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魔物の街 16

「こいつ等は正直そこまでの完成度はねーだろ。確かに実験のラインには乗らなかった規格外品だとしても、司法執行機関も馬鹿じゃねーからな。そう遠からず手は回るわけだ。それにしては進歩が感じられねーんだ」 

 そう言って頭を掻くラン。

「つまりクバルカ中佐はこれまでの襲撃を仕掛けてきた組織とこの法術暴走のサンプルを破棄している連中が別の組織だと言いたいんですか?」 

 カウラはいつにない強い調子でランに迫る。

「でも、つながりがねえとは思えないな。どちらも活動開始時期が誠の法術の使用を全宇宙に中継したころから動き出したわけだ。しかもこの東和を中心に動いている。バルキスタンの件も保安隊の活動を監視していたって事は東和の地と無関係とは思えないしな」 

 要の指摘に誠も頷く。

「となると、アイシャ。さっきお前さんが言ったローラー作戦は危険だぞ。それなりに腕の立つ法術師が動く。対応する装備の無い所轄の捜査官に相当な被害が出ることも考えなきゃいけねーや」 

 そう言ってランはこの事件の捜査責任者である茜を見上げた。

「そうですわね。とりあえず捜査方針については同盟司法局で再考いたしますわ。それと、誠さんにはしていただきたいことがあってここに来ていただきましたの」 

 茜は真剣な視線を誠に投げた。そしてその意味が分かったと言うように要とカウラ、そしてアイシャが沈痛な面持ちで誠を見つめる。誠はその目を見てそしてランが見つめている誠の剣を握りなおした。

「このかつて人だった人に休んでもらうって事ですか?僕の剣で」 

 搾り出すように誠がそう言うと彼女達は一斉に頷いた。

「え!それって……どうして?この人だって……」 

「無理ですわ。もうこの人の大脳は血流も無く壊死して腐りかけてますの。それがただたんぱく質の塊のような状態で再生するだけ、ただ未だに機能している小脳で痛みと苦しみを感じるだけの存在になってしまった。数週間後には再生すら出来なくなって全身が腐っていくだけ」 

 その茜の言葉にサラは反論を止めて黙り込むしか無かった。

「僕に、人殺しをしろと?」 

「馬鹿言うんじゃねー。こいつを休ませてやれってことだ。こいつを苦しみから、痛みから救ってやれるのは法術師だけだ。そしてそれがオメーの保安隊での役目なんだ」 

 ランの言葉に誠は剣を眺めた。黒い漆で覆われた剣の鞘。誠はそれを見つめた後、視線を茜に向けた。

「やります!やらせてください!」 

 迷いは無かった。

「いいのね」 

 確認するような茜の声に誠は頷く。

「止めろとは言えねえか」 

 要がつぶやく。アイシャは黙って誠の剣を見つめていた。カウラは黙ってラーナの手の中のこの不死の生き物の画像を覗き込んでいた。

「俺は何も言える立場じゃないけどさ。やると決めたんだ、全力を尽くせよ」 

 島田に肩を叩かれて誠は我に返った。しかし、先ほどの決意は勢いに任せた強がりでないことは自分の手に力が入っていることから分かっていた。

 静かに誠は手にした『鳥毛一文字』を抜いた、鞘から出た刃は銀色の光を放って静かに揺れている。

「それじゃあ、ラーナさん。部屋を開放、神前さんには中に入ってもらいます」 

 茜の言葉でラーナは端末のキーボードを叩き始めた。二つの部屋の中ほどに人が入れる通路が開いた。

「そこから入っていただけますか?指示は私が出します」 

 ラーナの言葉を聞いて誠はその鉛の色が鈍く光る壁面の間に出来た通路に入っていった。

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