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すると何か聞こえてきた。
ずるっ ずるっ
何かが這いずっているような音だ。
それがこちらに近づいて来る。
「おい、木本か」
ずるっ ずるっ
「おい、木本だろう。俺だ。上条だ。何か言えよ」
ずるっ ずるっ
音は玄関の前で止まった。
そこに何かがいる。
おそらく木本だ。
「木本」
そう言うと、上条はドアに耳を当てたままで待った。
すると地の底から呻いているかのような声が聞こえてきた。
「吸鬼……様あ」
声はそう言った。
「木本」
返事はなかった。
ずるっ ずるっ
再び何かが這いずるような音が聞こえてきた。




