日常
布団に入って過ごす秋の午後。
寝転がって背と足を丸めて腕を包むように抱える、そんな赤ん坊のような姿勢で温もりに包まれて寝て過ごす。
寝惚けながらも腕を伸ばせばベッドのすぐ横の机に手が届き、目当てのスマートフォンを布団に引きずり込めば画面をつけて時間を確認した。
PМ 2:22
こういった時にゾロ目を見ると自分が何か特別な力でもあるんじゃないかと思って嬉しくなって頬が緩んだ。
慣れた手つきで画面をスライドさせ、ソーシャルゲームアプリを起動させる。
聞きなれた起動音や効果音を聞きながら、何時もの様に課金をして、何時もの様にガチャを回す。
ここ最近の寝起きの習慣で、これをすると一日の始まりを感じる。学校に通っていた時は朝のニュースの占いを信じていたが、今ではこれがその代わりだ。
ピコーン レア
ゴミみたいな効果音と一緒にゴミみたいなキャラが排出され、顔が歪む。今のは練習だから。そう声に出さず呟いてもう一度ガチャを回す。ピコーン ピコーン ピコーン
気が付けば、さっき買った課金アイテムの山が無くなっていた。残ったのは苛立ちとゴミの塊。
頬と眉間に力が籠りきって痛いぐらいに筋肉が奮えている。布団を跳ねのけ飛び起きれば、駄目だと思っていても手に持っていたスマホを思い切りゴミ箱に向け投げ捨てるまで数秒とかからなかった。
ガコガコガコッとゴミ箱の中へスマホが落ちていき、揺れる震動でゴミ箱が倒れればお菓子の袋やティッシュが床に散らばった。
それさえも自分を馬鹿にしているような気がして、眉間に皺が更に寄り舌打ちが自然と出る。
放っておいても母さんが片づけるだろ。と、考えれば罪悪感もクソもない。残るのはガチャで爆死した苛立ちだけだ。布団を被り直して不貞寝をする事にする。
寝て起きれば、今日をまたやり直せる気がしたから。