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「行けばわかるよ」
車は走り出した。
着いたところはプレハブに毛の生えたようなところだった。
「ここは?」
「郷土民族史料館」
「これが?」
「そう、これがだよ」
入口に向かうと、小さく古い看板があった。
そこには消えかかった字で「郷土民族史料館」と確かに書かれてあった。
ところどころ茶色く錆びたアルミ製の引き戸を開けると、そこは展示室となっていた。
ガラスケースに古書と思われるものを中心として、様々なものが収められている。
「こっちだ」
桜井はそのまま進み、一番奥にある戸をひき開けた。
中の狭い空間には棚が所狭しと並べられている。
どうやら倉庫のようだ。
桜井は迷いなくある棚の前まで進み、そこにある小さなダンボールを一つ取り出した。
そして上条を押しのけるように倉庫から出た。
上条が後に続く。
桜井はダンボールから古書とノートを取り出して、ガラスケースの上に置いた。
それまで黙っていた上条が口を開いた。




