戦竜武道会(魔術使用禁止)
今回は早くかけた気がする
大会当日。
会場は人でいっぱいになり、テレビ中継まで来ていた。
この大会は、全国で放送されるらしい。
東京以外の県すべてでもこの大会はやるが、一番規模が大きいのは東京だ。
ブロックも発表されており、初戦の相手も決まっていた。
蘭は同学年の新人、凜は同じ後方支援の女子、そして迅は優斗と戦うことになった。
優斗は銃撃戦では魔術を使わなければ迅と同じレベルだろう。
今回の会場は、障害物などがなく、地面も平面だ。しかも完全剣士向けという条件でやるので勝ちはほぼ決まったようなものだ。
迅はハンデとしてセコンド無しでやるが、相手の位置くらい把握できるし、あまり意味がない。優斗相手だと、小学校からの付き合いだしどう動くかも大体わかる。それは向こうも同じだが、戦力的には迅が勝っている。
蘭と凜はどうなるかはわからないが、まあ勝ってほしい。
迅がAブロック、凜がBブロック、蘭がCブロック、そしてDブロックには迅の護衛もいる。
他のメンバーは見ていないが、迅のいるAブロックには舞、千秋がいる。この二人は結構強いし油断は出来ない。
『一回戦目の選手は、待機室にお越しください』
一回戦目、迅の番だ。
いきなり優斗と当たり、さらに一番最初という何とも言えない順番。最終兵器をいきなり使ったようなものだ。
だが、優斗だからと言って手は抜かない。金が欲しいから。
『Aブロック予選、霧崎迅対小鳥遊優斗。幼馴染のこの二人、互いの行動を読みあう試合になるのか、一方的な試合になるのか。楽しみです!』
二人が入ってきたときの歓声で鼓膜が破れそうだった。
人気ランキング男子部門ではランクは高いほうだし、戦闘力も上位の二人。
互角な戦いか、一方的な試合か――
『START!!』
優斗は意外に剣を持っていた。
迅はいつも通りダガーで挑むつもりだ。
お互い様子を見あって、隙を伺っている。
『両者なかなか動きませんね……』
「迅くんも対人戦になると様子を見るんだね」
「おにーちゃんもそこまでの危ない事はしないでしょ」
気が緩んだらそのすきに攻撃される。
それは決まっているのだが、そうなると終わらない。こっちから仕掛ける!
『おっとー、先に霧崎選手が攻撃を仕掛けた!!』
「はァァァ!」
「うおっ」
一発目は防がれた。が、そのまま押す。
「あぶねっ」
押すことばかりを考えていて、下からの攻撃に気付けえなかった。だが、その代わりに戦い方を教わった。
止まったら退かずに蹴る。対人では使えそうだ。
そしてまた後ろに下がる。
両者、姿勢を立て直してもう一度きりに行く。
だが、優斗は動かない。あの姿勢は――
「カウンター!?」
カウンター回避のため、進むときにフェイントを掛けたりして、斬る直前で一気に姿勢を低くし、足首を斬る。
結界の中なので精神にしかダメージは行かないが、痛みはあるので優斗がバランスを崩す。その時がチャンス。
「先手必勝!」
立ち上がったばかりの優斗に襲い掛かる。だが、攻撃を外した。
予想外の回避に驚き、方向転換が遅れた。それから迅が優斗に押される。
会場は盛り上がり、迅も優斗も楽しくなってきた。
「死蝶ノ舞、魔術無しバージョン!」
「なら俺も。死蝶ノ舞、魔力無しバージョン」
『こ、これは―!!両者同じ技だ―!』
結構前に教えたのをここで出されるとは。まあ優斗らしい。
同じ技だしどちらも同じことをしている。そしてどちらもダメージを受けないし、与えられない。終わりのないこの剣撃。それでも続ける。
「らぁぁぁぁぁ!!」
「どりゃぁぁぁぁぁ」
精神ではなく、武器にダメージが入り―同時にきれいに割れた。
『ななななななんとぉ!武器が壊れましたぁっ!』
武器がないならもう素手で戦うしかない。
「ガキの喧嘩になることを覚悟しろ!」
「はぁ、めんどくさい」
優斗のやる気のなさ。これでも攻撃を防ぐからすごいと思う。
迅と優斗の試合は組合になった。もう餓鬼の喧嘩にしか見えない。だが、両者勝利を譲らない。譲るのは敗北だけ。
組合になって、離れて、迅が飛び蹴りして優斗が防いで迅が尻から落ちて、優斗が殴って、骨に当たって、どっちかというよ優斗のほうがダメージを受けて……
会場は歓声から笑いに変わっていた。
そして最後の一撃。
「覇王拳」
「ブレイク・ブロー」
同時に技を出した。
この瞬間に、また歓声に変わった。
勝ったのは――
「勝者、霧崎ーー!!!」
「はぁぁぁぁ、つかれたーーーー」
会場は試合開始以上に盛り上がっていた。だが迅はそれと正反対に疲れていた。
危機一髪。ぎりぎり迅のほうが速く技を決めることが出来たおかげで勝てた。互角の戦いだった。
「優斗、お疲れ」
「おつーっつぅぅ」
手を引っ張て起こすと、優斗が痛がって何かと思うと、優斗のパンチが骨に当たったときのがまだ痛かったらしい。
「どこでも殴ればいいってわけじゃないんだしさぁ。特に骨とか痛くない?」
「これは普通に痛いし肉体のほうでダメージ受けた気がするからあとで病院いっとく」
「骨にひびでもあったらどうする?」
「なおせよ?」
「姉ちゃんに頼め」
試合の後は普通に中のいい二人。まあ試合の後変な雰囲気になることもそうそうないとは思うが。
一回戦目は迅の勝利に終わった。
二、三回戦と、駒を進めていき、迅はついに千秋との戦いだ。
「じゃあ迅くん。頑張ってね」
「おにーちゃん手加減してあげてね」
「大丈夫。千秋に合わせて太刀使うし」
「負けても知らないからね」
「蘭も、勝ち残れよ。あと姉ちゃん……なんで勝ってるの?」
「うーん?なんでだろうね?」
「まあいいや。じゃ、行ってくる」
軽くアップをして、会場に入る。
『第五十七回戦目、霧崎選手対東雲千秋選手。両者同じ武器で部隊も同じ。さてこの試合はどのように進むのでしょうか?それでは――START!!』
今度は優斗の時とは違い、始まると同時に突っ込んで行く。
これは一発目がどちらに当たるかで試合の展開が変わりそうだ。
迅は千秋の身体ではなく、剣を狙っている。それに対し千秋は当たることを前提に考えているので、外れた時の態勢の立て直し方で隙ができる。まだまだ甘い。
「弾かれた!?」
やはり千秋が態勢を立て直すのには隙が出来た。だがそこを狙って一気に決めに行っても面白くない。そうそうない試合だしここは楽しまなければ意味がない。金をもらうだけじゃだめだ。
「千秋、全力で来ていいよ」
「言われなくてもッ」
千秋は全力で来ている。だが、迅は全力ではない。かといって手を抜いているわけでもない。
千秋の行動を読むために防御に徹している。
千秋はひたすら斬るが、迅には届かない。防がれている。というよりもこれは受け流されている。千秋にとってこんなことは初めてだ。何の対応も出来ない。
だが迅はあの戦争で受け流す技を覚えた。
そうそう使うことのに技だったが、対人戦で使ってみると案外いいものだ。だがまだ甘い。あいつのようにもっとうまくできるようになりたい。衝撃を完全に吸収して、威力を完全になくす。そうしたい。
それを追い求めているうちに技は完成していった。
「な、なんで!?」
完全に攻撃を受け流される千秋は一度攻撃をやめて迅に問う。
「攻略法を見つけたらこの技、教えてあげる」
今略法は一気にスピードを上げること。それさえできれば千秋の勝ちにしてあげてもいいくらいだが、金が掛かっている。
千秋もそろそろ攻略法を見つけたかと思ったがダメそうだ。
「こっちからも攻めるよ、千秋」
防御に徹していた迅が攻撃を仕掛ける。
千秋の周りをぐるぐる回りながら攻撃するタイミング、場所を決め、隙を狙ってつくつもりだ。それを防ぐことくらいはできるだろう。
「今だッ!」
だがそれはフェイク。千秋は反応したが、もうそこに迅はいない。
今迅がいるのは――
「後ろ!?」
セコンドの指示で辛うじて防いだが、千秋も今のは致命傷だろう。変な防ぎ方をしたせいで肩を痛めた。
「遅い」
今度は前、そして右、後ろ、前、後ろ、左、上。
千秋は迅の攻撃を防ぐことしかできない。回避も、カウンターも撃てない。しかも肩を痛めているせいで防御が薄い。
迅は容赦なく攻撃を続け、千秋はそれを防ぐだけで精いっぱい。体力も尽きてきた。だが千秋だってラディウス日本支部の第一部隊の一員。この程度で負けるはずがな。複数の悪魔を同時に相手だってしたし、傷を負ったま戦ったことだってあった。それを乗り越えてきたのに肩を痛めた程度で負けるなど第一部隊失格だ。だから――
「迅さんには、負けない!」
防ぐことしかできなかった千秋が迅の攻撃を避けた。そしてついに迅を斬った。
「がっ……………」
だが迅は倒れなかった。
確かに攻撃したはずだ。しかも深いところまで斬った。精神にしかダメージが行かないとはいえこれはあり得ない。
―心臓を斬られて平気で動ける人などいるわけがない―
迅は心臓を斬られた。そして精神の方には相当のダメージが行った。
普通なら即死とまでは行かないが、気絶はするはずだ。それなのに倒れない。それどころかもう回復したかのような動きだ。
「日本最強は、この程度じゃない」
迅が一度地面を蹴ると、それだけで千秋のところまで一気に距離を詰めた。一蹴りで。そして、剣を上に振り上げ、それと同時に跳躍。
魔術を使っているかのような動きだが、魔術は一切使っていない。それどころか魔力さえも使っていない。その脅威の運動能力で飛び、剣を千秋めがけて飛ばす。
それには反応しきれず、千秋の右腕は剣に貫かれた。
「ああぁぁっぁぁぁあぁぁぁ」
剣は地面に刺さり、千秋の腕にはまだ剣が刺さっている。串刺し状態だ。そして動けない千秋に向かってこう言う。
「千秋、その剣は今の状態の千秋じゃ抜けない。だからと言って俺は抜く気はない。俺に勝ちたいなら無理やりでも腕を剣からはなせ」
腕を剣から放す。要するに自ら手を斬るのと同じだ。
実際には手が裂けることはないが、もしこれが現実の空間だったら、腕に刺さっている剣を抜くには、刺さっているところから指先までを裂くことになる。だが、今はけがはしない。ここで千秋の勇気を見ようと思った。
「迅さんに勝てるならこれくらいはっ!」
一気に腕を引いて、剣から腕を話す。
「があぁァァァァァァァ」
今のダメージは相当大きかったはずだ。それでも我慢して剣を構える。
「そうこなくっちゃ」
千秋の目には涙が浮かんでいる。
こんな痛さを経験することなんてないと思っていた。これに近い痛みさえも経験したことはない。それでも剣を構える。
「はぁぁぁぁ!」
あれだけのことがありながら、精度が上がっている。
魔術を使えない以上、乱舞も全然出来ないが、それでも諦めない。
痛みなんて関係なく形振り構わず剣を振るう。
腕の痛みなんてものはもう感じない。
「よく頑張った、千秋」
だが、最後は迅の攻撃で千秋が倒れ、試合は終わりを告げた。
『勝者、霧崎迅!!』
試合が終わると、痛みも消えた。
そしてあの緊張感もなくなった。
「もー、なんで迅さん剣を抜いてくれないんですか?」
「いやー、降参してくれると思ったしさ」
「わたしがそんなかんたんに降参するわけないじゃないですか」
「あはは、ごめんごめん」
「ひどいですー。もう迅さんなんて嫌いですからね」
と言いつつも心の底では尊敬していて、自分の目標だから嫌いになんてなれないと思っている千秋だった。
※
『Bブロック第五十九試合、霧崎凜選手対田中正樹選手。後方支援専門の凜選手と最前線で敵を倒す正樹選手。これは正樹選手のほうが有利に見えますが……どうでしょう、霧崎先生』
なぜか迅が実況をやらされたこの試合。
『有利なのは正樹だけど姉ちゃんのほうがランク高いしなんか護身術とか身に着けてるから正樹が負けるかもね。姉ちゃんの武器ナックルだしいざとなったらあの護身術だって使えるから』
『では、どちらが勝つと思いますか?』
『魔術を使わずに姉ちゃんに勝つ自信がないから正樹に勝ってほしいけど……まあ姉ちゃんかな?』
凜は体育の成績は学年一位。さらになぜか護身術を身に着けているという強敵。対して正樹は大剣でひたすら敵を斬るという戦い方をしてきた。凜のほうが強いだろう。
『START』
「どりゃぁ!」
正樹が攻撃を仕掛けるが、きれいにかわされ、鳩尾に一発入れられる。
「グハッ」
さらに凜の攻撃は続く。そしてナックルのダメージは大きく、正樹はすぐに倒れた。その上に凜が乗っかり、最後の一発を腹に決める。
終わりは早かった。
突っ込むことばかりを考えてきた正樹は防ぐ、避けるということを知らない。それが今回の敗因だったのだろう。だがこれで学んでくれるならいいことだ。
『勝者……霧崎凜!一瞬でしたねこの試合』
「まあ脳筋の相手は慣れていますので」
『うぐっ』
「よく護身術を教えてましたからねー」
『がはっ』
実況席の迅が凜に言われたことに心当たりがあり過ぎて言葉だけでダメージを受けている。
数秒で凜の四試合目は終わった。
※
またまた迅が解説に呼ばれた。それは蘭の試合だ。
『第五十七試合、霧崎蘭選手対大谷千里選手。奇跡的な中学生対決。この試合、楽しみですねー、迅さん』
『いやいきなり俺にふるのやめてくれる?まあ千里は新人だけど俺が直々に剣術を教えたし蘭はあのモモに教えてもらってたからそりゃあそこらの選手よりは強いけど……まさか結衣に勝つとはね』
そうだ。蘭は結衣と戦って。勝った。
結衣は支援魔法をひたすら磨いてきた。だから魔術が使えないとなるとほぼ勝ち目はない。だが、一回戦目は相手が素人だったおかげで勝ったが、二回戦目は蘭と当たって負けた。
ちなみにここで蘭が勝つと次の蘭の相手は舞だ。たぶん、いや、絶対に負けるだろう。
でも蘭なら千里に勝てると信じている。
『START』
蘭はカウンターの態勢を取り、千里は双剣用の技の改良版の構え。
蘭のカウンターは成功すれば確実に攻撃を当てられるというモモ直伝のカウンター。
そして千里の技は、双剣用の技の改良型。強いのは強いが、対人戦だとあまり使えないし、カウンターには確実にかかる。
カウンターと双剣の技の改良。どちらが勝つか。
開始から数十秒後、千里が動き出す。
『はやい、早いです!』
確かに千里のスピードは速い。だが、速いだけじゃあのカウンターは回避できない。
距離を詰めていって、蘭の目の前で止まる。
観客、そして俺でさえも息をのんだ。そして千里が目を開いた刹那、剣ではなく、蹴りを入れた。それはきれいに決まったが、蘭も足が出たことに気付き、剣を前に突き出したおかげでダメージを与えることが出来た。
一度後ろに下がり、剣を構えてまた前に出る。
キィンという高い音と共に火花が散った。
これはこの大会で一番盛り上がる試合になるだろう。
完全互角な戦い。だが、迅から見ると蘭のほうが押している。
妹だからという理由などではない。本当にそう見えたからだ。
蘭の攻撃は確実に弱点を突き、それに当たれば千里も後ろに下がっていた。だが、蘭はどれだけ攻撃されてもきれいに防いでいる。そして攻撃の正確さも蘭のほうが上だろう。と言っても二人は同級生で、さらに教えてもらった人が強い。蘭は悪魔のモモ、千里は世界第二位の迅。これだけ強い人に教えてもらっているのだからこの結果は当然かもしれない。だが、千里は体力が少ない。それが原因だ。
もう蘭が勝つかと思っていた。実際その結果は変わらないのかもしれない。
が、千里の動きに変化が起こる。
「はァァァァ」
防いだ直後に攻撃に切り替え、今度は千里が押す。
「わたしは迅さんに教えてもらったんだ。それを早く認めてもらいたいだから、だから――」
剣を強く握り、蘭に向かって強く言う。
「わたしは、ここでは負けられない!」
(千里は十分強くなったよ。でも、残念だったな)
次の試合は勝っても舞と当たる。そして負けることは決まっている。だからここで勝っても決勝にはたどり着けない。
もしCブロックに舞がいなかったら何か違ったのだろうか?
なぜか罪悪感に押しつぶされそうになる。それでも戦っている千里を見ていると元気が出る。
(俺の剣術でここまで行くとは……なかなかやるじゃん)
蘭も負けじと攻撃する。
千里はまた押され始めた。
もうそろそろ試合は終わるだろう。蘭があの技を使って終わらせるだろう。だが、千里もまだ粘っている。可能性はある。
そう思ったのも束の間。
「飛燕斬」
ズバッ、と千里を斬る。
千里は剣を使って耐えようとしたが、バランスを崩してすぐに倒れた。
戦闘不能だ。
『勝者……霧崎蘭!』
会場は歓声に包まれる。
いい試合だった。
素人からすると完全互角な戦いだっただろう。
千里も蘭も頑張った。特に千里は改良版の使いづらい技をあんな使い方するなんて誰も思ってもみなかった。
蘭はモモのカウンターを使おうとしたけど完全に自分流で勝っていた。
この次の蘭の試合の結果は舞の圧勝。
蘭が攻撃をする前に舞が切り伏せた。
※
ブロックの決勝まで勝ち進んだのは迅、凜、舞、真が勝ち進んだ。
そして相手は迅がランキング十位の居村颯。
反射神経がよく、迅の攻撃を避けることもあったが、魔力量が少なく十位でとどまっている。
そして凜のあいてはランキング二十位の神風風香。
ランキングを気にせず気の向くままに悪魔狩りをしているとここまで来た。
実力的には凜より下だが、千春に勝っている。そこそこいい勝負になるのではないだろうか。
舞の相手はなんと元エースの四島浩輔。
迅の教育係をしていた経験もある。さらに攻撃系の魔術を得意としているが、まあ今回は使えないし勝てない相手でもないだろう。
最後は真。
真の相手はランキング十一位の結城晴馬。
銃撃戦が得意で、この戦いをスナイパーライフル、マシンガン、ハンドガン、アサルトライフルで勝ち抜いてきた。
銃のほうが有利に見えるが、何もないので走り回って逃げていると案外当たらないし、後ろに回られると終わりだ。だが開始と同時に撃って完全勝利という結果を収めている。
強敵がそろっているが、ランキング一位、五位、三位、迅の護衛なら必ず勝てる。そう信じていた蘭たちだったが、そう甘くはなかった。
『決勝戦はなんと決戦は強化魔術と武創のみ使用が許可され、さらに!ステージがランダムで決まります!森林、廃坑、工場、繁華街、渓谷などなど、たくさんのステージの中から選ばれます。広いステージには二人きり。さて、生き残るのはどっちだ―!?』
観客はこの大会で最大の盛り上がりを見せている。
選手もワクワクしている。
『Aブロック決勝、エリアは森林。霧崎迅対居村颯。驚異の戦闘力が勝つか、世界一ともいえる反射神経が勝つか。さて、ついに決勝が始まる!!START!!!』
神装は強化とも言えない。だが、ここで使うと相手が死んでしまうかもしれないし使えない。せめて武器だけでも出したいが、まあ――
「武装・黒炎剣」
「来い、エンシェントアックス」
双剣VS斧。火力は斧のほうが上だが、迅の双剣は最強クラス。いくら高火力な斧でも勝てないだろう。しかも強化魔術OKだ。迅の勝ちは約束されたようなものだ。
「dead of tyrant」
蘭が学校でわかりにくいように使った強化魔術だ。まだ今はこれで行ける。
「神よ、我に力を与えたまへ」
強化が終わるまで待ってあげるこのやさしさ。だがここからはそんなものは一切ない。
「かかってこい、霧崎!」
「そ、じゃあお言葉に甘えて!」
ガキンと重低音が響き渡る。
双剣の火力では斧を折ることはまずできない。それなら防げない速さで行かないとダメージを与えることは出来ない。
「粉砕せよ、ブレイクマグナ」
森林での地割れ系攻撃は地形が崩れて戦いにくくなる。それを承知の上で颯は使う。
双剣の迅は、地形が崩れると戦いにくくなる。だから封じたいが、まともに受ければ一撃必殺。剣で弾けば剣が粉々。そのレベルの技だ。ここは退くしかない。
「はぁ、まあこの辺でいいや」
颯の位置からなるべく離れたが、ここまで振動が来た。約一キロは離れているはずなのに。
あの高火力だと双剣では歯が立たない。かといって大剣にするとこの森では戦いにくいし、木に引っかかるとそれが大きな隙になる。
あの技は地面に当てて地割れを起こす地形破壊専用の技だ。そんな技を人に使うとなるとタイミングが重要になってくる。それに当たった人も地形を崩せるような技が当たったのだからただじゃすまない。この空間なら一撃で気絶だ。
そんな技に対抗する作戦を考えなければならない。
迅は今大木の上に隠れている。そして颯は地上。
迅のいる位置から考えて、木の上からの奇襲が最善策だろう。だが、颯の反射神経なら奇襲くらいなら反応できる。木の上から近づいて奇襲、防がれたら周りの木を使って移動して、絶龍乱舞のようなことをするしかない。まずまともに戦うとやられる。
迅が日本最強の理由は魔力量と前世から引き継がれた力だけではない。迅の戦術はたいてい負けなし。技の精度も最強クラス。
「威力だけの脳筋に負けるわけがない」
作戦を決め、その通りに木のにぼり、颯のいるところまで行く。
音を立てないように進み、颯の上で下に降りる。
声も出さずに頭めがけて双剣を振り下ろす。
ガンッ
が、弾かれた。
「絶龍乱舞」
強化魔法の使用が許可されていればこれだって使える。
ほとんど防がれているが、武器の耐久がどんどん減っていっている。
(これなら)
さらに加速し、ついに一撃入れる。
「破岩斬」
攻撃が当たった刹那、颯が斧を横に振る。
何とか飛んで避けたが、木の枝に思いっきり頭をぶつけてしまった。
天井があれば刺さっていたかもしれない。いまはそのほうがありがたいけど――
「やばっ」
太い枝につかまって、何とか避けた。
下では颯が斧を超高速で回転させている。あんなのまともにくらったら即死だ。風もすごいし、木の葉が飛んで行って木が禿ていく。
中心にいる颯に攻撃を当てられたらいいけどあの威力のママ防がれたら終わる。これはもうあれにかけるしかない。
「神装、限定解放。アルテミス」
アルテミスの武器だけを出すという人類史上初の試み。
全身だけではなく、武装を使うのに必要な部位だけに神装を使う。だからアルテミスだと腕だ。そして武器も出す。
木の枝を猿のようにわたり、遠くまで離れ、試しに一発撃ってみる。
「ぐはっ」
矢はきれいに腕を貫いた。
「これならいける」
今度は頭めがけて矢を撃ち放つ。
一本目は確実に止められるのでその後ろに全く同じ軌道で飛ぶ矢をもう一本。
迅の感は当たった。
一本目の矢は弾かれ、消えていった。だが、二本目はきれいに頭を貫いた。
「ぐっ……………」
颯は倒れた。
『勝者、霧崎迅』
最後は初めてどころか思いついたばかりの技を試して成功して勝った。
『最後のあれは?』
定番の質問コーナー。
「うーん、まあ制御できるようになったからですかねー」
そう、迅は神装を使うのに魔力制御がなかなかできず、限定解放なんてできなかった。だが、試してみると意外にできた。
神装のことについてばれていなければいいけど……
会場を後にしてBブロックの客席。
『Bブロック決勝戦、ステージは浜辺。霧崎凜対神風風香。支援魔法専門の凜選手がなんと決勝戦まで!そして気まぐれハンター神風風香。ランクは凜選手のほうが上でも戦闘慣れしているのは風香選手。ランキング上位が勝つか、戦闘慣れが勝つか、どうなるのでしょう?』
凜は支援専門なので強化は得意。そして戦うのも護身術があるし、それをうまく使えば勝てるだろう。
大して風香。槍使いで、戦うときは先手必勝。すぐに終わらせる。
スピードと戦術はどっちが勝つのか?
『START』
風香がいつもの戦い方と同じように真っ先に凜に向かって突っ込んでいく。
だが、凜は避け、風香の腕をつかみ走ってきたほうこうとは逆のほうに投げる。
槍をうまく使って着地した。
「ブラストテンペスト」
槍を高速回転させ、その勢いのまま蘭を突く。
「んっ」
武装を変えていたおかげで普通に防ぐことが出来た。
『姉ちゃん、剣のほうがいい』
『はーい』
姉ちゃんには武創を教えたので戦闘中に武器を変えることは出来る。迅ほど強いものが創れるわけではないが、剣が創れるし勝てる?だろう。
『それは……レイピア?』
『うん。剣のイメージがね?』
『使えるならそれでやってみればいいよ』
レイピア初体験の凜が使いこなせるとは思えないがなんか面白そうだし暖かく見守る。
「えいっ」
剣としてはうまく使っている。
槍を止めたりするのに突いてはいるが、それ以外での突きは一切ない。レイピアとしての使い方をわかっているのだろうか?
でもまあちゃんと戦えている。
風香が槍を使って飛んだり、トリッキーな動きを見せる。
それで後ろに回ったり、攻撃を回避したりと、すごい戦い方だ。
「はぁっ!」
「見えない!?」
風香の攻撃が全く見えなかった。
脇腹を刺され、怯んだところでまた同じ攻撃が来る。
「いっ」
『姉ちゃん、パターンが読めた。一発目は絶対に右から来る』
『ありがと』
一発目は右から。あとはランダムだ。それなら一発目さえ防げば確実にこの攻撃を避けることが出来る。
『来た』
右からの攻撃を防ぎ、そのまま攻撃に移る。
『フルパワーで薙ぎ払って』
『了解ッ!』
いいタイミングだ。風香も避け切れずに胸に当たった。巨乳の弱点というわけだな。
『追撃』
薙ぎ払って、避けたところに走っていき、さらに攻撃を加える。
「いける―」
凜も戦うのに慣れてきたころだろうが、そろそろ危ない。
風香の戦い方を見ているとどうしても引っかかる節がある。
風香はトリッキーな動きをしている。それなのにいまだに勝敗がついていない。
凜は支援専門でここまで戦えればいいほうだ。しかも風香はあれだけトリッキーな動きをしているのにまだ終わっていないということは何かある。凜は武器をレイピアに変えてからいい勝負になっている。だが、気まぐれで戦って二十位までくるような風香が負けるはずがない。しかも槍であんな動きをしながら戦うんだ、何か隠し技でもあるのだろう。例えばさっきの見えない三点付き。それに槍を使ったジャンプ回避。ジャンプ攻撃。これから予想できるのはリーチを変えての攻撃か、某狩ゲーの武器のような動き、そしてあの
ブラストテンペストと同じような技。
「ブラストテンペスト・EX」
単純な名前だが、さっきよりも強くなっている。
凜はいったん引いて、距離をとるが、風圧が強く、これだと槍が来た時に避けれない。
強化魔術だけであれだけの技が使えるなら凜の勝つ確率は低い。
が――その可能性をぶち壊すのが凜、いや、霧崎家だ。
『姉ちゃん、さっきの三点突き――できるよね?』
『まああの時の姿勢とか見てたし出来ないこともないけど……』
『頑張れ』
『わ、わかった』
凜の三点突き。レイピアも突き系の攻撃はできるしあの技を使うことは出来る。さらに凜の強化魔術は普通よりも五倍以上の強さだったりもする。
ブラストテンペストくらい止められるだろう。
「行くよ、風香ちゃん」
「負けません、凜先輩」
迅の予想はあたり、やはり風香はあの風を纏った槍を投げ飛ばした。
そして凜の三点突きはきれいに槍の矛先を突き、止めた。
少し見た程度の技をここまで使いこなせるのならいける。使った本人よりもいい。しかも一点を三連続で突いてあの速度の槍を止めるなら勝てる。
下に落ちていく槍を蹴って前に出し、また同じ技で今度は槍を風香に向かって飛ばす。
「行くよー」
槍についていくように走り、槍が止められたところであの三点突き。
「うぅっ」
それでも攻撃はやまない。
三点突きに加えて、薙ぎ払い、死蝶ノ舞のようなものなど、いろいろな技を入れて、攻撃の隙を与えない。
支援魔法専門とはいえ護身術を使えて、たまに剣術も使ったりする。もう風香には勝ち目がないだろう。
※
「さて、姉ちゃんはここからどう動くかな?」
マイクを外して言う。
凜は技の連携で敵に攻撃の隙を与えずに一方的に攻撃している。
「優斗はどう見るかな?」
「あれは神風が負けるな。死蝶ノ舞みたいなやつを入れてくるとさすがに神風でも勝てないな」
まったくもってその通りだ。
今の風香には勝ち目がない。
ここでまた強い技でも使わないと勝てない。
「ここで姉ちゃんが押し切るか風香が逆転するか、どうなるかな?」
「いい試合っちゃいい試合」
「ははっ、まあ今見る限りはね」
気まぐれ戦士風香ちゃんは強い。強化だけであの投げ技を使えるのならここで槍を使って防げば勝てるだろう。凜はオリジナルの強い技を持っていない。他人のコピーを使うことはよくあるがそれが見抜かれたらもう勝ち目はない。気づかれる前に蹴りをつけないと勝ち目はない。それをわかったうえで迅はいま指示をしていない。
凜が勝つ条件は二つ。
一つは風香が強いレイピアでも使える技を出すこと。
二つは凜のコピー能力が気づかれないこと。
今は二つともクリアしている。三点突きは強い。そしてそれを一点に何発も入れられれば相当なダメージが入る。それを心臓に刺せば一撃必殺。
だがこれをしようとしない。
このままだと凜の勝率は下がっていくばかりだ。
早く決めないと――
「負ける」
凜の攻撃速度が下がってきている。
微妙ではあるが、これなら優斗でも防げるだろう。
『姉ちゃん――』
※
ダメだ、疲れてきた。
もうそろそろ終わる。
『姉ちゃん、速く決めて』
『そう、だよね』
凜はもう体力の限界が近づいてきた。だから決めに行く。
風香に悟られてはだめだ。悟られないように死蝶ノ舞みたいなのから三点突きの一点集中版に返る。
「これはッ!?」
自分の使っていた技がさらに強くなって返された。それで動揺している。
「そうだね……じゃあ、破心迅速突き」」
センスはないがまあ強ければいいだろう。
風香の心臓めがけて超高速で突く。さすがに防ぎきれずにすべてくらい、即死だった。死んではないが、あれを喰らってすぐ倒れた。
『勝者、霧崎凜!!』
これで霧崎家二人が最終戦に進んだ。
次の試合は舞VS四島浩輔。元エースに舞は勝てるのか、負けるのか。
負ける場合は開始速攻だろう。
だがたとえ舞が勝っても次真と当たったら舞の敗北は確実。最後まで上がってくるのは舞が四島に勝利して、晴馬が真に勝利すること。
これはCブロック決勝よりDブロック決勝、そしてその次のAブロック対Bブロック、Cブロック対Dブロックの試合が楽しみだ。そして最終決戦。
『Cブロック決勝、八雲舞対四島浩輔。ランキング二位が勝つか日本最強、霧崎迅の教育係で元エースが勝つか、どちらが勝ってもおかしくないこの試合、どう動くのか!
それでは、START』
実況よ、どちらが勝ってもおかしくないということは全くない。
元エース、四島が早速動く。
「え――」
一気に加速した四島の動きをとらえることが出来ず、舞は攻撃される。
何とか気絶はしなかったが、それでも今のは致命傷だ。
これはもう舞に勝ち目はない。
四島がまた加速し、決めに来る。
これにもついて行けずまたもや攻撃をくらう。
あの加速した四島について行けるのは世界中を見ても少ない。次の一撃で舞は――
負ける。
「いっ―――」
行けると言いかけて斬られ、倒れた。
『しょ、勝者、四島浩輔!』
三発で舞がやられた。
これでCブロックの試合は終了。
何が起きたかもわからず、観客席は静まり返り、さらに実況席もあまりの光景に実況を忘れている。
迅や凜の第一部隊のメンバーでさえ何も言ってない。
酷い結果だった。
そういえばなぜ四島さんがここにいるのかはよくわからないが、まあ迅か真が勝つだろう。
このすぐに終わった決勝戦あ、真、そして迅にとっても勉強になった。
迅も真も四島と当たっても対策はしてくる。
次のDブロック決勝でこの後の展開が分かれる。
Dブロック決戦、真対晴馬。
晴馬は銃を使ってここまで上がってきた。
晴馬の命中精度は相当なものだ、真でも舐めてかかるとやられるだろう。
『Dブロック決勝、ステージは大都市。真藤真対結城晴馬。戦術なら迅と同等の真が勝つか、百発百中、驚異の命中精度の結城晴馬が勝つか。この試合は展開が想像もできません。
それでは、START』
開始直後に晴馬が撃つ。
全く当たってはいないが、真をいい位置に動かせた。
開始そうそう相手の位置を見つける晴馬の能力はこのステージでは役に立つ。
スナイパーライフルでヘッドショットを狙っているが、当たらない。だが、真が避けて行っているのは自分が不利になる位置。
(弾道から敵の位置を予測)
弾が飛んでくるのは北の方向。そして角度は床から八十二度。あまり遠くはないだろうしすぐに近づける。
晴馬のいるビルの屋上に向かって走ってく。
飛んできた弾を横に避け、近づいていく。
「ちっ」
居場所がばれた上に、真のいる位置だと当てにくくなっていき、場所を変える。
ビルの屋上にいた晴馬は、降りるのに飛び降りるか、階段を使うしかない。
飛び降りるとその分真に場所がばれやすい。その代わり、弾が当てやすくなる。そして階段を使うとばれにくいが、遭遇した時に弾が当てにくくなる。
どっちにするのが正解か。
すでに真はビルの入り口まで来た。
そして真もどっちから行くか迷っていた。
「んー、よし。飛ぼう」
足に魔力を集中させて、思いっきり跳躍する。
その上にはまだ晴馬。
「飛ぼう」
晴馬も飛ぶ。
真も晴馬も飛ぶということは降りている途中で遭遇するということ。
これだと晴馬のほうが有利になる。
「あ――」
「あ――」
遭遇してしまった。
もちろんすぐに戦闘が始まる。
真は壁をつたって避ける。それを追うように晴馬が撃つ。ここだと晴馬が有利だが、まだ真も一度も当たってはいない。
真が歩いたところのガラスが割れていくので、道がどんどん減っていく。そして逃げ道が減っていき、さらに上に上がっている。これだと不利になる。
「そうだ―」
真は気づいた。
一度上に上がって、そこから弾を弾きつつ晴馬に接近し、斬ればいいと。
まだ上には行ける。それならチャンスはある。
足にさらに魔力を込めて、走る。
「来た!」
晴馬めがけて落ちると弾が大量に来た。マシンガンの二刀流だ。だが、避けられないほどでもない。
「はぁぁぁぁぁ」
自分に当たる範囲に来る弾だけを斬り、それ以外はスルー。その手で行って目の前まで来た。
「でやっ!」
ガンッ
銃でのガード。そう簡単には行かなかった。
「なっ―」
片手を放した。そんなことをしたら下に飛ばされるはずだ。
「そういうことかッ」
ハンドガンを出して、油断した真に撃つ。
辛うじて避けたが、変な姿勢になってしまい、落ちる速度が上がった。
『姿勢を立て直して』
『了解ッ』
何とか態勢を直し、うまく着地する。
「いってーーーー」
反動を抑えるのに失敗した。
まあ着地は出来たし問題ない。
が―
「どうやってよけるかな?」
あの弾幕をここでよけるのは難しい。
ここなら剣ではじくことも出来るが、迅のように魔力が多いわけではない。剣技だけで何とかしなければいけない。
・ここで日本二位レベルが敗退
・護衛をはずされる
この二つだけは避けたい。
こうなったらあの技だ。
「裂傷斬」
双剣で使う技ではないが、出来ないことも無い。それならこれにかけるしかない。
一%でも勝てる確立があるなら使う。
九十九%失敗するのもわかっている。
だが、こういうときにはご都合主義の何かがあるはずだ。それを信じて―
サッ
剣は掠っただけだ。だが、やれた。真が勝った。
最後は完全に賭けに出た。それでも何とか勝てた。
『勝者、真藤真』
あの賭けに失敗していたら負けていただろう。
絣もせずに後ろに行って、そこを撃たれて負けただろう。だが、勝てたのだ。今はそれでいい。どうせ次の試合で負けることはわかっているのだから。
「お疲れ」
「はぁ、前のアホ悪魔より強かった」
「まああいつは銃だけでここまで上がってきたんだから」
マシンガンなら楽に勝てるだろうと思うだろうが、それは違う。
ラディウスのメンバーは上位になると身体能力も普通に高い。だから走って回避しようと思えば出来る。それを倒した晴馬は真に勝ってもおかしくは無かっただろう。今回の試合は惜しかった。
「どうせ次は即死だろうし、もう帰る」
「そ、じゃあまた明日」
次の最終決戦は明日だ。それに備えて練習する奴はもういないだろう。迅対凛。これは迅が勝つ。そして、四島対晴馬は四島が勝つ。これはもうわかりきったことだ。迅は強化魔術さえ使えれば基本なんでも倒せる。そしてあの凛にも勝てる。だが凛は強化を使っても戦闘の技術が少ないため、オリジナルの技まで使う迅には勝てない。そして、魔力量も負けている。四島はとにかく強すぎる。だって元エースだし。迅も戦うとなると神装使うことになるかもしれない。
ついにブロックでの一位は決まった。
あとはA,Bの代表が戦って勝った方とC,Dの代表が戦って勝った方が戦い、そこでさらに勝ったほうが全国出場になる。
迅は元エースで指導係だった四島に勝てるのか――
アウェイ