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戦うという決意



なんだ?!でかい餅みたいな…あれが本物のスライムか!!?


「…ッ、『slug』ッ! どうして!?」


スラッグ…ナメクジ!? あれが?!

二度見すれば乳白色の巨大な餅から二本の触角が何かを探る様に天へ向け伸びる。その先端には黒々とした目玉が獲物を探る様に蠢き、不定形の身体が持ち上がれば、広く見えていた小屋が手狭に見えてしまうほどの…そう、巨大なナメクジ。

奴のヌメっとしていそうな身体には木片や苔むした石が張り付いている。間違いなく、奴が壁を破壊して此処へ侵入してきたのだ。


「ロドリー!あいつは何?!」


「slug、イワナメクジ! お願い止まって!タモツは貴方のご飯じゃないの!」


説明する暇もない、と ロドシーは俺の問いにもまともに答えずそのイワナメクジとやらに語りかける様に声を上げ叫ぶ。だがそいつはその言葉をお構いなしにと鈍重な動きで俺とロドリーを追い込む様に小屋の中を押しつぶす程の巨体を押し進めてくる。


ロドリーの言葉からするに狙いは俺で、狙われる理由はご飯…つまりは強化合成。 おいおいおいおい、ココに居ても餌にされるのかよッ!!ナメクジに嬲られて人生ENDとか死んでも御免だッ!!


心が沸き上がり、苛立ちと焦燥感で汗が噴き出る。自分の何倍もある体躯の奴に餌として見られる恐怖で脚が震えるし出来る事ならそいつから目を逸らしてしまいたい。

だけど、俺の目の前には必死にナメクジを説得しようとするロドシーが居る。あいつはナメクジを抑え込むように立つがその進行を抑えるに至っていない…しきりに動いていたナメクジの一対の触覚が俺を捉えた様に此方へ向く。

突如、顔と思しき部分に穴が開く…いや、口を開いた。欠伸のように、微笑むように、可愛らしく言うならば…あーん。と、捕食するかのように。

全身の毛が逆立った。象以上の塊が、明確に俺に狙いを定めている。



距離はまだある。けれどそれも時間の問題だ。

奴はロドリーに興味を持っていない…いい意味でも、悪い意味でも。俺にのみ狙いをつけて這い寄ってきている。


「ロドリー、出口は何処ッ?!」

「今さっき壊れちゃったぁ!」


そういって指差されるのはナメクジの方向、つまりこいつはご丁寧に出入り口から入って来てくれていたわけだ…自分の体躯に合わせた物を作ってまで。

ロールプレイングゲームなら、ここで最初の戦闘って事だろう……状況が状況だけに、俺は頭の中でそんなことを考えて居た。戦うには無謀が過ぎる、武器も無ければ相手は壁を容易く破壊する巨大なナメクジだ。逃げるにはリスクが高い、奴の身体は小屋を埋め尽くさない程で、横を抜けるにも奴自身を足場にする他無く、奴に直接触れるのだけは止めた方が良いと俺の本能が告げている。

説得、ロドリーの説得も効いていない。戦う、逃げる、話す。全てが防がれている。


…逃げ道…そうだ、今すぐにロドリーに…!


「ロドリー、俺のせいで小屋が壊れている状態で言うのも忍ばれるけど、いますぐ俺を売り払ってここから追い出してくれ!」

「駄目…っ 今は、出来ない… 売るのにも、いろいろと準備が必要で…ゎあっ!?」


ナメクジを抑え込んでいたロドリーが、そのまま身体の中へと沈んで行った。

ずぶぢゅ、という粘液が絡まる音がしてナメクジの体躯は元の形へと戻る。ロドリーの姿が無くなったまま。

不味い、非常に不味い。退路が塞がれただけでない…道が決められてしまった。


こいつをなんとかして、ロドリーを助ける他、無い!


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