27話 その後どうするか
とりあえず今後のことについて考えあった。
シャデアが生き返ったことがこの場にいる人以外に知られるとまずい。
まず、もしシャデアが魔獣だと判明したらどうされるか分からない。
この王国は財源は湧くようにある。
それと同様に自らの身を守ろうとする者達もいる。
この国中とは言わないが、魔獣に良い印象を持つ者はいないだろう。
そもそも、この王国でこの生首ジャックが暴れていたせいで国民の猜疑心は疑いもなく高いだろう。
それを考えてナナシはシャデアにしばらくの間身を隠すように言っておいた。
その点で、フィンがナナシと行動を共にしたほうがいいと言ってきたのでそれに賛成するシャデア。
もちろんテラスは反対したが、状況が状況なので仕方がないと言われ、すごすごとナナシとシャデアの行動を了承する。
魔法が使いたくてうずうずと肩を揺らして興奮を抑えきれないっといった彼女は、ナナシの提案に少し唇を萎めてから「はーい…」と元気なく答える。
「こいつわかってんのか…」
と、ナナシはナナシで毒吐く。
そして次にテラスとフィン。
テラスには今後もシャデアが生き返ったのが気付かれないように傷心の演技をしながら生活するように忠告した。
幸い、部屋に閉じこもっていたのをまだ未練があると思われていたのでこれはこれでテラスにとって好都合な提案だろう。
だが幼馴染、シャデアが生き返ったことが内心嬉しくて仕方がなかったテラスは厳しい顔をして「分、かって……いる…」と何か喉に物でもつっかえてるのかと思うくらいゆっくりと答えてきた。
これにもナナシは「心配だ…」と一言言ってから今度はフィンにあるお願いをした。
これから行われるシャデアの葬儀。
遺体は無くなったが、彼女の死を尊重するために今日中に終わらせるように言う。
参列者を騙す行為だ。
それでもこんな元気に、しかも数年成長した故人が出てくるよりは良いだろう。
時間が経てば、その時が来ると言ってフィンに頼む。
フィンは快く引き受け「立派にシャデアの葬儀を終わらせますわ」と宣言する。
同室にいた当の本人であるシャデアは、自分の葬儀がこれから行われることになんだかモヤっとした表情になる。
当たり前だが、自分の葬儀が目の前で起きるのは誰でも嫌だろう。
顔も名前も無い殺人鬼が誰かに弔われることは無いと思うが、自分が同じ状況を目の当たりにしたらすぐに海をまたいだ違う国で生活するだろう。そんな場所で生きていても居心地が悪いからだ。
これはあくまでナナシの感想。
シャデアはというと、モヤっとした顔から一言。
「これからはシャデアじゃなくて違う名前にしないとなぁ…お父さんやお母さんには悪いけど、容姿も変えたりしないと…いやナナシさんのように覆面被って生活しようかな…」
と、早くも今後のことについて考えてる。
ポジティブすぎるのかアホなのか知らないが、とにかくまだ魔法の事で浮かれてるのが目に取れるように分かる。
ナナシはシャデアを無視しフィンによろしく頼むように言う。
さてこれで全て良いはずだ。
何も問題点はない。
あるとすれば、床に転がりながらナナシの顔を見上げている生首くらいだろう。
「そう言えば私はこれからどうなるんでしょうか?」
「お前が願うなら自由にしてやる。俺が埋めるだけだけど」
「おぉう! 神は私に試練を与えてくれたのでしょうか♪ 四肢がないと実に不便ですね♪」
なぜか状況に楽しんでいるかのように笑うジャック。
その顔に、今日1日分の感情を表す鋭利なナイフを突き立てる。
叫ぶジャックに今度はさっきまで口に詰めていた布を戻し、紐で縛っておく。
血は足りなくなったのかあまり出てはこなかったが、それでも肉片は飛び散る。
床が少し汚れたが、肉片は元に戻ろうと首に向かって動き出す。そのため便利にも汚れが全てなくなる。
少し待って完全に戻ったのを確認したら、ナイフを刺したままの首をそのまま麻袋に戻した。
「こいつは俺が預かっておく。こいつの背後にいる神とかが気になるし、俺がこの世界に呼ばれた理由を知るには生かしておいたほうが都合がいい」
そう言って麻袋を腰に留めて、そのまま部屋のドアに向かうナナシ。
他の三人も同じように立ち上がって各々がすべきことをしようとする。
シャデアはしばらくの間ナナシと行動を共に。
テラスはいつも通りの騎士生活を。
シャデアは今日の葬儀を終わらせて普段の生活に。
ナナシはナナシで。
4人が行動を開始し、テラスの部屋から出て行く。
扉をあけて廊下に出た直後、ナナシはそこで大事なことを思い出してテラスに聞いてみる。
「そういえば、例の懸賞金とかはいくら貰えることになったんだ?」
「貴様それも知らんで私に共闘を持ちかけたのか?」
「いいから言えよ、今後の活動資金にするんだから」
ナナシが言うので、テラスは頰をかいて答える。
「確かまだ生きていると言われて討伐未遂だったからな…確か8000万ユルか?」
ナナシは止まった。
自分がいた世界では、殺しの仕事が完遂した時の報酬は、渡された書類に小切手の置かれた場所が書かれてあったのがあった。
それが最高で3千万の仕事だ。
他は機密とか保身だとかで複雑にロンダリングや仲介人からの受け渡しがあるが、記憶にあるだけで平均300万そこらの金しかもらえない。
殺しが大好きだったので金額にはこだわらなかったが、それでも討伐未遂…つまり殺害未遂で8千万は驚きだった。
考えてみれば、最初に会った日からテラスから10万ユルを借りていた。
金の採掘国で、財源が潤っているからこの国ではこれぐらいが妥当なのだろう。
現にテラスが「どうした?」と不思議そうな顔でナナシを見ているのだから。
これが普通の金額なのだ。
物価は普通なのに、それに反して需要と供給のバランスがおかしい。
だが普通。
この国が平和ボケなのは、その点にあるのだろうか?
その後、夕方になってからナナシはテラスから8千万ユルの小切手のような証明書を貰った。
シャデアと共に一通り街を見たが。
食料
物品
必需品
やはり価格は全部等しく高くもなく安くもない。
全部が全部、普通だった。




