魔物の街 17
膨れ上がった眼球が誠の恐怖をさらに煽る。だがもはやそれは形が眼球の形をしているだけ、もうすでに見るということなどできる代物ではなく、ただ誠の恐怖をあおる程度の役にしか立たない代物だった。
『神前曹長!狙うのは延髄です!そこに剣を突き立てて干渉空間を展開してください!神経中枢のアストラル係数を反転させれば再生は止まります!』
ラーナの言葉に剣を正眼に構える誠。突きを繰り出せるように左足を下げてじりじりと間合いをつめる。
しばらくして飛び出した眼球が誠を捉えたように見えた。その人だった怪物は誠の気配を感じたのか、不気味なうなり声を上げる。次の瞬間、その生物からの強力な空間操作による衝撃波が誠を襲う。だが誠もそれは覚悟の上で、そのまま一気に剣を化け物の口に突きたてた。
「ウギェーヤー!」
喉元に突き立つ刀。化け物から血しぶきが上がった。誠の服を血が赤く染め上げていく。しばらく暴れる化け物。突きたてた誠はそのまま刀を通して法術を展開させる。
『あ・り・ガトウ』
脳裏にそんな言葉が響いたように感じた。誠の体をすぐに黒い霧が化け物を包む。もがく化け物の四肢が次第に力を失って……。
同じように誠も意識を失った。
誠は起き上がった。寮の自分の部屋。カーテン越しにすでに朝であることを確認する誠。
「しばらく見るだろうな。こんな夢」
そう思った誠が布団から起き上がろうとして左手を動かす。
何かやわらかいものに触れた。恐る恐るそれを見つめる誠。
「おう、早いな」
眠そうに目をこする要。その胸に誠の左手が乗っていた。
「お約束!」
手を引き剥がしてそのまま部屋の隅のプラモデルが並んでいる棚に這っていく誠。
「おい、お約束ってなんだよ。アタシがせっかく添い寝をしてあげてやったっつうのによ!」
要はそう言うと自分の部屋から持ってきた布団から這い出し、枕元に置いてあったタバコに火をつける。そのまま手元に灰皿を持ってくるが、そこに数本の吸殻があることから、要が来てかなり時間が立っているのを感じた。
とりあえず誠は息を整えて立ち上がり、カーテンを開けさらに窓を開けた。
「寒くないのか?」
タバコを吹かしながら誠を見上げる要。
「タバコのにおいがしたらばれるじゃないですか!」
「誰にばれるんだ?そうすると誰が困るんだ?」
ニヤニヤと笑う要。
「あのですねえ……」
そう言った時に部屋のドアがいきなり開く。
「西園寺!」
踏み込んできたのはカウラだった。隣になぜか島田までいる。
「おう!来たか純情隊長!」
誠は余裕の表情の要の言葉にただ呆然と立ち尽くしていた。
「ああ、西園寺さん。一応……」
そう言うと島田はそのまま部屋に入り誠のプラモデルコレクションのメイドのフィギュアをどかして小さな四角い箱を取り出す。
「おい、隠しカメラって奴か?なんだ、せっかく……」
「要ちゃん!」
カウラをからかう言葉を用意しようとした要の頬にアイシャのローキックが炸裂した。




