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魔物の街 108

「ご苦労さん!」 

 車から降りた誠に声をかけたのは手に干したとうもろこしを持った第四小隊隊長のロナルド・J・スミス上級大尉だった。その隣ではひっくり返り、腹を見せて服従の姿勢を見せる巨大な小熊グレゴリウス13世の口にとうもろこしをねじ込むフェデロ・マルケス中尉。そして鎖を引っ張るジョージ・岡部中尉の姿があった。

「今日は早いですね」 

 誠がそう言うのも遼州同盟との関係を重視する地球の大国アメリカの軍籍を持つ彼らがいつもなら東和軍の施設に最新兵器の実験の為に派遣されていてまるで見ないと言う事実があったからだった。

「たまには息抜きもいるんだよ」 

 そう言いながらロナルドがグレゴリウスの口に保安隊の空き地で育てたとうもろこしを突っ込む。

「島田は……」 

「ああ、アイツならハンガーに向かったぞ」 

 特に余計なことは言うつもりはないという表情で岡部が答える。カウラは隣に立っていたアイシャに目を向けるとそのままハンガーへ向かう。

「しゃあねえなあ」 

 要もそれに続くのを見て誠もハンガーを目指した。

 野球部のグラウンドの前に立つアサルト・モジュールを待機させているハンガー。誠達は沈黙に支配されている夕闇が近づくハンガーを覗き込んだ。

「あ、ベルガー大尉」 

 兵長の階級章の整備員がカウラを見て敬礼する。その敬礼を返しながら静かなハンガーをカウラ達は見回していた。

「いねえなあ」 

 要はそう言いながらやはりいろいろ言われているものの隊の象徴になりつつある美少女のカラーリングを施された誠の機体に目をやりながら奥の階段に向かう。

「冷蔵庫がやはり一番機密性は保てるでしょ?」 

 アイシャは後ろに続く誠にそう説明した。いつもならもっと活気にあふれているハンガーが沈黙していたのはそこでのナンバー2である島田がヨハンをつれていったと言うことを暗示している。そう彼女には思えているようだった。

 管理部は主計担当の菰田がいないので私服で上がってくる誠達を気にするはずも無く、隣の実働部隊の詰め所では要を心配そうに見つめる楓の姿があるだけだった。

 冷蔵庫に取り出したセキュリティーカードでセキュリティーの一部を解除した後、カウラが網膜判定をクリアーしてセフティーの完全解除を行う。そうして開いた保安隊の情報分析スペースである『冷蔵庫』の中には太りすぎた体を持てあましながら端末をいじるヨハンとそれを監視する島田の姿があった。

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