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序章 -はじまり-
「うっ...うぅ...」
逃げねば。早くここから。さもなくば...死ぬ。
外に出たはいいものの陽の光がとてつもなく眩しい。
それもそうだろう。暗い場所に3ヶ月も監禁されてればこうもなる。
目もよく見えていない。きっと過度な栄養失調のせいだろう。
私を拷問するような人間が十分な食事を与えてくれるはずなどないのだから。
とにかく一刻もここから離れねば。奴らに見つかる前に。
少し離れたところから銃声が聞こえる。
近くで軍事演習でもやっているのだろう。
奴らは下手に銃をぶっ放したりはしない。
ぶっ放せば自分たちが見つかるから。
拷問のおかげで身体の自由がきかない。
銃声が大きくなってくる。しかし、私の身体はもう限界だ。いや、もう限界などとうに超えているか。
すぐそこなのに。そこの草をかき分けることさえできればたどり着けるのに。
だがもう身体が動かない。せめて、もう少しだけ。
最後の力を振り絞り、私は目の前にある草を掴んだ。