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異界に迷った能力持ちの殺人鬼はそこで頑張ることにしました  作者: 瀬木御ゆうや
第2章 結婚する相手はどんな人を選ぶべきだろうか
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44話 夫婦

ナナシと別れてから7時間後、ハビー商人の馬車はフェギル草原を抜けてオータニア国の領土に入った。

しかし、一行はその途中にある雑木林で止まった。


「オータニア国に向かう途中で大量の死霊人(グール)に襲われて馬車を無くしました。身重の妻を連れて逃げるのに必死で通行手形も無くしたのですが、何とか一緒にオータニア国まで連れていってもらえませんか?」

「どうかお願いします」


馬車の前に出てきた2人の夫婦。

男の方は茶髪でデザールハザールでは不思議ではない顔だが、女の方は黒髪のあまり見かけない種族のようだった。

お互いに旅行用の厚手のローブを羽織り、男性が女性の身を案じながら懇願する。

女性の方は俯きながら、大きな腹をさすりながら元気無さげに夫である男に遅れてお願いをする。


ハビーと彼に雇われているオークはそんな2人をどうするか相談する。

怪しいから乗せたくないのもあった。

そもそも、お金にならなそうなことにはあまり関わりたくなかった。


2人がヒソヒソと無視しようとする。

その間に女の方が懐から何かを取り出そうとして、それを男が押さえた。

急に動いた2人に視線を向けるハビーとオークだったが、その前に男はなぜか焦りながら笑顔で空いてる手で握った小物袋を掲げた。


「こ、この金貨をあげるから! 頼む!妻の方が具合が悪いと言っている!!本当に頼む!」


小物袋の中身が金貨と聞いて、ハビーは馬車から降りて男に近づき、その袋の中身を出して確認する。

袋から右手に出したその金貨は本物だ。

しかも枚数は50枚ほどで、相乗りさせてオータニア国まで連れて行ったら破格の報酬になってしまうほどだった。

最初は多すぎる金貨に受け取れないよと言っていたが、夫の方が早くしてくれと急いでいるようだった。

それを見てハビーは内心嬉しくて踊りそうな衝動を抑え、気前よく夫婦を馬車に乗せた。


馬車の後ろで荷物に寄り掛かって寝ていたコローネを優しく起こし、相乗りになる2人の夫婦を紹介する。


「オイお嬢ちゃん、今からこの人達も乗るけど大丈夫かい?」


「…は、はい!大丈夫ですよ!」


コローネは起きたばかりで少しばかり理解が追いつかなかったが、ハビーの背後にいる2人を見て察した。

ハビーがササッと手を向けて馬車の中に向け2人の夫婦に乗るように促す。それに従うようにハビーに会釈をして男が、ハビーを無視して女が入り込んだ。乗り込んだのを確認してからハビーは御者台に戻るとすぐに馬を走らせる。


「えーと、こんばんわ…私はコローネっていいます」

「こんばんわ、俺はフランク・デュオって言うんだ。こんな陽も落ちた中で急に騒がしくして起こしてすまなかった。ちょっと急用で急いでいたもんでな」

「いえいえ、事情は分からないですけど困っているようですし、私は全然気にしてませんよ」

「あぁ、そうして頂けると有難いな。」


寝ぼけ眼なまま夫婦、夫の方に挨拶を交わすコローネ。

夫の方は軽く会釈しながら申し訳なさそうにコローネの睡眠を邪魔したことを謝罪する。だが、彼の横に座っていた妻らしき人物はただじっとコローネの顔を見続けていた。

何だろうと思ったコローネは女の方にも挨拶をしようとする。


「こんばん…」

「つ、妻は少し気分が悪いようだ!日中、死霊人(グール)に馬車を襲われて気が触れているんだ!悪いがコローネちゃん君は気にせずに休んでくれたまえ」

「え、グール?」

「いいから寝ようか!」


挨拶をする前に夫の方が大きな声で遮ってコローネに就寝の続きをと促してくる。

もうすぐ夜も更けるので、そろそろ馬車が止まって何処かで休むはずだが、一体どうして寝るように言うのだろうか。

コローネはそう不可解だと思っていても夫の方に「早く休んで」と言われる。妻の方はまだこっちを見ている。

何だか君が悪くなったコローネは「休みますね」と言って再びうたた寝に入ろうとしていた。


コローネが女から顔を逸らす瞬間、聞こえた一言が少し……多分に不可解だった。


「可愛い子供ねぇ…私の中の子達も喜びそう…」


ゾクリ、と。

言い知れない恐怖を感じながら目を閉じて必死に眠りに落ちようとする。

その後2時間後に馬車が止まり御者台から降りたハビーとオーク2人が野営の準備を始めるまで、コローネは寝た後に何が起きるか分からなくてずっと寝たふりをして起きていた。

妻の方は特に何も起こさずにいてくれたが、何故か夫がコローネを守ってくれたと思っている。

その証拠に、先に身重の妻が馬車から降り、その次に夫で最後はコローネだった。しかし、降りるまでコローネの事を目で追い、食事の際も妻とコローネの間に夫が入り、何かあると妻から距離を置いていた。


それが何かが分からない。

でも、ただの親切にしては何か度が過ぎていたようにコローネは思った。



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