平和な仕事
ウホッ
俺の名前は霧崎迅。
高校一年生でラディウス第一部隊団長の一五歳。
戦闘経験豊富で今は世界第二位、日本第一位で給料も多い。
そんな俺についに戦闘以外の仕事が入った。
それは――
「今日が本番か……セリフを考えるなってどういうことだよ司令官は。はぁ、面接と試験を任されるとは思わなかった」
そう、面接と試験を任されたのだった。他に凜、優斗、舞もいる。そのほかの第一部隊のメンバーも参加することになっている。結衣は司会、他は判定を四季ちゃん(千春、千夏、千秋、千冬の略)などなど。今回は多いらしい。敵が強くなって迅たちの出番が増え、それを見た人たちがこのこ可愛いとかあの人かっこいいとかそんな感じの理由らしい。まあここはどんな理由でも基本的には実力があれば入れるから問題はないけど。ただ、理由によっては面接で即落とされることがある。例えば悪魔を駆逐するとか。それはただの虐殺でしかないし正直言うと邪魔になるから。それ以外基本OK。
という感じで脳内で勝手に解説をしていたら時間になっていた。
さて、そろそろ会場に行こう。
久々に行くので支部の場所を確認しようとGogleマップでで確認したら嫌な事実を知ってしまった。
「と、遠い…………」
これは転移でもしないと間に合わないかもしれない。先にでた姉ちゃんたちと一緒に行けばよかった。
(今日いきなり魔力を使うことになるとは思わなかったけどまあしょうがないか……)
さてさて、転移魔法を使って行かなくなったわけだがまあいいか。できるだけ戦闘以外では使うなとは言われたけど今日はしょうがない。
「ゲート」
ゲートを開いて会場のある東京の基地のトイレにつなぐ。男子トイレであることを祈る。
「到着っと」
ピンク?これってもしかして――
「女子トイレ!?」
そうだ、変身を使えば行けるはず。
(梨紗、頼む)
(おっけー)
ギリギリセーフ。これで外に出られる。
「今男の人の声しなかった?」
そんな声が聞こえたが気にしなった。
人のいないところに行ってまた姿を変える。
(梨紗、ありがと)
(いえいえー)
危ないところだったが何とか耐えられた。これはロアにも感謝したほうがいいのかな?
姿を戻して、今度こそ会場に向かう。転移なんてむやみに使わないほうがいいとよくわかった。
この面接で結果を出せそうな人を見つけて強くすれば俺も稼げる。そう考えるとやる気は出ないでもないがめんどくさいものはめんどくさい。さっさと終わらせる。
『メールだよー メールだよー』
司令官からだった。
『自分らしくしておk』
まあそのほうがやりやすいのだが、なんかわかりにくい。要するに固くなるなってことだと思うけど。
会場に着いた頃には凜たちもついていた。
「姉ちゃん、何とかついたよ」
「おつかれー」
時間が結構ギリギリだった。
「じゃ、始めよっか」
人が多いので四人でする。一人ずつ部屋に行って始める。
まず一人目。
長くなりそうなので名前を聞いて志望動機を聞くだけにする。そのあとも同じ。
「名前は」
「月島美紅です」
「志望動機は?あ、本音を言っても大丈夫だから」
「もっと強くなりたいので」
「へぇ、いいじゃん。試験頑張って」
次。
「名前は?」
「天宮梨華です」
「志望動機は?」
「せっかく訓練してもらったので」
「うーん、試験なしで入れてあげたいところだけどまあルールはルールだからねー、まあ頑張って」
こんな感じで続けて約一時間。強そうな気がしたのはみんな五人から七人だけだった。
「じゃあこの後の説明も頑張ってー」
「うっ、そうだった……あれ話が長くなりそうだけどまあ頑張るよ」
少し時間をおいてから竜が三匹くらいは入りそうな大きい講堂に行った。
もう人がいる。
(・д・)チッ
リハーサルができない。せっかくセリフを思いついたのに。
まあ考えながら話すのは得意だしいざとなればそれで何とかすればいい。
始まる三十分前から人がちらほら。うん。いいことだと思うよ。
それから始まるまで様子よ見ていた。五分前くらいになると全員集まっていた。ん、よろしい。
残り時間で制服に着替えて髪をセットして、ステージに立つ。
「えー、こんにちは。これから、第一部隊隊長の霧崎迅からこれから一週間のスケジュールとルール説明があります」
いきなりかー。
まあ頑張ろう。
「あー、はい。霧崎迅です。それでは、まずは明日から。明日は射撃能力のテストです。今年は人数が多いので十チームに分かれてもらいます。詳細はまた明日です。
明後日は剣術のテストです。チームは前回と同じです。
三日後は対人の個人戦です。街を想定した仮想空間なので肉体的な傷はありません。ですが精神にダメージが行くので注意です。これはキルデス比で得点を決めます。作戦は自由です。奇襲、協力、裏切り、何をしてでも勝ち残る。まあ実戦でやっちゃだめですけどね。
四日後、五日後は街や森など、戦いにくいエリアを想定した空間での訓練になります。これは的を破壊して得点を稼いでください。武器は自由です。
そして六日後、悪魔を想定した戦闘訓練です。一体につき一点なので制限時間以内にとにかく多くの敵を倒せば点が増えます。そのほかの細かいルールは当日に説明しますので、よく聞いておいてください。反則は原点になりますので」
はぁ、何とか乗り切った。次はたぶん前みたいにみんなから一言とかなるのかな?
「では、いきなり最後になりますが、第一部隊各隊員から一言です」
うん。ほんといきなり最後だね。まあいいけど。
まずは凜。
「えー、まあ明日から頑張ってください」
次、舞。
「なんかイベントみたいになってるけどお気になさらず」
まあ確かにイベントみたいだよな。うん。
次、四季ちゃん(千春、千夏、千秋、千冬たちの略)。
「えーっと、試験は結構大変なのでまあ頑張ってくださいねー」
まあ普通。
次、結衣。
「わたしも一応。合格してわたしたちと会うことが多くなるからってセクハラしてきたら容赦なく腹パンするのでやめてくださいね?」
まあ確かに初めのころは絶対セクハラしてくる奴が何人かいるけど笑顔で言うことじゃないと思うな。俺もビビったよ。
次、優斗。
「指示をすぐき言ってくれると嬉しいです」
これは普通すぎる。
最後、俺。
「虐殺とか絶対にやめてくださいね?悪い悪魔はほんの一部しかいないしそもそも真の敵は別にいますし」
一応忠告しておいた。
これで説明は終わった。あとは明日からの訓練の準備をしないといけない。
格納庫から訓練用のライフル、マシンガン、ハンドガンなどを人数分用意して、他の武器も同じように用意する。あとは四、五日後に使うフィールドに的を配置して、六日後のために幻影術で悪魔を大量にフィールドに召喚する。本番までフィールドにあるビルなどをぶっ壊してもらって本番になったら大変なことになっている街中を想定したフィールドでそこに放った悪魔の幻影と戦ってもらう。
それらを今日中に終わらせという命令を出した指令官を恨みそうだ。
一時間後。
「えー、皆さん、手伝っていただきありがとうございました。おかげで、えー、約一時間で迅美が終了しました。お疲れさまでした。それでは今回は解散です。明日からの六日間の間に担当がある方はスケジュールの確認とルールの確認をお願いします。それでは解散したいと思います。ありがとうございました」
他の部隊の人たちが手伝ってくれたおかげですぐに終わった。なので一応最後に挨拶をして解散にした。
こういう時だけは真面目になる迅であった。
(終わったし明日のためにももう寝るか)
帰って寝てご飯を食べて風呂に入って寝た。
※
「おにーちゃーん、今日は早くいくんでしょ?早く起きないとやばいんじゃないのー?」
「あと―」
「あと五分なんて言わせない。早く起きて」
「今何時?」
「七時」
一大事。寝過ごした。まだぎりぎり遅刻にはならないはずだがやばい。また転移しないといけなくなる。
超高速でご飯を食べて着替えてそのほかの準備を終わらせて今日は普通に電車で行く。普通の会社に通っている気分になる。
そんなのんきなことを考えている暇はないけどまだ眠いし仕方ない。今回は蘭に感謝だ。いいタイミングで起こしてくれた。もう少し早く起こしてくれたらうれしかったけど。
これはタイマーをセットしていない迅が完全に悪いのだがまあそれは妹、姉に起こしてもらうという幸せなひと時のためである。
はぁ、眠いなー。座りたいなー。大して疲れてもない学生共俺に席を譲れよ。こっちはいろいろあって疲れてんだぞ?おいそこ!もうちょっと詰めればあと二人は座れるだろ。そしてそこは化粧をしない。揺れたりしてずれたらダサいぞ。
などと心の中でいろいろ言っていたら。電車が揺れて化粧していたやつが恥をかくことになったのであった。
駅から出て数分。
俺は人のいない道を通ってさみしく一人で歩いてきた。意味なんてないが。
「おはようございます」
「おはよー」
もう凜たちはついていた。今日射撃能力のテストの担当になっている人は全員来ていて、迅が最後だった。まあ遅刻ではないしよいとする(自分に甘い)。
揃ったところで専用のフィールドに移動し、おいてある銃の動作テストを改めてした。使えないものは取りに行くのもめんどくさいし使えるものを複製する。それをライフル、マシンガン、ハンドガンすべてでやった。
これであとは来るのを待つだけになった。
もちろん来るまでは暇なので雑談。
それから一時間して始まる十分前には完全に集まっていた。
迅たちは暇で暇で仕方がなかったのでもうテストを始めてしまった。そのことには問題はないし怒られはしない。
細かいルール説明をして、グループを適当に分けて、それを一から五は射撃、六から十はリロード、装填、撃つ。これを移動しながらできるか。これはその場にとどまってやるよりも安全だから。敵が少ない時だけは。実際には銃を使う人は少ないけど。
お、今天宮が撃ってるね。
前訓練した甲斐があった。今見た中では断トツで上手い。
それでもあまり戦闘には出したくないとも思う。けど、本人がやるといっているのだから我慢しないといけない。先輩として。
結果。天宮は十五発中十二発真ん中に当てていた。これは今まででも数少ない成績。ランクで言うとAA。
今日のテストは総合点が一番高かったのが天宮だった。二位、三位の人も得点は高かった。
この得点は俺たちの独断と偏見。だが、断じて天宮だからボーナスを付けたわけではない。本当にうまかったから。
それにしても最下位との差が激しすぎる。
これで今日のは終わり。
そして次の日。
今日は剣術。
剣と使ってどれだけ早く悪魔の幻影を倒せるかが重要。
昨日と同じグループで、今日は教えあっている人もいた。
二十八人終わって、天宮の番。
「はァァァッ」
切った!が、全然ダメージが入ってない。じわじわダメージを与えてくと信じて優しく見守るが、そうでもない。だが、敵はもう武器を失っている。敵の武器を拾った天宮は何かわかったような顔をしてすぐに動き出した。
「えいっ」
片方の剣を敵の顔面めがけて投げた。
そして敵が怯んだ隙に心臓のあたりを指した。
だが、タイムは悲しいほどに遅かった。
今回の成績はトップと最下位の差がそこまで激しくなかった。そして天宮の順位は良くもなく悪くもない九十七位。だいたい中間といったところだ。
今の総合点は一位が村上颯。二位は望月司。三位が天宮だった。それより下の順位の中に同じ学校にいたような気がする人や、中学の時の同級生がいた。
みんな暇そうだなーと思いながら今回は終わった。
次の日。
対人戦。
「肉体にダメージはないからヘッドショットでも何をしてもOK。死んでもどこかでリスポーンする制限時間は二時間の超大型PVP。作戦はなんでもあり。ルールはこれだけ。それではスタート」
開始早々出くわした奴らがいる。だがそこは、戦闘にはならずに協力していた。
次に会った二人は片方が運が悪い。刀と銃。地形的には銃のほうが有利だった。それでも勝ったほうは太刀を持った人。
一人はビルの屋上にいる。こいつはスナイパーライフルとハンドガンを持っている。もともと視力がいいのか、人が来たらすぐに構えて撃っている。それも撃った弾の半分以上がヘッドショットだった。
そしてこの中では珍しい素手の人もいた。
素手は不利だと思われることが多いが、軽い分移動が速くなる。それでとにかく逃げて、武器を拾ってから始める。オールラウンダーといったところだろうか。
この戦場にはいろんなタイプがいる。突っ込んで死ぬ人、勝つ人。スナイパーライフルで撃って充てられる人、当てられない人。チームを組む交渉をして成功する人、失敗する人。動きがもはやキチガイでしかも攻撃が全く当たっていない雑魚。後ろから近付いて奇襲をかけようとしても失敗して返り討ちに合う人。殺気がなくて気づかれずに近づくことはできたが、その殺気がないのは攻撃する気がなかったからという人。
それでも成績が悪すぎるという人は全くいない。
あのキチガイは敵の注意を引き付けておいて、完全にこっちに集中したら後ろから斬ってもらうという戦術。自分の点は稼げなくても仲間の点のために動くサポータータイプ。ただ、やっていることは完全にキチガイ。
公園のほうには遊具をうまく使って敵の攻撃を完全に避け、隙をついて殺すという珍しいけど強い戦術の人がいた。この人は結構点が高い。
三十分経過した時点での最高のキル数は百四十二。デスは八。超大人数PVP型対人戦闘試験でこれは相当な実力だ。だが、それで驚いていてはこの仕事は務まらなかったりする。
キル数は五十人程度だが、デスがゼロの人もいる。その人は剣士。奇襲なんてしていない。真っ向からぶつかって圧勝している。だが、出会う人が少ない。悲しい感じだが、この人はマジで強い。
その後、一時間経過の時点でのキル数の最高は二百に達していた。その成績を出してのは例のスナイパーライフル君。天宮は歩き回って、出会ったやつを片っ端から潰していくという技術がないと絶対にできないことをしていた。
最終的な結果は、例のスナイパーライフル君が一位、二位は天宮、三位はまさかの最初にチームを組んだ奴の一人。最後の最後で裏切っていた。だが、その分もう一人のほうのキル数を稼ぐ手伝いはしていた。
この戦闘で最下位の人は五十キルはしていた。この中だと別にすごいことではないが。
成績が発表され、今回の試験は終わった。
ここで試験を分ける理由を説明しますと、体力回復してもらうため。疲れた時にあえて戦闘をするのは訓練兵だけ。
いい成績を出せるようにとのお気遣いである。体力のある人には大して関係はないが、肉体にダメージがなくても精神に来るから痛いとは思うし、その痛みは実際にその傷を負った時と同じもの。一日たてば治っているからあまり支障をきたすようなことはないがそういうことを配慮した結果だ。
今回も無事に終わり、残り三日になった。
四、五日目はみんな三日目に使った武器を使っていた。
そして最終日。
「最後は負けたら死ぬと思ってくださいねー」
この一言でフィールドにいる人は凍り付いた。藤原○也と化し、膝をつくものも現れた。
実際には死ぬことはないが、痛みは感じる。
「スタート」
スタート地点に数人残ってはいるが、その他は勇気を出して討伐に向かった。その後遅れて残っていた者も出発する。
確実に倒している者もいれば、苦戦している者もいる。協力して倒している者も。まだ実戦じゃないだけましだが、腹を裂かれることもある。ここで戦術を見て最終的には独断と偏見で点をつけて、合格、不合格を決める。
モニターで監視していた迅じんたちが、端のほうのモニターですごいものを見てしまった。
悪魔の幻影十体を同時に相手にしている。
それなのに圧されることがない。完全にペースを握っている。それを注目してみていると、あの人だった。
(魔力を使わずにこれなら合格けっていだな)
魔力が使える人。いや人という表現は間違っている気がする。言い直そう。悪魔だ。まああいつならやりかねないが、幻影相手だと今のところ一番強いといえる。最初はフードをかぶっていてよくわからなかったが、よく見るとモモだった。
モモと比べると強いと思える人がなかなか見つからない。「おぉ!」と思えるのは天宮と面接で一番最初だった子の月島さんと空手を習っているとか言っていた男子。その三人は一体一体確実に倒している。
いい感じのところで画面が切り替わる。
そこには強いと思える人はあまり映っていなかった。逆に、弱い人が多かった。戦う覚悟がないやつはもうダウンしている。
ここで合格不合格が決まったようなものだ。
『森林エリア解放。制限時間、のこり一時間』
開始一時間後にエリアを開放して、ついでに制限時間を知らせるシステムをなんとなく組み込んでみた。さて皆さんは残り一時間で殲滅できるかな?のこり五百体近くいるけど。
森林エリアで戦ってるのを見ているとやはり地形で戦闘ができるかできないかが変わるのがよくわかる。空手の人の戦い方も全然違う。気が邪魔でなかなか攻撃できない感じだ。だが、ライフルを使っている人はどんどん倒していっている。隠れて撃って移動して木に登って敵を見つけたら撃ち殺す。戦術としてはいいと思う。移動していたら弾の飛んでくる位置を予測しずらい。動き回ってどこにいるかもわからないから。
さて、そろそろメインイベントと行きますか。
「うーい、霧崎迅くんが参戦するぞー。もちろん敵としてですけどねー」
敵の残りが減ってきたところで迅が参戦する。一人で全員分相手するということだ。
「甘い」
銃弾が飛んできたが、落ちていた剣で普通にはじいた。
「それが俺に通じたらお前は日本最強の座も狙えると思うぞ」
迅は完全に戦闘モードに入っていた。周りからの攻撃もすべて完璧に防いでいる。
「はあああああぁぁぁぁぁぁぁぁ」
(上三、右二、左四、前一銃弾、後ろ無数の銃弾。たぶんマシンガン、けど―)
これは下から逃げれば確実だが、逃げてるっぽくなるのでそれはしない。
「連携がまだまだ甘い」
この程度なら一人でも対応できる。一番少ない前に突っ込む。銃弾は止められる。一発受け止めればあとは問題はない。
「うぅっ」
一人気絶。
「右のお二人さんはまた後で」
次は上に行く。
当たるすれすれのところで避けて、頭の上に乗っかる。
上三人は下に落として終わり。右二人もそれにあたって戦闘不能。
「あとは左の四人と後ろの二人のマシンガンが問題だねー」
聞こえるように大きな声で言ったら、後ろからの弾丸の軌道が少しずれた。風は吹いていない。ということは動揺でもしたのだろう。まだまだだ。
左四人の後ろに回り込み、銃弾のほうに向かって突き飛ばす。これに当たって戦闘不能。
残りは後ろの二人。
「!!!いない!?」
「後ろも注意しないと後方支援はできないね」
軽く鳩尾を殴って二人も戦闘不能。
これが第二位と初心者の差だ。
合計十二人を一人で全員戦闘不能にしたら他の相手が来なくなった。
せめてモモと天宮は来てほしかったが、まあしょうがない。まだここに向かっている途中だと嬉しいのだが……
「奇襲は失敗に終わったね」
来てはくれたがわかりやすい攻撃だったので簡単に防げた。そしてモモが追撃をしてきたが普通にガードした。
「来るなら全力で」
「「はい!」」
天宮は普通の人間だから攻撃は避けるのも防ぐのも簡単。だが、モモが予想以上に強い。魔術戦よりも接近戦のほうが得意なのだろうか?戦っていて結構な体力を消費する。一発一発が重い。
(これは手加減なんてしてる余裕はないかな?)
モモが予想以上に強かったので手加減せずにガンガン攻める。攻めて攻めて攻めまくる。
「天宮は気配を消せてない。モモは攻撃のパターンが読みやすい」
二人のペースを掌握した迅はここで終わらせた。
同時に来たのを二人の腕をつかんで下に思いっ切り引っ張って落とす。体も一緒に落ちた。それも頭から。これで二人戦闘不能。今度こそ挑戦者はいないだろう。
早い。早すぎる。本当に誰も来ない。もうちょっとだけ粘ってくれてもよかったと思うのだが?
結局その後は誰も戦いには来なかった。もしかしたらと思って最後まで残っていたが、結局は誰も来ないままで暇だった。
こうして俺の仕事の一つが終わった。
本物が侵入してきそうで心配だったがそんなこともなく無事終了した。
終わった後はみんな合格したかを見に行って盛り上がっていた。だが、そこで現実を思い知らされていた。
六百人くらい?の中で合格したのは五十人くらい。その中で迅に攻撃を仕掛けた奴等は全員合格。あとはスナイパーライフル君と他成績が良かった人。それ以外の人は惜しい人さえいなかった。そしてその合格者は広場に呼ばれた。
広場では迅率いる第一部隊の人が勢ぞろいしている。
「君たちは実力と勇気とついでに成績がよかったから選ばれた。そんな君たちには今日から早速訓練してもらう。これからは常に死と隣り合わせと思って生きてほしい。死にたくないなら強くなれ。強くなりたいならとりあえず戦え。まあ最初は実戦は少ないけどまあ頑張れ。というわけで晴れて合格した君たちにはこれをプレゼントしよう」
そう言い、迅は全員分の武器を出した。
「これは魔術で強化されてて攻撃力も耐久力も上がってるから戦闘では使える。専用武器がない人はこれでやってるかな?」
説明を適当にするだけしといて終わる。これ以上言うこともないし言っても今は意味がないことばかり。
いやー、今年は一番人が多くて受かった人が一番少なかった。
こうなった理由はかわいい子が多いってことがあるのかもしれない。ここは半端な奴がいても足手まといどころかもはや妨害だ。邪魔にしかならない。絶対にダメだと思うやつは超過酷な訓練を受けることになる。まあそれを言う必要はないから言わないけど。
とにかく、これで俺の慣れない仕事は終わった。
いつもの仕事に比べると平和だったが続けたいとは思わない。こんな面倒な仕事は一生やりたくない。こんなことをするなら戦いたいと思ってしまった。
そんな俺に残念なお知らせ。
『教育係よろーw』
自由奔放な指令はまたもや俺にめんどくさそうな仕事を押し付けやがった。
いつものこととはいえ教育係とかさすがにひどい気がする。説明力全くない俺に押し付けるとか馬鹿ですか?
それとこれもまたいつものことではあるが『教育係よろーw』というふざけたメールはやめてほしい。もう少し、少しでいいからまともな文にしてほしい。それと俺の説明力のなさをそろそろ解ってほしい。
はぁ、指令も実はバカなんじゃないの?
「迅くん、諦めてやろ?」
「うん」
諦めるしかない。
※
「まあ解ってるとは思うけど今の敵は操られて大変なことになった悪魔。むやみに殺すんじゃなくてやるなら人を喰ったりする奴等だけにしてほしい。悪魔の奴等も一部だけどなんだかんだで世話になってるし」
「と、いいますと?」
「敵は悪魔じゃない。最終的には魔神を倒さないと下手したらたぶんこの地球もなくなる」
講義室がざわついた。
このことを知っているのは第一部隊、そして今教えたのでここの新人たち。本当の敵を知ってもらわないと大変なことになる気がする。だって――
ここには数人リベリオンの人たちがいるから。
リベリオンが何もしてない悪魔を殺されると困る。
そんなことされたら責任を取るのが迅になる。指令のせいで。
「じゃあ基本的な戦術と戦略の説明。
今までのデータだと悪魔ってのは基本複数体で現れる。もし悪魔が来てその時に一人だったら、どうするべきでしょうか?」
このクイズはこれから出す問題では一番難易度の低い問題。
誰か答えられるかな?
「落ち着いて殺す」
それ出来たら初心者じゃないね。
「逃げる」
それが正解ではあるけどそうするスキルが足りないかな?
「近くの仲間と合流する」
「正解」
よくわかったね。
この子は使えそうだ。
「じゃあ近くにいなかったら?」
あれがわかるならこれもわかるだろう。
「そのまま何とか逃げるか気合で戦う」
それは訓練兵のやることではないが一応正解。少なくとも俺には訓練兵にできることではないと思うが。モモを除いて。
それではさらに次の問題。
「どうしようもなくなったら、死にそうになったらどうする?」
「ッ……」
これはもう答えなんてない。
人によって違う。
ここで諦めて死ぬ人もたくさんいた。生き残ったやつは少ない。それでも戦うやつはいる。それが現実。
さて、ここで折れるかやる気になるか。どっちかな?
ちゃんと現実というものを教えてやらないと伸びないからな。
「これに答えはない。あとは自分次第。それがこの仕事。死にそうになってたら俺もできる限り助けには行くけどもし無理なら一度落ち着いてそれから戦う。それしかないから」
もう質問してくる人もいなかった。
迅の説明を静かに聞いて終わった。現実を受け入れたと受け取ろう。
(実践でトラウマでもできたらどうなるんだろ?)
講義が終わってから俺が考えた疑問だった。
あの反応を見て思った。確かに初心者ならあの話を聞いて少しくらい怖くはなるだろう。特に高校生やいろいろな事情があって不登校になっている中学生。中学生は事情がない限りは学校優先。もしくはここ、東京地区で専属の教師をつけて勉強をするか。戦闘がうまいのならそんなことはないけど。
だからこそ心配になる。
不登校になるということはそれだけのことをされたか、もしくはそれだけ心が弱いのか。心が弱かったら少し攻撃されて傷ついただけでもすぐ戦闘不能になる。
ここに来た者は常に死の呪いにかかっているようなものだ。解くことはできない。ある意味牢獄なのかもしれない。
まあそんなことは置いといて、明日何するか考えておかないと。それにあのことも伝えたほうがいいのかな?
今はそんなに焦らなくてもいいことだからこんなことはあまり考える必要もないけど。ないけど……
それしかやることがねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!
今日の講義を含めてあと三日。しかも明日からいきなり実戦。みんなの行動を楽しみにしている。
実戦と言っても悪魔が来ないと出来ないから現れなかったら剣術などを教えないといけなくなるしまた俺の楽しい楽しい学校生活が遠のいていく。こいつらをさっさと強くして早く学校に行きたい。
やっと最近楽しいと思えるようになったことだし。
悪魔が来なかったら前渡した武器でPvPでもしてもらうことになるはずだ。
迅も剣術のマスターというわけではないがある程度戦えるようにはできる。確実に。
といっても一日でそうなるとは限らない。これに関してはみんなの理解力に期待するしかない。
「???」
今何か悪寒がした。
俺の悪寒は確実に当たるものだ。
このタイプだと人が殺されることはないだろう。だが、自殺という可能性がある。
悪寒が当たらないことを祈りながら、武器、魔導書を用意してすぐ家に戻る――
家に帰ると玄関に放り投げられた後のような置き方になっている鞄があった。この鞄はたぶん蘭のやつだ。
そして、リビングには服が脱ぎ散らかしてある。
蘭はいつもこんなことはしないから何か事情があったのだと察し、文句は言わなかった。
まさかと思って蘭の部屋に入ってみる。
今までに感じたことのないような殺気を感じる。
これが何なのか迅にはすぐにわかった。
※
「おい!てめぇ調子乗ってんじゃねーぞ!」
すれ違いざまに言われたそれは、小物のいうセリフだった。だが、いきなり言われると蘭も少し機嫌が悪くなる。
だがここで言い返すと確実にめんどくさいことになるのでスルーした。
その後も少しは粘ったようだが諦めて帰っていった。
こんなことになったのは今秋でもう三回目。
そろそろストレスも溜まってきている。
蘭はなぜかいじめられるようになっていた。
解決なんてしようと思えばできるし、殺したいと思えば殺すことだって容易いことだ。
だが、蘭はそうはしなかった。
なぜなら彼女はずっと思っていた。
―おにーちゃんに迷惑をかけるのだけは嫌だ―
そう思っていたせいで続いてしまった。
いじめられている原因はとても分かりやすいことであり、とても理不尽なものでもあった。
ある日、いきなりぶりっ子は死ねと言われた。
最初はスルーしていたが、次第にしつこくなっていって、スルーするのもめんどくさくなっていた。
そうなったあたりから今度は「キャラを作るな。キモイ」と言われた。なので蘭は素で接してこういった。
「キモイと思うなら今すぐこの場から立ち去ればいいということがわからない?」
こういってからだった。
言っていることは間違ってはいない。
キモイという相手に自分から近付いているような奴に言ったのだから。
だがそういうと今度は「ウザい」、そう返ってくる。
どうすればいいのかわからなくなってその日はそのことがあってからは学校では一言も喋っていない。
とは言ったが、実際のところ蘭はそのことについてはさほど問題ではなかった。
問題はこれが大きな事になって先生に話を聞かれる事になって迅や凜にまで迷惑をかけるかが一番心配だった。
そういうことが続いてそろそろ限界になった日だ。
最悪のタイミングで来られた。
「ねーねー、一緒にトイレいこーよー」
「う、うん」
こうは言ったが、内心「チッ、またかよ」と思っていた。こういってもまだ生ぬるいくらいだが、本音は行きたくないだった。
今蘭とトイレに入ったのは顔面崩壊している女子二名と大して可愛くもないのに「自分はかわいい」などと思い上がっているキチガイクソ女二人だ。
蘭はこの後なりそうなことを約十パターン想像し、そうなった場合の対応をすべて考えていた。
だが、その予想は完全に外れた。
本当にトイレに行っただけだった。
が、そのあとからが地獄だった。
顔面崩壊一が口笛を鳴らすと、ゴミ箱が投げられてきた。
スピードも大して速くはなかったので普通に避けた。
そしてその避けたゴミ箱は蘭の後ろにいたキチガイクソ女二の顔面にきれいにヒットし、クソ女二はホコリまみれの汚い姿になった。
なぜか怒って、三人が襲い掛かってきた。
蘭はそこそこ訓練はしていたのでこの程度の攻撃は完璧にかわしていた。だが、体力が無限にあるわけではない。というか蘭に関しては後方支援役なので体力があまりない。それは動くことが少なかったからだ。
そのせいで疲れてきたころに、隙をつかれて思いっきり蹴られた。
それでバランスを崩し、そこからはリンチだった。
蹴られ、殴られ、叩かれ、水を駈けられた。それが予鈴が鳴るまでずっと続いた。
耐えられなくなり、ついつい魔術で体を強化して四人全員殴り倒してかろうじて逃げてきたが、蘭の身体はその時はもうボロボロで、と浮くまで行けるような体力なんてものはほとんど残ってはいなかった。
周りの視線も気にせずに、濡れた服を脱いでジャージに着替え、保健室に行って、先生がいないのを確認し、ベッドで寝た。
そして夢を見た。
その夢が現実になることは誰も知らなった。
『魔術名、フリージング・メテオ。魔術回路構成……………完了。憤怒の魔導書に登録』
それは、蘭が魔術を作る夢だった。
その他にも何種類もの魔術を作った。
その中の一つを、この後あの四人に使ったのだった。
そしてそれを使ったのはこの夢をみた数日後――
「おぃ、きりざきぃ。お前さぁ最近調子乗ってんじゃねぇ?かわいいこぶってよぉ。うぜーからちょっときてくんないかなぁ?」
蘭はどうせいっても特に悪いことはないと思い、素直について行った。
行った先には男女合わせて一七人いた。そしてなぜか蘭の教科書を持っていた。
女子共がアイコンタクトで何かをすると教科書をカッターで切った。
「チッ、金がもったいない」
今ので蘭はガチギレした。
理由はともかくとてつもない殺意だ。
そう、ここからが問題だ。
「強化」
誰にも聞こえないくらいの小さな声で呟く。
実際には見えてはいないが、蘭の身体には魔力のオーラが通常の五倍ほど出ている。
蘭はキレるとキャラが変わるタイプでキレた時の蘭は恐れられていた。
「あぁ?一人で俺らに勝てると思ってんの?マジなめんなよ」
「なめるな?それは小物のいうセリフだよね」
「クソが!なめてんじゃねぇ」
「しつこい」
自然にゆっくりと近づいて今の男子を殴り飛ばす。
「てめっ――」
ぶっ殺すと言う前にまた殴り飛ばす。
「はぁ、その程度で訓練してる私に勝てるとでも思ったの?」
複数人でかかってくるもそれは蘭の前には無意味だった。
「dead of tyrant」
さらに身体を強化して女子を殴る。
すでにここにいた奴等は全員一発ずつ殴られている。それも魔術で強化された身体で――
もうこれでまたやられることはないだろう。
だが、もう蘭は魔力の残りが少なく、疲れ果てている。
ふらふらしながらも教室に戻り、鞄をとって、教室を出て、家へ向かう。
「遠い………家が遠い」
疲れすぎていつもと同じ道のはずなのに遠く感じた。
フラフラしつつも歩いて何とか家に着いた。
玄関に入ると鞄を投げ捨て、服も脱いだまま、自分の部屋に行ってベッドにダイブしてそのまま寝落ちした――
※
翌日。
蘭は学校を休み迅の仕事を手伝うことになった。
当分学校は休むということになったのでその間に迅の仕事を少しでも手伝えないかということだ。
今日は悪魔も東京のほうには現れなかった。なので剣術を教えていた。
「じゃ、戦ってもらうか。とりあえず隣の人が対戦相手ね。たぶん一人余るはずだから余ったやつは蘭と戦ってもらうよ」
「マジすか!?」
「マジだ」
「中学生とですか?」
「中学生だからって甘く見たらやられるぞー?俺と姉ちゃんといっしょで魔術使えるし」
「うおっ、すげー」
友達、後輩と話すようなペースで進めてきた結果こうなった。
迅はすぐに人気者?になっている。
「ではー、試合開始!」
天宮はモモとやっている。
モモに剣の扱い方や立ち回りなどを教えてもらいながらやっている。
他のペアにも同じようなのがあったりガチで戦うだけのペアがあったり。まあどちらも伸びないということはないし文句を言う気はないが――
隣の人とやるというのは失敗だったかもしれない。
同等のレベルの二人になったところは全く終わる気配がない。逆に差があるところはすぐに終わる。
そして蘭とのペアの人はというと――
「はぁぁッ」
蘭への攻撃はすべてはじき返されていた。
防御に徹していた蘭がついに攻撃を仕掛ける。
(相手が相手なだけに今はできるけど実戦だと隙がありすぎるかな)
そう思った。蘭の相手も思うはずだ。いや、思ってほしい。
が、ダメだった。
「負けました」
蘭の相手はあっさりと自分の敗北を告げた。
あの攻撃は剣に向かって思いっきり自分の剣を振れば確実に止められた。蘭相手なら怯ませることも可能だっただろう。
全体的にみるとここで一番強いと思うのはモモ。
そんなことは試してみないとわからない。
それを決めるのは一つしかない――
「うーい、ストップ―。今から……トーナメントするぞぉぉぉぉぉ!」
『おぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!』
この中での最強を決める戦いが今ここに――
最終決戦。
モモVS蘭。
始まって二十分は立っているがいまだに決着は付かない。
完全に互角な戦いだった。
圧して押されて、押されて圧して。その繰り返しだった。
「あー、長いからあと五分で決着つけて」
その一言で二人には気合が入った。
今までより動きが速くなっている。
だが、その後の五分も決着は付かず、引き分けだった。
これで今日は剣術のほうは終わり。あとは座学だが、それは姉ちゃんに完全に任せてある。
この仕事がこの後約一ヶ月続いた。
その間学校には全く行ってない。
※
あの仕事が終わり、十一月になった。
特に大きな事件もなく悪魔が出た件数も減ってきている。その代わり出てくる一体一体が滅茶苦茶強い。そんな状況になってしまった。
迅、凜、蘭は訓練兵から強い人で新しい部隊を作り、戦力を拡大している。
例えば――天宮とモモだ。
第一部隊の支援専門の部隊にいる。
と言っても天宮とモモしかいない。だから大規模な作戦になるとほかの部隊と合体しなければいけなくなる。
迅が力を開放できればどれだけ敵が来ても一人で殲滅できるが、敵を倒すのと引き換えに周りの人たちが死んでしまう。そういうわけでチームを組まないと倒せない状況なわけだ。
迅たちは、魔神級、神級、上級悪魔級、下級悪魔級などで分類した。
そして迅が力を開放できるのは神級で第二形態、魔神級で第三形態と最終形態が使えるようになる。
そうやって分けてみたのはいいものの、判定する基準が曖昧なままだ。
放出している魔力の量で決めているが、それも大体なのであまりあてにはならない。
どれだけ魔力量があってもただの雑魚ということもよくあるし正直こうやって分けたのは意味があるのかないのかいまだ謎だ。
だが、そうすることによって、迅たちが出るか出ないかが決めやすくなった。
前までは迅が狩りまくっていてほかの部隊の出番がなくなっていたが、最近は下のほうの下級部隊でも倒せそうな敵ならそこに任せるということになっている。
そうすることで迅の討伐数はあまり増えなくなるが、給料は増えていく。
多い時は月に五百万を超えることもいまだにある。
こうなったおかげで迅もゆっくりまったりのんびりする時間が出来た。
まあ考えてもメリットはこれだけなのだが……
という感じでいろいろあって悪魔の方の戦力が確実に減りつつあると思っていた。
特に上の方の奴等は完全に油断している。
本当にバカな大人共だ。
頭のおかしいやつになると子供をテロ対策のチームに入れようとしている。
日本支部は色々な事に干渉出来たりできなかったりする。例えば、迅がいるのは細かく言うと、日本支部討伐専門第一部隊だ。その下に第二、第三と続いている。
そこは未成年のほうが多い。そんなところからテロ対策のチームに入れようとしている。
簡単に言うと教師が生徒に「今日からお前が勉強を教えろ」と言っているようなもの。
これだけは今年のうちに解決しとかないと後々大変な問題になる。
正直今の日本は治安が良いとは言えない。
殺人系の犯罪は増えてはいないが減ってもいない。拉致、監禁、強盗などをテレビで見かけるのはよくあることになってきている。
しかもその犯人のほとんどが魔術師、いや、はぐれ魔術師だ。
どこかで道を踏み外してこうなってしまったのはわかるがあまり手間をかけさせないでほしい。
一度学校で拉致られた時の対処法、銀行で強盗に出くわした時の対処法などを全校生徒の前でやらされた。
迅にとってはそれが一番迷惑だった。
いつかは覚えていないが、この日本に魔術師が誕生して、異世界とのゲートが開いてから今までで今は一番酷い状態らしい。
確かに子供が普通に戦って死ぬような時代にはなっているが――
「やはりこの世界はおかしい」
ずっと考えていた。
授業中も、家でも。
「どうしたの?」
「今の時代ってさ、子供が戦って死ぬような時代でしょ?それも悪魔との戦いで」
「あー、まあ大人たちがやるようなことしてるよねー」
部室ではこういう話が多くなってきている。
今もその話だ。
「天宮もその中の一人になったわけだし。俺も守らないといけないものが増えて疲れた」
「わたしだって戦えるんだから。守られるばかりじゃないから」
「梨華ちゃんすぐ上位まで登ってきたもんねー」
「天宮はTwitterで話題になったくらいだから」
そうだ。この前迅がTwitterを見ていると『#天宮梨華』というのがあった。
・こいつ上位に上がるの早すぎる
・可愛い
巨乳
強い
最高じゃないっすかw
・俺なんか一週間で抜かれたからなw
・俺一日
・天宮梨華とモモってやつで第一部隊の支援部隊が作られたくらいだしなw
たぶん俺戦ったら負けるわw
・いつかは全世界で話題になったりするのかな?w
・俺この前助けてもらったZE☆
・サインほしいわー
・結婚して―
・パイ乙やヴぁい
など、危ないことも多少あったが日本では有名人だ。
「それならこの前霧崎君バラエティー番組出てなかった?」
「出た出た。好きな芸人に合えてマジで嬉しかったわあれ」
「わたしもでたかったなー」
「姉ちゃんは出たらファンクラブとか出来そうでなんか怖い」
「怖いとは失礼な!」
「だっていきなりファンクラブができるってそうそうないと思うよ?」
「はいこれ。天宮梨華のファンクラブのサイト」
ありましたー。
もう出来ちゃってましたー。
梨華のファンクラブができたのはTwitterで拡散された画像などが原因だろう。
後迅のファンクラブもあった。
「アイドルじゃないんだから……」
少し照れながらツッコむ。
いっそアイドルにでもなったら全世界を超えて異世界進出までできそうな勢いだった。
もう話が完全にそれて戻る気配はない。
まあこの部はとにかく楽しくやるのがメイン。になってきているから問題は全くないが、そろそろサバゲでもしないとやばい気がする。
目標は十連勝。
この目標はサバゲ部にとっては大して難しくない。今の状態で行っても可能だったのだがそれを知らずに猛特訓してもはや無敵状態になるのは言うまでもない。
マイクラにはまりすぎて書けなかったのですよ