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魔物の街 18

 一見、グラマラスな美女に見える要だが、100kgを超える軍用義体。そして骨格は新世代チタニュウム製である。そのままアイシャは蹴り上げた右手を中心に回転して誠の頭に全体重をかけての頭突きをかますことになった。

「痛てえ!」 

「痛いじゃないの!誠ちゃん!」 

 アイシャが叫ぶが要は涼しい顔でタバコをくゆらせている。

「オメー等何やってんだ?」 

 入り口に現れたのはトランクを抱えたと言うか大きなトランクに押しつぶされそうな状態のラン、そして同じように荷物を抱えた茜とラーナがいた。

「なんだ?引越しか?」 

「仕方ねーだろ?昨日の件でオメー等の監視をしなきゃならねーんだから」 

 要のタバコに嫌な顔をしているラン。

「ごめんなさいね、皆さんを信用できないみたいな感じで。まあちょうど技術部の方が六人、大麗宇宙軍に異動になって部屋が空いたと島田さんから連絡があってそれで……」 

 茜の言葉に要、カウラ、アイシャの視線が島田に向いた。

「しょうがないだろ!同盟司法局の指示書を出されたら文句なんて言えないじゃないですか!」 

 島田が叫ぶとそのすねを思い切り蹴飛ばすラン。

「何か?アタシ等がいると都合が悪いことでもしてんのか?」 

 弁慶の泣き所を蹴り上げられてそのまま転がって痛がる島田。

「そう言うわけだ。世話になるぜ」 

 そう言ってランはいつの間にか同じようにトランクを持って待機していたサラの手引きで階段に向けて歩き出した。

「どうすんだよ!ちっちゃい姐御が来たら……」 

「みなの緊張感が保たれて綱紀が粛正される。問題ないな」 

「カウラ!テメエ!」 

 カウラと要がにらみ合う。ようやく痛みがひいたのかゆっくりと立ち上がったアイシャが島田に詰め寄る。

「正人ちゃん。サラが来てた様な気がするんだけど……それも指示書にあったの?」 

「ありました!なんなら見せましょうか?」 

 サラとの付き合いが公然の事実である島田が開き直る。そしてそのままアイシャは胡坐をかいて目をつぶり熟考していた。

「茜さんは元々仕事以外には関心が無い。問題ないわね。ラーナも同じ。そしてサラはいつも私達とつるんでいるから別に問題ない。そうすると……」 

「やっぱちびじゃねえか!問題なのは!」 

 要とアイシャが頭を抱える。ほとんどの隊の馬鹿な企画の立案者のアイシャとその企画で暴走する要にとって、そのたびに説教を始める保安隊副長クバルカ・ラン中佐と寝食を共にするのは悪夢以外の何者でもなかった。

「まあ、おとなしくしていることだ」 

 そう言うと立ち上がったカウラが要の首根っこを掴む。

「わあった!出りゃ良いんだろ!またな」 

 立ち上がる要。アイシャはぶつぶつ独り言を良いながら立ち上がる。

「まったく。面倒な話だな」 

 島田も彼女達を一瞥するとそのまま立ち上がり、誠の部屋のドアを閉めた。

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