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魔物の街 123

 暗い表情のサラの隣、応接用のソファーの一番奥に島田が頭を掻きながら座っている。その右手には血で染まった包帯が巻かれていた。

「ちょっと手を切っただけですよ。もう……ほら!」 

 血で固まってなかなか解けない左腕の包帯を無理に引き剥がしてかざして見せる。そこにはそれまで白い包帯にこびりついていた血がどこから流れ出たのか分からないほどのいつもどおりの島田の手があった。

「やっぱりオメーも仙なんだな」 

 ようやく明石の部屋の応接ソファーに身を投げて足の長さが足りないのでぶらぶらさせているランが島田に目を向ける。その言葉に島田は引っかかるような笑みを浮かべて再びソファーにもたれかかった。

「面倒なものだよなあ、擦り傷から心臓や額に穴をあけられても自然に治っちまう」 

 嵯峨の言葉に愛想笑いを浮かべる島田。

「でも……私……」 

 そんな島田の手を見て震えるサラ。

「気持ち悪いだろ?隊長の言うとおりなんだ。俺は簡単には死ねないんだ。細胞の劣化もほとんど無くただ生き続けるより他に仕方が無い、そんな存在なんだ」 

「え?便利じゃねえか。アタシみたいに身体を使い捨てに出来るサイボーグだって脳の中枢と脊髄の一部は替えがきかねえんだぞ」 

 要の言葉に力なく笑う島田。だがその隣にいつの間にか座っていたカウラは手に端末を持って隣でそれを覗き込んでいる茜と小声で囁きあっていた。

「なんだ、ベルガーのとこの襲撃者もお手紙をよこしたのか?」 

 ランがテーブルに置かれていた自分の端末を覗きこんでつぶやく。その様子を立ったままで嵯峨が見下ろしていた。

「ああ、隊長!座っといてくださいよ!」 

 帰ってきた明石を見て嵯峨は仕方が無いと言うように端末のキーボードを叩いているラーナの隣の椅子を引っ張って、誠達の座るソファーの前の応接用のテーブルに持ってきて腰掛けた。

「状況は悪いな……と言うか完全に出遅れたという感じだな」 

 そんな嵯峨の一言に奥で茜が唇をかみ締めているのが見えた。

「茜、お前を責めてるわけじゃないんだ。俺達が動けるのは何かがあった後の話だ。今回、法術の違法研究の証拠が出てきてからようやくお前さんのところにも捜査の依頼があったわけで、その頃にはすでに手遅れになってたのかも知れないしな」 

 沈黙が部屋に漂う。

「とりあえず証拠の完全隠滅だけは阻止したんやから。ええ仕事したと思うとるでワシは。後はそのさきどう落とし前をつけるかだけ」 

 明石の声に静かに要が頷いた。

「良いこと言うねえタコ。なあベルガー……幾つか収穫はあったんだよ」 

 嵯峨の言葉で二人きりで話を進めているカウラと茜のほうに一同の目が向いた。

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