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「毎週必ず見ている番組が、けっこうな数あるぜ。全部バラエティだけどな」
「ニュースは」
「自慢じゃないが、大学に入ってからニュースなんて一つも見てないぜ」
「確かに自慢にはならないな。新聞は?」
「取ってない」
桜井が小さくため息をつき、木本をあきらめて上条に聞いてきた。
「上条は何か思い当たることはないのかい」
「火事か」
入学して間がない頃、大学近くのマンションで火災があった。
住人はみんな逃げ出して死人は一人も出なかったが、マンションは折からの強風にあおられて、不運にも全焼した。
「それじゃないよ。もう一つのほうだよ」
「じゃあ、例の洞窟のことか」
「それだよ」
マンションの火事から数日後に、大雨が降ったわけでもないのに、大学近くの山が地すべりを起こした。
そしてそこに洞窟が見つかったのだ。
洞窟の入口は石をきれいに積み上げて壁のようにして塞いでいたが、それも地すべりのときに一部が壊れて、人が入れるようになった。
全国ニュースでも数回ほど、ローカルニュースでは何度も取り上げられ、専門家による調査も行なわれたが、明らかに人の手が入ったその洞窟が、誰が何のために作ったのかと言う基本的なことすら判明しなかった。




