点が無いと言うことも一つの糸口になるかもしれませんわ」 

 高速道路へ車を載せた茜の一言。それが何を意味するのか誠にはわからなかった。

「つまりだ、共通点を見出せないようにする必要があった可能性があるんじゃねーかってことだ。これが事故や個別に発動した事件だったとしたら、何がしかの共通点があるのがふつーだろ?場所は限られているんだ。特に港湾地区はよその住人が喜んで出かけるような場所じゃねーんだろ?」 

 ランの言葉に誠もようやく茜の意図が理解できた。港湾地区は治安が悪いと言うのは誠の大学時代からよく知られていたことだった。再開発から取り残された使われない倉庫と町工場の跡しかない街に通りすがりの人間が立ち寄り、しかも事件に巻き込まれる。ありえない話では無いだけにランの言葉にも重みを感じた。

「でもなー。誰かが意図的に仕掛けたとして、何のためか?そして誰がやったか?その辺の事情は身元を洗っただけじゃわからねーのも確かなんだよなー」 

 そんな言葉を吐きながらランが大きくため息をついた。

「だから会いに行くんですわ」 

 突然の茜の言葉、バックミラーに移る彼女の父惟基を髣髴とさせる悪い笑顔が誠の不安を激しく掻き立てた。

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