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「犬田君、どうしたのかしら?」
七人の中では唯一雅美が心配していたが、雅美が犬田に対して異性としての特別な感情があるわけではないことは、誰が見ても明らかだった。
それでも心配してしまうのが雅美という女の子なのだが。
――本当にいい子だなあ。
上条は、真亜矢に軽い殺意を覚えたものだ。
いつものことだが。
次の週も犬田は来なかった。
「犬田君はどうしたのかな。この中で知っている者はいるか?」
犬田と親しい者など、少なくともここには誰もいない。
したがってみなが教授の質問に対して正直に「知らない」と答えた。
「そうか。これ以上休んだら、あいつ、単位が取れなくなるぞ」
それに対してなにか言う者は誰もいなかった。
どうでもいいことだから。
雅美一人をのぞいて。
教授が「これ以上休んだら単位が取れなくなる」とか言っていたな」
食堂で木本が言った。上条が答える。
「ああ。確かにそう言ったが、それがどうかしたか」
「と言うことは、三回休むと単位が取れなくなると言うことか?」
「それはわからんなあ。三回連続がだめなのかもしれないし」