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魔物の街 150

 老人は笑い始めた。それを見て一緒に意味も無く笑おうとしたシャムの頭を吉田がはたく。

「本当に素敵な方たちですねえ。西園寺様。あの人たちはあなたの身分を……」 

「身分?そんなものここじゃ関係ないですよ。それにアイツとあった頃のアタシもそう言う状況じゃなかったですから」 

 思わず照れて頭を掻く要。その後ろにじりじりとアイシャは迫る。

「なに気取った口調でしゃべってるのよ。いつも通りのほうがうどん食べに行くとき気が楽でしょ?」 

「オメエは食うことしか頭に無いのか!」 

 そう言って頭に当てていた手をアイシャに振り下ろすが、アイシャはそれを素早くかわしてシャムのところに顔を出す。

「怖いわよねえ……あんな化け物相手に怖かったでしょう?」 

「おい、アイシャ。一遍死んで見るか?」 

 じりじりと指を鳴らしながら近づく要を振り返るアイシャ。老人はそんな光景を笑顔で見つめていた。

「良いですね……仲間って感じがしますよ」 

 後頭部を殴られたせいでじっとその光景を離れてみていた誠に老人がつぶやいた。

「確かにうちはコンビネーションが売りですから」 

 そう言って苦笑いを浮かべる誠を羨望の目で見つめる老人。

「こういう仲間がいれば……あいつも道を踏み違えたりしなかったでしょうね」 

 老人の目に再び涙が光る。どうすることも出来ずに誠はただ老人のそばでシャムと怒鳴りあいをはじめる要を見つめていた。

「なんだってこんなところに連れて来たんだ!ここは職場だぞ!動物園とは違うんだからな!」 

「何でよ!グレゴリウスもいるじゃないの!それにこの亀は前回のベルルカン出動の時に世話になった村長さんから貰ったのよ!粗末にしたらバチが当たるんだから!」 

「いや、ナンバルゲニア中尉。村長とバチは関係ないと思うぞ」 

 カウラまでも巻き込んで広がるどたばた。頷きながら要達を見守る老人。

「おい!暴れんじゃないよー!」 

 ドアが開いて入って来たのは嵯峨。さらに明華と明石、部外者である安城までもが部屋に入ってきた。

「ったく……何やってんだよ。亀一匹の問題でそんなに熱くなること無いだろ?」 

「隊長!亀吉は私の大事なお友達だよ!ひどいよ!その言い方!」 

「すいません」 

 シャムに詰め寄られてすぐに頭を下げる嵯峨。明華と安城は顔を見合わせてその頼りない隊長を見つめている。

「要よ。何でも銃で解決ってのは関心せえへんぞ」 

 そり上げた頭をさすりながら要に詰め寄る明石。その巨体に愛想笑いで答える要。老人は黙ったまま誠を見上げてさびしそうに笑った。

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