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魔物の街 127

「だからこいつ等は……ムジャンタ・ハドは動いたわけだ。第三勢力。既存の後ろ盾の無い、だが自らの力に自信のある連中の王国でもおっ建てるために……」 

 嵯峨の言葉に頷くランを見ながら誠は手を上げる。

「質問ね。なんで差別される側の遼州人が動いたかって言うんだろ?なあに昔からこういう時はどっちが先かなんてことは問題じゃないんだ。どちらにしろ『違う』ってことがあればそれで解決。ムジャンタ・ハドにすれば相容れないということを双方に分からせるのが目的なんだ。それがなるなら何でもするような輩さ」 

 誠は手を下ろして周りを見る。要が生ぬるい笑顔を浮かべている。思わず視線を落とした。

「で、問題は三体の法術師。『人工』をつけたほうがいいか?」 

 そう言いながら嵯峨が再び画面を変える。そこには黒を貴重としたゲルパルト風の軍服を着た初老の男の姿があった。

「これって……」 

「ゲルパルト秘密警察。階級からして大佐だな」 

 カウラの言葉で誠も悪名高いゲルパルト秘密警察のことを思い出していた。反体制組織討伐にあらゆる手段を尽くした彼等の行動は永久指名手配と言う形で保安隊の掲示板にもその顔写真が残されていた。

「ルドルフ・カーン元大佐。今は……」 

「ゲルパルト国民党の残党で、その互助会の名目で数十の公然組織で多額の資金を運用している方ですわ。例のバルキスタンのカント将軍の裏帳簿を漁った件では資金運用の助言と言う名目で相当な金額がカント将軍からこの老人の手元に振り込まれていますの」 

 茜の口元が緩む。その姿を見て誠は彼女嵯峨の娘であることがこれ以上ないくらい良く分かった。

「実はとある筋……まあぶっちゃけアメリカがらみの諜報機関なんだけどな、カーンの公然組織から大金が引き出されているっていう話が来てさ」 

「その金が寄り合い所帯の法術研究機関に振り込まれたってわけか」 

 要の言葉に頭を掻く嵯峨。

「タイミング的にはぴったりだが……裏づけが無い。疑いだしたらそもそも情報の出所すべてが怪しい話だからな」 

「人を道具として使うことに慣れたゲルパルトの大佐殿か。厄介な話だだなー。で、隊長のお話は終わりっすか?」 

 ランが口を開くと少し飛ぶようにしてソファーから降りる。そのままちょこまかと明石が寄りかかっている執務机の脇の固定式端末を操作し始めた。

「まあアタシ等が今できること。例の生体プラントの確保ってことになるわけだが……」 

 そう言いながら操作した画面でデータのIDやパスワードの入力画面が表示されては消える。この場にはいないもののそのような芸当を得意としているのは吉田俊平少佐がネットでこの状況を監視しているということを示していた。

「そいつは現在ここにあるわけだ」 

 最終プロテクトが解除された。それを見て誠はあんぐりと口をあけた。

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