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魔物の街 129

「お待たせしました!」 

 先頭切って小走りでカウラはトレーラーの隣に展開された仮設テントに入った。

「遅いわね」 

 テーブルで部下の技師達から報告を受けていた保安隊技術部部長の許明華大佐が視線も上げずに誠達を迎え入れる。

「マジで市街地で起動かよ?大丈夫なのか」 

 要はそう言いながら手前の端末を操作していた技術下士官をどかせてその端末を乗っ取る。

「一応、丙種出動許可は出てるわよ。治安維持活動と言うことだから使用できる機能に制限があるけどね」 

 そう言って笑いながら明華は隣で作業をしていたレベッカに声をかける。彼女は敬礼をするとそのままテントを出て行った。

「重力制御装置の使用禁止。パルス動力系統システムの封印。レールガンをはじめとする重火器の使用禁止……まあ当然といえば当然ですが」 

 カウラはポニーテールの後ろ髪を右手で撫でる癖を見せた。こういう時は彼女はかなり悩んでいることを誠も知るようになっていた。

「二次被害を出すわけには行きませんからね。でも本当に市民の避難の誘導とかは……」 

「馬鹿ねえ、神前曹長はそんな気を回す必要は無いのよ。それはマリアや安城隊長のお仕事なんだから。それよりそこ!」 

 明華の視線の先には端末を要に奪われておたおたしている整備員の姿が見える。仕方が無いと敬礼して見せた彼は要を指差す。

「いいわよ、西園寺大尉がシステム管制を担当するんだから。彼女はそこで管制を担当してもらうわ。でもまあ……」 

 ふとテントの入り口に歩き出した明華。そこにタイミングよくパイロット用ヘルメットと作業服を持ってきたレベッカが立っていた。

「一応こちらに着替えてね。どうせこの状況では対Gスーツなんて要らないでしょ?」 

「はあ」 

 まくし立てる明華に圧倒されるようにして誠はそのままテントから出ようとする。

「どこ行くの?」 

「ちょっと着替えを……」 

 そこまで誠が言ったところで明華は大きなため息をついた。

「酒が入るといつも脱いでるじゃないの。そこの奥なら場所があるからそこで着替えなさい」 

 どこかぴりぴりした雰囲気の明華に逆らえずに誠はそのままテントの奥に置かれた銃器の間でジャンバーを脱いだ。

「がんばれよー」 

 明らかにやる気の無い調子で小火器管理の責任者として使用火器のチェックをしていたキム少尉が声をかけてくるのに愛想笑いを浮かべながら誠はベルトに手をかけた。

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