49話 オータニア国にようやく入国
「ということで、ここからどうしますか?」
「どうって、普通に門から入るに決まってるだろ」
ナナシがそう答えると、シャデアは「いやいや」と首を振った。
「さっき歩いてる時ナナシさん言いましたよね?男女2人で入ったらマズイとか…もしそれで私達があの門番の前に出たらマズイんじゃないですか?」
「こうすれば良いだろ」
そう言ってナナシは能力を使う。
認識を変える力、これでナナシとシャデアの存在を認識出来なくする。
シャデアは何が起きたか分かってはいないが、歩きながらナナシは続ける。
「俺とお前を見えなくした。これで大丈夫だろ」
「えー!それは騎士としてもなんか狡いし反則じゃないですか?」
「どうせ交通手形とか色々と面倒なモノを通さないと通れないんだ。今の俺たちにそんなものは無いし、特にお前の格好がまずダメだ」
「まぁこんなボロボロでは流石にダメですね…」
「気付いてないだろうが、全身穴だらけの服だからな? 背中なんて大きく破れて丸見えだぞ」
「道理でスースーするわけですね」
シャデアが今気づいたかのように自分の背中を触って確認しようとするので、ナナシはため息をつきながら門前まで歩く。
門番たちは当たり前ではあるが男だった。
彼らは皆総じて耳がとんがっており、髪型は違えども同じ金髪であった。
エルフというものを知らないナナシにとっては少し興味深いものではあったが、それを見ていて気付いたことがあった。
(エルフってのは金髪が普通なのか…ならコローネは何であの髪色なんだ?)
コローネの髪色は赤茶色で、
ナナシが不思議に思っていると、横まで歩いて来ていたシャデアがこっそりと小さな声で聞いてきた。
「ば、バレてないんですよね…?」
「バレるわけがないだろ、堂々と歩け」
「いやいや、もしエルフの魔法とかで感知されたら…」
シャデアがそう言いかけた途端。
ビービー!!と、警報にもサイレンにも似た機械音が辺りに響く。
突然の大きな音に驚く二人、門番をしていたエルフ達は全員武器を構えて門前に集まりだす。
「何事だ!?」
「感知魔法が反応した!我が国に入り込もうとしている賊が近くにいる!!」
「何処にいる!?」
「探せ!お前達は急いで門に鍵を掛けろ!!」
「俺は防壁の内と外で目を光らせるよう衛兵達に伝えてくる!」
「急げ!デザールハザール王国に入ったのと同じ魔獣かもしれん!」
「急いで探せ!」
門番達が慌てながらも手際良く、外敵に向け次々と防衛の準備を行う。
その騒動の最中ナナシとシャデアは突然の警報に動揺してしまうが、ナナシはハッと気付くとすぐに門に顔を向けた。
「マズイ、門に何されるか知らないが、魔法で鍵をかけられちまったら開けるのが面倒だ」
「えぇ!?それって魔法あっても開けられるって事ですか?」
驚いてさっきとは違って声を大きくあげるシャデア。
認識出来なければこの声も入らないが、ナナシは意識をシャデアではなく門に鍵を掛けようとする門番二人に向ける。
「急いで鍵を…!」
「鍵を…!」
そう言いかけた二人は、鍵を掛けようと動かそうとしていた手を一旦止めた。
そして、二人揃って門の鍵を掛けるのでは無くその逆、門を開放したのだ。
「そうだ、外敵が来たら確か門は開けるんだったな!」
「あぁ!閉めたら賊が捕まえられないからな!」
お互いにウンウンと頷きながら、門を開けてさっきと同じ様に傍に立つ。
門番らしく、武器を構えながら。
「……え、逆では?」
「行くぞ」
ポカンと、真っ当な感想を述べるシャデアにナナシは何も語らずに急いで開いた門を潜る。
遅れてシャデアもナナシについて行くが、なぜか納得できない彼女は見えていない門番の二人に頭を下げる。
「本当に申し訳ありません、縁があれば私から何か恩を返させていただきますね」
シャデアの言葉など聞こえていない門番は、外敵の侵入を許さない様に、警戒しながら前だけを見据えている。
彼女は何か悪いことをしたと思いながら、門を開けたナナシの後に続く。
ナナシとシャデア、2人はようやくオータニア国に辿り着いた。




