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少女の名はロドリー モンスターの名は



主導権を渡してからの話の展開は早かった。

ロドリーはきっとしっかりした子なんだろう、さっきまで泣きじゃくってヒステリーを起こしていたのが嘘みたいに落ち着いた様子で俺に文字通りイチから教えてくれた。畏まって正座しちゃい合うぐらいに。


まず聞けたのは、ここが俺の住んでいた場所とは全くの別の場所であること。これは北海道と沖縄みたいな距離の話じゃなく、次元から次元を飛び越えてのレベルの物。

…正直冗談と聞き入れたかった。言葉さえ通じて小屋やロドリーの顔の雰囲気さえ違和感無く受け入れられるぐらい俺から見れば普通なのに異世界なんて言われても、ハハハ何かのドッキリ?としか思えない。

…けれど、出会って僅かとは言え俺はロドリーの言葉を信じる、信じられる物な気がしてならない。


「今日の、この時間にガチャポンを呼び出せば"異世界ピックアップ召喚"を行える。ガチャポンは、魔素を含んだ物を適量用意して行われる排出物がランダムの召喚術の事ね。異世界ピックアップ召喚は…名前の通り、異世界からモンスターを呼び出して使役できる。」


ロドリーが自分の足元に転がった石ころの一つを拾って俺に投げ渡してきた。その石はなんのへんてつもないただの石で、河へ向けて撫でれば多少跳ねやすそうぐらいの印象しか湧かない。


「それが魔素を含んでいた水晶。貴方を召喚する時に魔素を吸い取られて石になっちゃってるけど。」


受け取った石と、先程投げられて遠くに転がっている石をなんとなくで見比べれば、まぁなんとなくで察しも付く。おそらくはあれも魔素を含んでいた石なんだろう。ロドリーの足元の石も含めれば5個程の石がここにはあった。

さりげなく言われたが、その言葉だけでもう点が線で繋がったとは思う。

何らかの手違いでロドリーが本来召喚したかったモンスターではなく、俺が召喚されてしまったとの事だろう。


「なんつーか、お気の毒様。で、俺はどうやったら帰れるんだ?」


すっかり俺はロドリーの言葉を信じ切っていた。泣かれるほどに心を痛めたのであろうロドリーに軽い謝罪を込めつつも、それを問うと


「あ……えっと、その………呼び出したモンスターは、そう簡単には帰れなくて……」


ロドリーがまた顔を俯ける。まだ説明しきっていないからなのか、話足りないからなのか、モンスターってのの話はあんまり興味もないから重要じゃないんだけどなぁ。


「で、も。大丈夫。私が、責任持って守るから。」


あ?守る?そんな疑問も浮かぶより早く、顔を上げたロドリーが俺の顔を見ながら真面目そうな、でも決意の籠ったような眼差しを向けてくる。 まぶしい…、そんな感想が出てきて俺は思わず目を逸らした。

ロドリーも顔を見ていれば俺が目線を逸らした事に気付けば何故かそっと顔を逸らした。

と、思えばロドリーは顔をはっとさせオーバーオールのポケットから長方形の半透明な板を取り出して


「これがね、貴方のステータス。レアリティ:最低級 属性:青 種族名:寄生魔 固有名:物部 太茂都-モノノベ タモツ- 体力168 攻撃27 素早さ12 やる気 …ゼロ。」


読み上げられる意味の分からない文字列の中に俺の名前が含まれていた。ロドリーの持つ板を覗き込むと、それは既視感がある光景であった。

半透明の板にはデフォルメされた俺らしき人物の絵と名前とレアリティ、そしてステータスが数字で分かりやすく書かれている。その粗末な出来に苛立ちや驚きより先に呆れたような溜め息が半笑いの顔で出る。板に指を近づけて擦ると、指の動きに合わせて画面が動く。操作感がそのままスマートフォンだ。



俺は、どうやらモンスターになってしまったらしい。



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