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異界に迷った能力持ちの殺人鬼はそこで頑張ることにしました  作者: 瀬木御ゆうや
第2章 結婚する相手はどんな人を選ぶべきだろうか
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43話 事後処理

同盟国の支援に向かう途中、フェギル草原で魔獣 死霊術師(ネクロマンサー)に襲われたジゴズ騎士団の遠征軍。

彼らは過去最強の死霊術師を相手にして全員無事だった。

死霊人に襲われた際の装備損失の被害、最初の攻撃で騎士団の足でもあった馬を亡くしたものの、怪我人数名が出た程度で済んだ。


ジゴズ・クァンジュは未だに信じられないまでも、倒すべき魔獣が妙ちきりんな格好の剣士によって倒され、死体達が動かなくなるのを確かに見ていた。

しばらくしてからー魔獣が人間の姿に戻った。

それも信じられなくて目を疑ったが、魔獣だった人間が消えるのと同時にその剣士もふっと音もなく消えていた。

盾の陰から一部始終を騎士団全員で見ていたので、それが見間違いなのはありえなかった。


やがてガスも、鉄の獣と呼ばれた戦車も敵の装備も全てが空気に溶けて消え、残った全裸の死体達。

そこには死霊術師(ネクロマンサー)がいた証拠はなく、操られていたはずの多くの死体だけがあるのみだ。


全てが終わった後で、王国から援軍が来ることもあって急いで怪我人の処置や転がっていた死体の処理を行う騎士団の面々。

それとは変わってジゴズはパテルマと共にさっきまで魔獣が鎮座していた場所をウロウロとしていた。


「ジゴズ様、本当に拾うのですか?」

「あぁ、少しぐらいこっちに有利な情報が欲しくてな。きっとあるはずだ…」


そう言っていたジゴズの足元でガチャリと何かを踏んで割れた音がした。

踏んだ何かを慎重に足を退けて屈み込み確認する。

ジゴズは早速見つけた。

それを手にとってパテルマに見せつけた。


「それは…」


何と無く察しがついていたパテルマの問いにジゴズは得意げに答える。

それはガラスの欠けらだった。

だが、ただのガラスでは無い。

それが意味するものは、ここで倒された魔獣が証明している。


「魔獣の心臓、その欠けらだ。これをサツキに廻して解析して貰えば、俺たちが倒すべき魔獣の弱点を突くことができるはずだ。俺たちが遠征に向かっている間にそれを見つけてくれればなんとかなるだろう」

「心臓ですか…確かにそうですが…」


とパテルマは少し不思議そうに言った。


「隣国で起きた村壊滅の魔獣騒動の核である魔獣は今ここで倒されたので、今回我々が遠征に出る必要はないのでは?装備も馬も消耗したので今回は中止でも…」

「パテルマ、お前はなんかおかしいと思わないか?」

「え、何でしょうか?」

「死体をよく見ろ」


ジゴズに言われてパテルマは辺りにまだ転がっている死体を見た。

オーク、海人、エルフ、人間、ゴブリン……男女関係無混ざっている多種多様な死体。

それらは着ている服もないので体の隅々まで見ることができる。

よく目を凝らすと、殆どの死体が刺殺や鋭利な刃物で切り裂かれていた。

中には腸がはみ出ている者もいる。

数体は体が焦げたかのように黒く、火傷の跡がある。


「…残酷な殺され方ですが、相手は死霊術師(ネクロマンサー)ですし殺し方はこれが普通では」

「あの死霊術師(ネクロマンサー)が一度でも刃物を持って戦っていたか?死体があの筒についていた小さい短剣であんなに大きく切り裂けるとおもうか?」

「それは…確かにただ殺して死体にしたいのでしたら、わざわざあんな不都合な斬り方をせずとも刺殺だけでも十分のようなきがします。しかし、あの死霊術師(ネクロマンサー)が本気を出したら鎌も使ったりするのでは?」


何と無く腑に落ちていないことがあったジゴズはパテルマにそう言われて不満げに顔を歪ませる。

見たこともない武器を使う魔獣。

銀仮面の知っている声の剣士。

魔獣がデザールハザール王国を狙う理由。

そして、神と呼ばれる存在。

まだ終わっていない。

色々と謎が多すぎる。これはジゴズ1人ではどうあっても解決できない。


「神と名乗った何者かが魔獣を手駒にして我らを襲うのなら、その諸悪の根源についての情報が少しでも欲しい。何らかの証拠がある現地に遠征に向かう理由としては十分すぎるだろう」

「理由も無しに他国を素通りするのも気になりますし、王国が最重要というのも引っかかります」


パテルマもそれに同意して頷く。

騎士団の智慧者でもある彼でも、神やら魔獣といった常軌を逸した存在や、デザールハザール王国を狙う意図が掴めない。

ジゴズと同じく、ただ悩むしかない。

そう思っているうちにデザールハザール王国に続く道から多くの馬の蹄の音が聞こえた。

見ると見たこともない多群の援軍がこちらに向かってきていた。


「とにかく、遠征に使う物資を何とか彼らから借りないといけないな」

「向かったと思ったらこれですからね。色々と面倒な手続きがありそうですが、頑張りますか」

「そうだな」


お互い自嘲気味に笑うと、無駄に重装備をしてきた3つの騎士団が仮設の陣地に近づくのを見ながら歩き出した。

ジゴズの手には、死霊術師(ネクロマンサー)ルイディの心臓でもあった玉石の欠けらが握られていた。


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