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「上条は完全にこちら側だ。僕ら二人とは話しをするが、犬田ら三人とはほぼ会話がない。女子二人は、もともと二人だけで話しをすることが多いけど、僕らとは少しは話しをする。でも全くと言っていいほどあの三人とは話をしない。真亜矢が僕ら以上に完全ブロックするからね。あの子はあの子で、一応人を見て対応しているようだね。あの三人はやばいと思ったんだろう。まあ、人並みの観察力があれば、誰でもわかるけどね。で問題は、木本だ。残ったメンバーの中では、明らかにあの三人との会話が多い。もともとしゃべる量が多いうえに、博愛主義者なのか誰とでも話そうとする傾向があるからね」
「いやいや、それはないだろう。俺は上条や桜井とばかり話をしてるぜ」
「それはないな。上条、どう思う」
「桜井の言うとおりだ。俺と桜井はあの三人は基本スルーをしているが、木本はけっこう相手してるぞ」
「そんなあ」
桜井が言った。
「まあ待て。夏休みに入るのは、好都合だ」
「えっ、どうして?」
「二人とも夏休みは、地元に帰るんだろう」
「帰るに決まっているだろう」
「もちろん帰るよ」
「僕は帰る必要がない」
そうだった。
すっかり忘れていた。
上条は思った。
桜井は実家から通っているという、この大学では稀有な存在なのだ。




