魔物の街 117
要はバッグからコードを取り出すと首筋のスロットに差し込む。しばらく沈黙してその後でいらだちながらコードを握り締めた。
「公安の奴等、見切りが早ええんだよ……って残ってたか」
いらだちながらつぶやく要。サイボーグである彼女の得意な電子情報確保を行っているのを見ると再び誠は片桐女史の部屋の明かりを見ていた。
「西園寺……また東都警察のデータベースにハッキングか?それでデータは……」
「焦るなって」
カウラの心配そうな声に静かに答える要。そんな緊迫した状況に合わせるようにそれまで止まっていた冬らしい北風の季節風に揺れる木々を見ながら誠は黙ってとんかつ弁当を諦めた。
「あのクラスのマンションは指名手配犯を見つけたら近くの警察に連絡が入るシステムがあったんだけど、そのシステムが動かないか。電子迷彩か?それともシステムにハッキング……金があるんだねえアイツの飼い主は」
監視カメラから警戒システムにデータが転送される間にそのデータを改竄して警戒システムを無力化する最新装備。最新のものの予算計上を先月拒否された要は苦笑いを浮かべていた。
「訪問先はあのオバサンのところ……?じゃないな」
首をひねる要。その言葉に身を乗り出してきたカウラの気配を悟って仕方が無いように振り向いた。
「隣の302号室だ。借主は……後ろ暗いところは無い典型的なサラリーマンだな」
そう言って再び視線を戻す要。誠も視線を戻すとカーテンに影となった片桐女史の姿が見える。
「どうします?」
誠は緊張に耐え切れずにカウラを見た。あごに手を当て考え事をしているカウラ。
「北川は茜のお姫様ですら軽くいなす腕利きの法術師だぜ。確かにアイツを押さえる目的で踏み込むってことも出来そうだが、本当に無関係ならアタシ等がまだ諦めていないことがばれるわけだ」
そう言うと要はカウラを見つめる。
「じゃあ行こう」
カウラはそう言うとドアに手をかける。
「黙っているのはアタシらしくないからな」
そう言って要は誠の座っている助手席を蹴りつける。
仕方が無く誠はドアを開けて路地に降り立った。カウラも要も手には拳銃を握り、誠も胸のホルスターからルガーP06を抜く。
「装弾していいぞ。間違いなくやりあうことにはなるからな」
そう言って要は走り出した。暴発の可能性があると言うことでキムから発砲直前まで装弾しないように言われていたことを思い出してすぐに誠は銃のトルグを引き上げて銃弾を薬室に込める。突入経路はこの場所に付いたときに設定してあった。要はそのまま右手に仕込んであるワイヤーをマンションの屋上に向けて投げる。カウラはそのまま銃を構えつつ走ってマンションの非常階段を目指す。
『行くぞ!』
誠は気合と共に目の前に力を集中する。訓練のときのように立ち止まった誠の目の前に銀色のかがみのようなモノ、干渉空間が展開される。
「じゃあ行きます!」
そう叫んだ誠はそのまま頭から銀色のかがみのような空間に突っ込んでいった。




