47/65
47
上条は、桜井があの黒い粉を吸い込むんじゃないか、吸い込んだら体に害をなすのではないかと心配したが、今更体のことを気にかけてももう遅いと気づいた。
桜井は黙って吸鬼をまさに凝視している。
上条も少し離れたところで、桜井と吸鬼を見ていた。
そしてけっこうな時間が経ったと思われるころ、桜井が振り向き言った。
「よし、もういいだろう」
そして上条がその場にいないかのような足取りで、洞窟を出て行った。
上条がその後を追った。
車に乗り込み走り出すと、上条が言った。
「何かわかったのか」
「今は車の運転中だよ。後で学食でゆっくり話そう」
「そうだな」
その後は二人とも、ずっと無言だった。
学食に着き、席に座るなり上条が言った。
「何かわかったのか?」
「わかったと言うよりも、全て憶測なんだが」
「いいから言ってみろよ」
「あいつは闇に闇を重ねている」
「闇に闇を重ねている……だと?」
桜井は自動販売機の前を通ったばかりだというのに、立ち上がって自動販売機の前に行き、缶コーヒーを買い、席に戻ってどすんと座った。




