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世界ランキング第二位の俺は金のために無双する  作者: 漆黒のギル
2章 始まりの予感
8/12

ソロで行く、テロリストとの全面戦争

 決戦前日。

 それは、あの約束の日だった。

 例のヤクザとの待ち合わせにショッピングモールに行った。

 だが、そいつはいない。それどころか人がいない。客がいないだけならまだ理由があるだろうが、店員すらいない。

「なんで……せっかく来てあげたのに」

 その発言が合図だったかのように後ろから人が来る。

「そりゃ悪かったな」

「は―」

 後ろから口に布を当てられた。

 眠くなる。ということは睡眠薬が仕込んである。

 迅は数分耐えたが、耐えるのが限界で、抵抗が出来なかった。

 完全に眠った迅は、車に乗せられ、日本ではないどこかに連れていかれた。

 ついた頃にはもう朝だった。

 迅も目を覚ます。するとそこは荒れた街だった。

 そこにある家の中で迅は眠っていた。

「しらないて……天井がない」

 屋根が吹き飛んでて、天井がなかった。壁もなくなっているところが多々あり、風が吹くと寒い。

「ここは……」

(ここはノエルがぶち壊した帝国だよ) 

(今度は誰?)

(ヒントはこれだけ。あとは頑張って)

(だから!)

 またもや反応は無し。いつものパターンだ。

 ノエルがぶち壊した帝国ということは昔はぐれ魔導士と悪魔が占領していた帝国だ。それなら道は覚えている。

「俺はもう帰る。追ってくるならそうすればいい。その代わり――死んでも知らないけど」

 状況が理解できた。昨日誘拐されて、適当な場所に捨てられた。目的は暗殺、監禁、脅迫ではない。迅一人を集団で殺そうとしているのだ。それを知っているのは途中で起きたからだ。

 車の中で目が覚めた。その時に作戦を聞いた。

 あの時に逃げるという手もあったが、後ろに戦車、上には戦闘機、そして迅の左右には銃を構えている戦闘員がいた。

 逃げることも出来なくもなかったが、下手したら死ぬことになるのでそうはしなかった。だが、その結果さらに面倒なことになった。

「障壁展開!」

 横から弾丸が飛んできたことに気付き、すぐに障壁を展開させる。

 やはりそう簡単には逃がしてはくれなさそうだ。 

 家を出ることはできたが、この先に行くには、まだまだ敵が多い。

「撃てー!」

 敵の合図とともに、一瞬で周りは弾幕で包まれる。

 ここで判断を間違えると即死。

 だが、考えている暇もない。

「武装・黒龍神刀」

 当たるまで時間はある。だが、魔術の詠唱はできない。剣ですべて切り落とすしかない。障壁を張りたかったが、体全体を保護しようとすると、その分防御が落ちて壊れやすくなる。しかも、この数だともって数秒。

 三、二、一、スタート。

 タイミングを合わせ、周りの弾丸を落としていく。

 早く。とにかく早く。スピードだけを考えて強化する。そして斬る。ひたすら斬る。

「うっ」

 そろそろ限界だ。この速さで動いていると肉体へ影響が出るレベルだ。血も出てきた。体も痛い。

 それでも――

「オーバーリミット!」

 限界を突破した。これで関係なくスピードを出せる。

「はァァァァァァアァァァァァ!」

 さらに早く、強くなる。

 その分痛さも増していくが、もう何も気にしない。関係ない。

「これで―――終わりッ!」

 最後の一発を落とした。

 敵はリロード中。

「神話武装・エクスカリバー」

 聖剣エクスカリバーを顕現させ、銃を持っていた戦闘員を片っ端から斬り殺す。

 だが、数が多すぎる。今ここで銃を構えているのは四捨五入しても少なくなったのに五百人はいる。

 それでも迅は斬っていく。

 数なんて関係なく自分の目の前の敵だけを斬る。

 半分に達したときにはもう血で全身が真っ赤になった。この戦いはもはや喧嘩ではない。戦争だ。

 迅はすでに二百五十人も殺した。が、まだまだだ。

「あと半分は……あー、めんどくさい!『サンダーストーム』」

 残り半分の戦闘員がいるところの上空に巨大な魔法陣ができる。

「フルバースト!」

 そしてそこから最大出力の雷の雨が降り注ぐ。

 約二百五十人は全員よけきれずに死んだ。これで銃を構えていたやつらを殲滅した。

「次は――何が来るかなぁ?」

 散らばっている死体の上を歩いて先へ進む。

 あたりは血の海になっている。

 魔術で殺された奴らのところには内臓が飛び出ている死体もある。

 進んだ先には戦車が大量に並んでいる。その戦闘にはそこらの戦車とは比べ物にならないくらいの大きさの戦車がある。

 合図はさっきと同じだった。

 最前線にいる奴が「撃て!」と言ったら砲撃が始まった。

 迅はこの程度結界で防げばいいと思った。だが、それは甘かった。

「なっ!?」

 あっさりと結界が破られた。

 障壁だと死んでいただろう。

「これは魔術的結界を破壊する。その程度だと貫通など容易いぞ!」

「そうですか!」

 砲撃はやまない。

 それなら目の前に来た弾丸を打ち落とせばいい。

「ライトニング・レイ。バレットフルオープン」

 迅を中心に周りに大量の雷の矢を創り出す。

「シュート」

 直撃するもの、直撃はしなくても爆風などが来るものはすべて打ち落とした。

 砲撃がやむまで打ち落とし続けた。

 周りの矢が消えるころには敵の砲撃もやんでいた。

「守るばかりでは我々には勝てない!」

 テロリストの武装は怖いものだ。

 結界を破る砲撃なんて聞いたことがない。

 だが、砲撃さえやめばこっちのものだ。

「それなら俺も――」

 前に出てきた黒いオーラがまた出てくる。

「武装・黒炎剣」

 あの時の剣を顕現する。

 使用者から出ているオーラに比例するのか、前以上に炎が強い。

「絶龍乱舞」

 まずは最前線のデカい戦車から。

 周りにビルとかがあってありがたい。この地形が一番やりやすい。が―

「弾かれた!?」

 斬撃が弾かれた。

 確かに敵の装甲は金属だ。だが、その程度ならこの剣で斬れるはずだ。

 そうするとこの装甲は何かしらの細工がしてある。

 今考えられる中で一番高確率なものは強化魔術だ。

 基本中の基本で、魔術師ならほとんどの人ができる魔術で、それでも使い方によっては強化だけで戦えるくらいだ。こういう時に絶対使うやつはいるだろう。

 それなら貫通系か衝撃系の技で行けば何とかなるはずだ。

 弾かれるが、攻撃し続け、自然に下に入る。そしてそこで使う―

「インパルス!」

 剣の先を中心として、そこから衝撃を加える。そして振動で内側にダメージを与える。

 ついでに電流もあるので機器系のものにもダメージを与え、使用不能にする。

「その程度のことは想定済みだ。魔術を創るあらゆるプロセスをすっ飛ばして新しい魔術を創ってしまうやつだ。これくらいすることは想定してある」

 このテロリスト共は予想以上に計算高い。いやそうでもないとこんなすごいもの持ってはないと思うけど―

「それならここは一気に突破させてもらうよ」

 知る人は本当に限られている技。

 魔力の波動で人が死ぬレベル。

 これを使えばこの程度すぐ終わる。

 そう、あの技だ。

 魔神討伐作戦で使用することになっているあの技。

「神装開放!形態・アルテミス」

 封印していた魔力を一部開放し、その魔力で神の力を使用する。

 神の力を使うのは前世、前前世、前前前世、さらにその前から受け継がれてきた力だが、今まで使ったことがなかった。

 神装形態・アルテミス。

 アルテミスは狩猟を司る女神。

 この状況で狩猟は何か違う気もするが、戦えればなんでもいい。

「射抜け、月光神矢」

 アルテミスの形態の時の特化武装は弓。それを使えば攻撃も破壊力も一気に上がる。

 さっきの衝撃で少々弱くなった戦車を一撃で射抜き、後ろの戦車もすべて破壊した。

「これは想定外だったはずだよね?まあ証拠を残さないためにもここにいる全員――殺すけどね?」

 神装を使用している迅にこの場ではもはや敵はいない。

 第二形態以上に行くこともないだろう。だが、魔力にも限りはある。

 常人の何倍も多いが、この数相手にずっと神装を使っていると一時間も持たない。

 制限時間は一時間とまではいかないが、せめて神装で半分は減らしたい。

「穿て――違う!障壁展開!!」

 

バァァン

 

 ギリギリ間に合った。

 前の戦車を破壊しようとしたら、手榴弾が飛んできた。

 もし障壁を張らなかったら死んでいただろう。

 今回の敵はいつもの悪魔よりも強い。武器なども完全にそろえてある。

「へぇ、そう来たか……まあ、楽しめそうだしよしとしよう。さぁ、死の狂宴の始まりだ!」

 黒さがさらに増す。そして力も増幅していく。

 真上に飛び、そこから戦車めがけて矢を撃ち放つ。

 一体一体で効率は悪いものの、確実に破壊していく。

「装填完了、いつでも撃てます」

「時間稼ぎご苦労」

 その下での会話も迅には聞こえていなかった。

 もし聞こえていたらすぐに対応ができた。

「圧縮魔力砲・アンドロアルフス、発射用意」

 戦車に集中していて見えていなかったが、よく見ると奥のほうに砲台が見える。

 その砲台の先に、魔法陣が五つ展開されていて、弾も魔力砲も発射寸前だった。

「撃てー!」

「我が身を守れ、セイクリッドシールド」

 当たるが先か、守るが先か。

「ぐっ」

 紙一重で防ぐことが出来た。だが、いきなりだったせいで反動がある。ダメージはないが、後ろに押されてしまった。

「第二陣は後退。第一陣だけで乗り切れ!」

 後ろの戦車が引いていく。

 少しは楽になったが、後ろに下がったせいで敵が遠くなり、狙いがつけにくくなった。

 が、その程度で屈するわけがない。

「煉獄の炎を纏いし竜よ、我が身に力を与えたまへ」

 そうそう使うことのない詠唱を必要とする魔術で、力をさらに強化する。

 なれない魔術で、制御が出来ないかもしれないが、状況が状況だし仕方がない。

「そしてこの世を滅ぼす炎となれ――『イフリート・ヘルファイア』!」

 その魔術をさらに矢に属性として付与し、撃ち放つ。

 炎の矢は、何もない地面に刺さり、そこから半径一キロを火の海に変えた。

 だが、戦車の装甲に傷はない。

 吹き飛んで壊れたものもあるが、そうではない戦車はすべて無傷だ。

 今の魔術で戦車が壊れなかったというのならまだまだ強力な魔術でないといけない。

 神の力はもう使った。これなら確実だが、燃費が悪すぎる。かといって魔術は本当に世界を滅ぼしてしまうかもしれない。それだけ危険な魔術でないと倒せない。装甲が硬すぎる。というよりも強化の質が高すぎる。強化さえ無効かすればばすぐに終わるだ、そんなことしたことはないし、した奴も見たことがない。

 それなら今から創ればいい。

「魔導書、起きろ」

『はい、マスター』

「強化を無効化する系の魔術ってあったっけ?」

『ないですが、創れます』

「時間稼ぎするから任せた」

『yes my lord』

 案外楽だった。

 このあらゆるプロセスをすっ飛ばして魔術を創れる便利な魔導書があれば敵はいない。遥さんを除いて。

 だが、創るのに時間がかからないわけじゃない。時間稼ぎといったが、正直できることが今はない。

 月光神矢でも使えばすぐ終わるが、魔力の消費が激しすぎて使う気にならない。それならひたすら飛んでくる弾を避けるしかない。

「弾幕ごっこは得意だ――っていえたらいいと思うけどそうでもないからお手柔らかに」

「そうか。では弾幕ごっこと行こうか……全砲台を目標、霧崎迅。全方位から撃て!」

「素人にそれは酷いと思うんだけど?」

「話す余裕があるんじゃないか」

「いや、ないです。手加減してください」

「答えは――NOだ」

 全方位からの銃弾程度なら行けたが、魔力砲もある。たまにミサイルまで飛んできて、斬り落とすなどそんなことが出来なくなった。

 今はもうひたすら避けるしかない。

 っていうか周りにもいたなんて気づかなかった。

 避けるだけなら神装を使う必要はないということで、いったん解除し、また避ける。

 上に逃げれば早いとも思ったが、完全に封じ込められている。敵は本気で殺しに来ているというわけだ。

『マスター、完了しました』

「さんきゅ、じゃあ早速それ使う」

『yes my lord』

 無詠唱で発動させる。

 が、弾幕の中から抜け出すことが出来ない。

「魔導書よ……これどうやって抜け出せばいいと思う?」

『合図しますのでライトニング・レイを最大出力で前に撃ってください』

「それで行けるなら」

『では、三、二、一、発射』

「ライトニング・レイ!」

 目の前の弾丸が全て消える。

 ようやく理解した。

 目の前の弾丸が全て消えたところで一気に走り抜ける。そして剣に強化解除の魔術を付与させてそれで斬っていく。というわけだろう。

「神話武装・エクスカリバー」

 そしてその剣に強化解除の力を付与し、戦車を斬っていく。

「なっ!?」

 斬れる。

 さっきのように弾かれない。しかも軽く斬っただけで真っ二つになる。これだから一度やりだしたら止まらないんだ。無双は――

「俺に勝てると、思うなよ!」

 夢中になり過ぎてまたキャラが変わっている。これは完全に戦闘モードだ。怒り喰らうイビ○ジョーだ。

 斬って斬って斬りまくる。

 あたりは血まみれ。迅は全身真っ赤。へこんでいるところは血がたまって、さすがに見せられないことになっている。

 戦車に乗っていた人も一緒に斬られるか、爆発に巻き込まれるかで全員死んだ。

 たぶん神装を使ったときに報告しに行ったやつがいるだろう。だがそいつも死んだはずだ。

 もうだれにも止められない。少なくともこの滅びた帝国の中にいる人では絶対に止められないだろう。戦闘機が来ようと、核兵器をぶち込まれようと、プロの殺し屋が来ようと、誰にも止められない。

 もう戦車はない。

 そうなると迅の標的は指揮官になる。

 が、殺さなかった。

「お前はとりあえずついてこい」

「は、はい」

 これは作戦の内だ。

 指揮官がいなくなると軍はまとまらなくなる。たぶんほかの陣にも一人ずつついているだろうが、そいつらはあとで死ぬことになるのは変わりない。だから一人減っただけでも大きな損傷のはずだ。

 それなら殺したほうが速いが、脅しに使えば少しは有効活用できる。

 もう迅のやっていることは正義の味方(?)とは思えない。かといってテロリスト、はぐれ魔導士なんかでもない。悪魔もランクが低い。これはもう人ならざる者だ。例えるなら――

「クソッ、お前はもう人間でも悪魔でもない。魔人だ」

 魔神とまでは行かなかったが、十分ひどい。人間を、悪魔を超えてしまったのだ。もう人権なんてものは適用されないだろう。人を殺した数だって世界一にもなるだろう。訴えられて死刑、それよりもひどい拷問だってあり得るかもしれない。

 そうなっても誰も文句は言えないが。まあ自業自得だ。

 テレビでヤクザ、テロリスト、はぐれ魔導士に宣戦布告した上に、約五十人の片腕を斬り落としている。止血はしたけど。

 とはいえそんなことをしたのだから世間から人間とみられることはもうないだろう。学校でも近づいてくる人なんていなくなる。ボッチに戻る。

 まあそんなこと気にしないのが迅でもあるが……

「もう魔人、か……まあ、しょうがないか」

 もし家族に見捨てられたらと考えると、やりづらくなる。

「でもまあここで死ぬよりはましだよね。うん。すぅーー、はぁーー」

 深呼吸して一度落ち着いて指揮官に問う。

「次はどこで待ち構えてる?」

「ここをまっすぐ行って、一本だけ残った木を右に曲がったところだ。あそこは強いぞ」

「ありがと」

 敵に普通に接する気まぐれさ。これがあったから生き残れたのかもしれない。

 荒れた地面に返り血をたらしながら歩いて木のところに着く。

 そこで一人のがたいのいい男が一本の大剣をもって待ち構えていた。

 あの男は「待ちわびたぞ」などというのかと思いきや、いきなり斬りかかってくる。

 全く想定していなかったわけではなかったので剣を出してかわすことはできた。だが、一撃が重く、防ぐことしかできなかった。

 敵が一度後ろに下がった隙に、指揮官を拘束し、動けなくして、迅はお気に入りの武器を出す。もちろん魔術で。

「その程度で勝てると思うなァァ!」

 今のはダガーでは防げないと思い、横に避けた。

 それが正解だっただろう。

 地面は豪快に抉れている。それなのに大剣には傷一つついていない。

 もしこれを防いでいたら一撃で武器が粉砕され、迅ごと真っ二つだっただろう。

「確かにその威力相手だとダガーじゃ勝てないかもしれない。でも逆に言うと一番得意な武器じゃないとお前は倒せない」

 だからダガーを選んだ。

 そう言いかけたが、挑発になると思ってやめた。

 あの男相手に挑発など自殺行為だ。さすがの迅でもそんなことはしないし、やりたくなかった。素人相手に負けるのも気が引ける。ここでまた神装を使うのは嫌だけどやむを得ない。

「神装解放、形態・タナトス」

 特化武装は知らないが、死を司る神だ。この戦いではちょうどいいだろう。

「デヤァァッ!」

 男は大剣を使っているとは思えない速さで斬ってくる。

「神の名のもとに命ず。我が力を増幅せよ」

 神の権限で力をさらに解放し、攻撃、スピード、防御などを上げる。そして反撃開始。

 重い斬撃を躱しつつ接近し、攻撃を与える。

 これといった致命的な傷は与えられないものの、少しずつダメージを与えていく。

「ちっ、こいつ手強過ぎる」

 どれだけ傷をつけても威力が全く落ちない。

 それならまだ方法はある。

「武装変更・黒炎剣」

 ダガーでは勝てないことを確信し、双剣に返る。これで勝率は少しは上がるだろう。といってもあれだけの威力の斬撃だ。攻撃を防ぐのではなく、受け流さないとすぐに武器が壊れるだろう。一応黒いオーラで武器は強化されているが、だからと言って壊れないわけではない。正直言ってあれはチート過ぎると思う。油断したら即死なレベルだ。

「崩・震・裂・破ッ!」

 男は全力で地面に大剣を叩きつける。すると、地面が割れて、そこに巨大な穴ができる。されに地震まで起き、たっていられない。

「これで……死ねェ!」

 またまた紙一重で横に避ける。

 地震が収まってから、立ち上がり、敵の弱点がわかったような言い方でこう告げる。

「お前は確かに強い。だが!その程度なら簡単だ」

 迅がにやけて武器を収める。そして腕と足を強化し、殴りかかる。

「フンっ」

 男は一発目は大剣で防いだ。が、それで男は詰んだ。

「覇王滅却」

 聞き手の右手に魔力を込めて大剣ごと殴る。

「なっ―」

 大剣は割れたが、迅の殴る威力は落ちない。それが男の鳩尾の直撃し、一発で吹っ飛んだ。後ろに生えていた一本のに当たりそれと一緒に遠くへ飛んでいく。そして男は星となった。

「ふぅ、終わった終わった」

 後ろで見ていた指揮官は口を開け、ポカンとしたまま動かない。

「めんどくせ」

 そうは言いつつも、指揮官を引きずりながら次の陣が待ち構えているところまで行く。

 着いたら指揮官を投げ捨てて構える。

 が、何も起こらない。たが人が立っているだけで全然撃ってこない。

(まさかッ!?)

 動かない。ということはこれは罠だ。どこかから攻撃が来る。

 警戒しつつ先へ進み、人を攻撃するとやはり消えた。それと同時に魔力の弾が飛んできた。

 顔の横をすれすれで通って行っただけだったおかげで掠り傷もないが、スピード的に当たったら危なかっただろう。

 弾幕、大剣の男、ミサイル入りの弾幕ときて次はトラップ。出るのに時間がかかりそうだ。

 今偽物を攻撃して魔弾が飛んできた。他のを攻撃して何が来るか予想できないし、どこから来るかもわからない。せめてくる場所さえ分ければ楽に攻略できるけど――

「アイシクル・レイ」

 懐かしのあの技で一気に消し飛ばす。

 敵は死んだ。

「しょ、しょぼい」

 トラップも発動しないまま終わった。もう少し頑張ってほしかった。

 そう思っていた。その願いがかなってしまうとは思ってもみなかった。

「ちょ、それは反則でしょ?」

 上から降ってきたのは核ミサイル。もう魔術なんて関係ない。そんなものよりも危ないものが降ってきていた。

 一人を殺すためだけに核ミサイルを撃つなんて聞いたことがない。そしてこれからも聞くことなんてないだろう。

 だが、冷静に考えれば楽なことだ。

「神装形態・アルテミス。

 穿て、聖なる光の矢・ジャッジメントクロスアロー」

 核ミサイルに向けて本気の技をぶちかます。そうすれば早いことだ。

 放射能はまあ結界で何とかできる。

 核ミサイルは見事に壊れた。そして迅は爆風、放射能などは結界で完全に防いだ。ただ、そのミサイルは相当の威力があり、周りの建物が一瞬にして粉砕された。

 これには驚いたが、何としてでも殺そうとしてくる奴だ、これくらいしても当然だ。驚かないのも無理はあるが、この先もっとひどいことになるかもしれない。

 今飛んできたミサイルで最後だったのか、何も来なくなった。

 本当に安全だということを確認してやっと起きた指揮官を連れて次の場所に行く。

「で、次は?」

「次で最後だ。一万人はいるだろうな」

「うわっ、めんどくさっ」

「お前が自分で蒔いた種だ。さっさと回収するといい」

 このときは回収の意味が分かってはいなかったが、約一万人が待ち構えているところに行けばすぐにわかった。何の隠喩だったのかが――

「この数は……吐き気してきた」

 確かに人は多い。

 迅が人酔いしてくるレベルだ。

 多すぎて奥のほうはいるのかいないのかわからない。さらに全員武器を持っていて、魔導士までいるという奇跡の大群。これに勝てる自信はないが、勝って帰らないと日本は日本で大変なことになるだろう。とくに今は作戦の準備段階だ。迅は重要人物にもなっているし、絶対にこの戦いで死ぬことはできない。いや、この戦いで勝てない程度じゃあ魔神になんて到底かなわない。ここは勝つしかない。

「神装形態・アザゼル」

 これはもはや神ではない。堕天使だ。

 だが、戦うにはちょうどいいだろう。『神の如き強者』これなら戦うにも十分だ。

 特化武装は片手剣。片方に盾を持てる。

 だが、迅は盾を持たず、双剣にして戦った。

「暗殺技・死蝶ノ舞」

 何も考えず突っ込んでいき、ひたすら無双系の技を使う。『滅龍乱舞』『死蝶ノ舞』etc

 敵は確実に数を減らした言った。だが一万人以上はいる。どれだけ無双しようと、どれだけ乱舞で殺そうと、敵の戦力はあまり変わらない。

 またもや全方位から襲い掛かってくる。敵が引いたと思ったら戦闘機が飛んできて撃たれ、避け切ったと思ったら今度は矢の雨。この状況で神装を使って体がもつかわからない。

 距離的には後ろに行けそうだった。それならまだ勝ち目はある。

「秘剣・飛竜斬」

 両手の剣を横に突き出し、そのまま後ろまで突っ走っていく。

 その刃は人をどんどん殺していった。

 後ろまで走って、両サイドにいた人は全員始末した。

 だがまだまだ終わらない。魔術でも使わないときりがない。そんなときにあの魔術。

「煉獄の炎を纏いし竜よ、我が身に力を与えたまへ

   そしてこの世を滅ぼす炎となれ――『イフリート・ヘルファイア』!」

 こんどは武器に付与せずに直接撃ち込む。

 一気に二千人ほど殺せたが、魔力が一気に減った。しかも体力もそこを尽きかけてきたいるし、だんだん気力もなくなっていく。

 斬る速度も落ち、威力もなくなった行く。

 近くに来た奴らを斬っていたら疲れてきて、もうそろそろ限界だ。

 あの技を使わないと勝てる気がしない。

 まだ限界突破はする必要はない。解除するだけで十分だ。

 子供の時に死にかけてから使おうとはしなかったが、ここで殺されるよりはましだ。

「リミット・ゼロ」

 体力、気力、魔力が回復してきた気がする。だが実際は違う。

 抑えられていた力を限界まで出し尽くす。だが、限界突破したわけではない。また限界は苦し、魔力だって尽きる。その前に―

「勝つ!」

 一度態勢を立て直すために薙ぎ払って、周りの敵を減らし、また技が使えるような態勢に戻る。

「崩獄焔斬、百連撃」

 太刀用の技を双剣ように変えて、百連撃にし、この大群を減らしていく。

 防がれても剣ごと斬る。避けられたらその後ろの奴を斬る。問答無用で斬りまくり、この戦場を血に染めていく。血生臭い。あとそろそろ風呂にも入りたくなってきた。

 百連撃が終わるとまた同じ技。これを繰り返して言ったら、ようやく数えれるくらいにはなった。残り百人だ。

「この程度なら―」

 技なんて使わなくても一瞬で終わる。そのはずだったが、やはり簡単には終われない。最後の一人になるのは強かった。

 技を使わなければ弾かれ、技を使っても受け流される。

 だが迅もプロだ。戦っていれば戦術くらいは解る。迅が斬っていく方向に受け流す。その時に威力が落ちるということなら当たったときに威力を上げればいい。軽く斬って、剣に当たったところで強くする。簡単なことだ。

「秘剣・燕返し」

 光速で県に向かって斬りつけ、剣に当たったところで速度を上げる。

「なっ―」

 敵の剣は折れ、怯んだすきに斬りつける。

「ぐっ……がはっ……」

 確かに斬った感触はあった。だが、倒れなかった。

「この程度で……この程度で、世界二位なのか?」

「本気でやってもいいなら実力、見せてやるけど?」

「本気で、かかってこい!」

 神装を解除し、(迅の中では)最強の武器、ダガーを出す。

 服装も変え、残っている魔力もすべて強化に使う。

 リミット・ゼロを使用して、さらに強化された迅は、まず目で追うことはできない。攻撃も防ぐことはできないし、避けることも出来ない。増してや攻撃を当てることなんてできるはずもない。

 最後の敵は確かに強かったが、さっさと殺さなかったのが敗因だ。

「これで俺の勝ち」

 背後から心臓を刺し、殺した。

 迅の勝利だ。

 もしかしたら反対側にも大群が待ち構えているかもしれないが、疲れたし早くこのちを落としたい。その理由だけで放置して家に帰った。転移魔術を連続で使って。

「っと、危ない危ない」

 サメが普通にいるようなところで海に落ちかけた。

「ちょ」

 クジラに食べられかけた。

「うおっ」

 後ろから鳥がぶつかりかけてきた。

「なっ!?」

 こんなところにボールが飛んでくる意味が解らない。

「それはおかしいから!」

 野球のバットの先っぽが飛んでくるのはどう考えてもおかしい。

 とまあそんなことがありながらなんとか家に着いた。

 さすがに見せられる姿ではないし風呂に直行したが――

「きゃーーーー?」

 蘭の悲鳴だった。

 だが、迅が赤すぎて何かわからず、悲鳴が疑問形になった。

「おれおれ。詐欺じゃないほうの」

「お、おにーちゃん!?」

「迅くんなんでそんな血まみれなの?」

「いやね、ちょっと……じゃないか。テロリストとはぐれ魔導士たちと戦争してきた」

「はぁ、メールくらいしてくれたらいいのに」

 と、案外戦争から帰ってきた弟に言うセリフでもない気がする。しかもここまで血まみれになって帰ってきたんだ。もう少し心配してくれてもいいと思う。

「ま、早く血を流してね」

 シャワーで血を流すと結構な量の傷が見えてきた。

 腕、足、体、顔に大量の傷がついている。

「っつうぅぅぅぅぅ」

 石鹸が体にしみる。

「はぁぁ、こんな傷ができるって、どんな戦争してきたの?」

 呆れたような言い方だが、治癒魔法をかけてくれる。

「もぉ、姉として心配だよ」

「妹としても心配だよ」

 二人に心配されるだけまだましだった。あの時は完全孤独になるとまで思っていたが、普通に心配してくれて、普通に治癒魔法をかけてくれる。

「はい、終わったよ」

「ありがと」

 傷の後までキレイになくなった。

 疲れもとれたし、元気が出てきた。

「回復したら眠くなった……」

「風呂で寝ない」

「いてっ」

 少々魔力強化されたデコピンをくらった。デコピンで目が覚めた。

 怪我が治ったばかりの弟に容赦なさすぎる。

「さっき怪我が治ったばかりなんだし手加減してほしいんだけど」

「だーめ。自分が何したかわかってるの?」

「は、はい」

 このときは殺したことについてだと思っていたが、違った。

「何も言わずにいきなりどこか行っちゃうし帰ってきたら血まみれだもん。びっくりするよ。よかった。無事で」

 泣きながらやさしく抱いてくれた。そして蘭も。

 それはいいのだが、今の格好をわかっているのだろうか。

 全裸だ。蘭は言いにしても姉ちゃんはアウトだ。デカい。これはトラブルなダークネスだ。

 身体に当たる胸の感触。柔らかい。弾力があって、形もいい。そして今はなま。感触が服の上からよりもわかりやすく、意識してしまう。

 それでも、まあこのままでもいいかなと思ってしまった迅だった。


                    ※


 例の戦争から三日後。

 あの事件は世間に知れ渡っていた。

 迅のことは公表されなかったが、あの無残な状況ははっきりと移されていた。そしてそれからまたふざけた催しが始まろうとしていた――

「なんでこうなるかなぁ?」

 支部長直々の呼び出しで何かと思えば来月いきなり開かれることになったラディウスのメンバーが賞金を懸けて競い合う大会のラスボスというか一位と戦ってもらうというイベントが用意されるらしく、そこで出てもらうと。トーナメント形式で、とにかく勝ち残らなければいけないという。

 一応参加者としても出るが、最後にも出ることになっている。

 ハンデとしてセコンド無しでやることになったのだが、正直それを言うならいきなり呼び出すのはやめてほしい。出るけど。

 地区大会、県大会と、さらに勝ち進めば、最後には全世界になる。そこで勝てば十億という大金をもらえる。まあ誰が勝つかはわかりきったことだが。

 その大会のことを言うためだけに呼び出した支部長を俺は恨む。時間を返せ。

 はぁ、こんなことなら来るんじゃなかった。まあ金も欲しいし大会には出るし、対人戦のトーナメントもしてみたいから大会のことには問題はナッシング。

 会場の準備をしろとかは言われなかったし、とりあえず出そうなやつらの特訓でもする。敵は強いほうが熱くなれる。

 その訓練は、確かに相手にとってはいいものだったが、迅にとっては自殺行為になりそうだった。

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