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7話 殺人鬼の1日の終わり

門を抜けてデザールハザール王国に入ったナナシ。


指切りをしてから門を抜けると風のように走ってすぐに行ってしまったシャデアとフィン。


どうやら、フィンの家庭の事情というものもあって少しばかり急がなければならなかったらしい。

考えると、今の時間帯に子供が外を歩くのは大変危険なことなのかもしれない。


さて3人とは別れ、、夜だというのに明るく、人の往来が途絶えない城下町に1人残されるナナシ。


ひとまず、どこか食事ができる場所を探すために辺りをふらつくことにする。


そこで一軒の酒場らしき店を見つける。

幸いにも、テラスに条件を出された時にこの国の通貨である金貨を2枚ほど渡されていた。

旅人いう設定なのでお金は持っていたほうがいい。


そう言われて握らされていたので再度確認する。


よく見ると金貨は1枚重ねて渡されていたのか3枚だった。

今思えばこれも遠回しのお礼のつもりだったのだろうか、シャデアがあぁ言った意味がわかった。



「ったく、素直じゃない野郎だ」



テラスの親切心に毒吐くと、酒場の戸をくぐる。

くぐった先に、様々な種類の酒の匂いと男女の歓喜の声が響き渡っており、どこにでもある典型的な酒場であった。

ナナシは、このような酒場は好きではないが、とりあえずカウンター席に座る。



「酒と……なにか食いもんをくれないか?こいつで足りるものなら何でもいい」



そう言って金貨を1枚取り出し、注文を取りに来たウェイターの少女に見せる。


ウェイターの少女はその金貨にビックリして急いで厨房に行く。

どうやら、この金貨1枚はよほど価値のあるものらしい。


先に出された酒……少し色をつけてくれたのか他の客が飲んでいる器よりも見てわかるほどに大きい。


ナナシは、自分が任務を受ける前……死ぬ1ヶ月前振りのお酒に少しばかり心を踊らせて、ゴクリと一気にいく。


久しぶりのアルコール、やはり地酒のような物を想像していたので、それ以上のコクと旨味に驚きながらも喉に流し込み、お酒の旨味に感動してしまう。


しばらくお酒を楽しんでいたナナシだったが、少女が料理を持ってきてナナシの前に置く。



「お、お待たせしました!当店自慢のスパゲッティでございましゅ……ございます!」


少女が噛みながらも、緊張した面持ちで持ってきたスパゲッティ……死語であるが、そのパスタを見てさらに驚く。



「この店はペペロンチーノをスパゲッティと言うのか……」


「ぺぺろんちーの? これは私のお母さんの特製パスタです。他の店にも真似できない味だと思うんですが……同じような料理を知ってるのですか?」


「いや、何でもないよ。とにかくご馳走してもらうよ」



とりあえずペペロンチーノだと思ったので、久しぶりに握るフォークにも感動しつつ、マッシュルームのような物と麺を巻いて口元に持ってくる。


マスクをつけているときは少々食べ辛いのではあるが、それにも構わず大口を開けてパスタを頬張る。




美味い。




ニンニクの香りはもちろんのこと、味わったことのない香辛料の香りと食材の食感と味が見事に味覚を開く。

覚醒という言葉があるが、このようなことを言うのだろう。目が醒めるくらいにシャッキリとする。



「……美味いな、お前のお母さんは料理得意なんだな」


「うん、この国で1番の料理人だって私は思ってるよ!」


「そうか……にしても……美味いな」



パクパクと擬音が出そうなほど黙々とペペロンチーノ、いやそれに似た知っている以上の味を堪能する。


すると香ばしい匂いに誘われたのか、いつの間にかナナシの周りには人だかりができていた。



「おい、そりゃまさかマルさん特性のスパゲッティっじゃねーか! この匂い、ほんとたまんねーよっって!」


「うわすげーなあのおっさん、まさかこの店で一番のお得意さんにしか出さないあのスパゲッティを食ってるとか、おっさんアンタいくら出したんだよ!」



ギャラリーがうるさくなってナナシにヤイヤイと聞きにくる。鬱陶しく感じて迷わず能力を使うことにする。



認識を変える能力。



まず周りの人間の、スパ……パスタに対する認識を変える。

すると、さっきまで話題に熱かった周りが冷めたかのような顔で自分が元いた席に戻っていく。

そして再びお酒をあおってバカ騒ぎを始める。



その光景に、1人残されたウェイターの少女が驚いてキョロキョロと周りを見る。

この子と、厨房にいる者やこの店の従業員らしき人物たちには能力を使っていない。

それはこの美味しいスパゲ……パスタをご馳走になった一種のお礼のつもりだった。


さらに黙々とパスタを食べ、その姿をジーッと見つめる少女の視線が痒く思えるが、カチャリと銀のフォークを空になったお皿の上に置いて手を合わせる。



「ごちそうさまでした」



久しぶりに手を合わせる。

食事などは仕事柄、基本は栄養剤とパサパサとしたお菓子のようなもので摂っていた。

その為か、いつからか手を合わせること、食事に対する尊敬の念がなくなっていた。


人を殺す前……その後もチラホラとしていたこの行為に少しばかり恥ずかしくなるが、悪い気はしなかった。



「ありがとう、とても美味しかった……お代を払わないとね」



そう言って少女を手招いて呼び、小さな手にさっきの金貨を持たせる。

少女の方は、どうやら大金らしいその金貨を大事そうに両手で持って厨房に戻っていく。


しばらくすると、少女が何やら袋を持ってヨロヨロと戻ってくる。

袋をドサリとナナシの目の前に置くと封を開けて中身を見せる。


そこにはたくさんの銀と銅の貨幣が入っており、重量も相当のものだった。



「お、おつりです……10万ユルだったのでおつりは9万7千5百ユルとなります……」



その一言で、酒場の声が静まり返る。



「オイおっさんアンタ…」



この展開はもう飽きたので、すぐさま能力を使って女を自分の席に戻させる。


またも何事もなかったかのように騒ぎ出す客たちに焦る少女だったが、ナナシは少し話を聞いてみることにする。



「すまない、俺は旅人なのでこの国の通貨には疎いんだ、なので基本的なことを聞いていいだろうか?」


「え、えぇー!? 」



少女は、大金を払った男に突然そう言われて妙な奇声をあげた。

その声で周りの喧騒も静かに……。



「あー! ウゼェ!!」



その後、少女に何か質問して、こちらの問いにいちいちリアクションをあげるたびに立ち上がる客たちに能力を使い。

まるでループでもしてるのではないかと錯覚しそうになるものの、大体のことを聞いてから少女にお礼として銀貨……1枚で千ユルを渡して店を出た。


店を出てすぐに少女も出てきて、ナナシに対して手を振ってお礼を言う。



「ありがとうございます! またのお越しをお待ちしております!」



またもナナシにとっては新鮮な笑顔を浮かべた少女に、返すように手を振った。





さて、食事も済んだのでどこか宿で泊まろうと考える。

どこに泊まろうかと、街の至る所にある宿泊施設を見渡してみる。


とりあえず、安そうな宿を見つけたのでそこに泊まることにした。

一泊5千ユルだったので銀貨を5枚渡し、案内された小汚い部屋のベッドでナナシは横になった。


疲れたわけではないが、さすがに慣れないことの連続に驚き、身体がいつに間にか緊張感で強張っていたようだ。


異世界。


この日、魔獣とも戦いそして殺し、自分の力が通用する事を改めて考えこの状況をどうするか考える。

一旦服を脱いで、パンツとタンクトップだけになると、服に仕込んでいた暗器やら爆薬やらを取り出す。



小型ナイフ×30本

小型爆薬×3個

ナイフ×10本

鉈×2本

刀×1本

手榴弾×1個

自動拳銃×2丁

毒針×50本

その他身体の中に仕込んである暗器やギミックも幾つか。


この世界に来てすぐに殺した蜘蛛に貴重な爆薬を1つ使ってしまったのを少し後悔しながらも、今後この武器をどう調達するか考える。もし刃こぼれなどしてしまうと暗器の意味がなくなってしまう。刃物の手入れは時間があればしていたが、ここには道具がない。

これがナナシにとっては最優先だろう。


あとは、ナナシの欲望の発散だ。


彼は殺人を趣味に暗殺業をしていたが、この世界ではまだキャリアも無ければ具体的な情勢も分からない。


発散するべき殺人ができなければ、イライラが募って関係ない人まで殺してしまいそうだ。



「……もって、あと3日かな」



自分の欲望が抑えられる日にちを計算して出す。

その日にちを越えれば、彼は迷わず街中で人を殺すだろう。


どこに行っても変わらない自分の殺人衝動に改めて感心しつつも、そのような事態……無差別殺人を嫌う信条としてはどうするか悩んでいたが、仕方ないと呟いてベッドから武器をどかし自分の腰に1本だけナイフを忍ばせる。


ベッドに横になって明日の稽古の話を思い出しつつ表情のない顔にある瞼を閉じる。


そうしてすぐに殺人鬼は眠りにおちる。



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