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「ああ。あいつの中心に闇がある。その中心が闇を生み出し、闇が増えていく。それなのに全体の大きさはたいして変わらない。それをずっと繰りかえしているようだね。闇に闇を重ねていると言うのは、そういうことだよ」
「闇に闇を重ねて闇が増えているって、あの闇は生き物かなにかなのか?」
「まあ、僕の知っている闇は、生き物なんかじゃないよ。ただの光の当たらない場所だ。しかしあいつの身体は闇で構成されている。闇があいつの本体なんだ。そして驚いたことに生きている」
「闇が生きているだと?」
「そう生きている。あいつの正体は生きている闇だ。地球の生物学は全て、あいつには一切当てはまらない」
そう言った後、桜井は何か考え込んだ。
「おい、どうした?」
「いや……。地球上の生物学に当てはまらない生物か。……ということは、あれは宇宙から来たものなのかもしれないな」
「えっ、宇宙生物ってことか?」
「最初に言ったけど、全て憶測だね。宇宙から来たのかもしれないし、どこかの異世界から迷い込んできたのかもしれないし、可能性は低いけどなんだかの理由で地球上で生まれたのかもしれないし。でもあいつの正体が闇なら、なんであいつの弱点がそうなのか、納得がいく話だな」
「弱点? 古書に書いてあったやつか」
「そうだよ」
「それならあいつの弱点って、いったいなんなんだ? もう教えてたっていいだろう」
「いや、まだだね」
「なんでだよ」




