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23話 切り裂きジャック

遠くから一部始終を見ていたテラスはナナシのあまりの強さにあっけにとられていた。


最初はナナシの実力で避けたり斬ったりしていたが、魔獣が合計7本の腕を振るいはじめた辺りから異様な光景と変化が生じていた。


突然、魔獣の動きが遅くなったのだ。

まるで何かの拍子でそうなったかのように突然遅くなる。


今まで見えなかったナイフ捌きが、今ではテラスでも視認できるほど遅くなっていた。


「あ"〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜あ"〜〜〜〜〜〜あ"〜〜〜あ"〜〜〜」


魔獣が大きい声なのにゆったりとしたリズムで声をあげる。

とても遅いナイフの舞の間をゆったりと歩きながらナナシはナイフを懐にしまい、入れ替えるように背中の方から真っ直ぐな真剣を取り出す。


そして視線を真っ直ぐに向けてボーッと立っている魔獣のそばに寄ると、魔獣が操っていた腕を次々に切り落としていく。


根元を切っているわけではないので、切られた腕の先が無くなってもノロノロと動かす姿はまるで玩具のようだ。


そうして全ての腕を斬り終えると、今度は魔獣の体に真剣を突き刺す。刺さった箇所から魔獣の体液が流れるが、魔獣はそれにすら気付かない。

やがて体液が無くなったからなのか、ガクガクと両足が震えだす。

それを見てナナシは躊躇なく両足を斬り、地面に倒れた魔獣は放っておきながら足を細かく切り刻んでいく。


その姿には流石のテラスもゾッとする。


やがて足がぶつ切り状態になると、今度は魔獣の体を刻んでいく。


人間でも魔獣相手にそこまでやるものはいない。敵だとしてもやり過ぎていると思ったが、テラスにはナナシの前に出る勇気が湧かなかった。


ナナシは楽しそうに鼻歌交じりに切っていき、最後に頭だけになった魔獣の髪の毛を掴むと、耳元で何か呟く。



「……あれ?」



そうしてようやく聞こえた魔獣の驚いた声とともに、その首が地面に落ちた。



「おーい、とりあえず殺したぞ」


ナナシが遠くから見ていたテラスを呼びながら体液が着いて汚れた真剣を手持ちの手ぬぐいで拭く。

その姿にゆっくりと青ざめた表情で近づくテラス。


「その…貴様って本当に何者なのだ?演者だの能力だのその戦闘力だの、どう考えても普通ではないぞ」


その質問にナナシは「後にしてくれや」と答え、再度魔獣の首、ジャックの頭を掴んで持ち上げる。


「これで首取ったな。ハイ仕事おしまい、さっさと帰ろう」


「簡単に済ますが、これでも凶悪な魔獣なのだぞ。まだ何か変化があるやもしれない」


「それは私も思いたいですね♪」


「ほらこいつも…」


とノリツッコミを入れようとする前にナナシはジャックの頭に対してナイフを突き付けた。


「んでまだ生きてんだよこいつ…」



「これも神の意志ですね♪ 私の肉体は無くなりましたがこれでもまだ生きられる! あぁ人の身を捨てた私の神命はまだ続くということでしょうか♪」


この時ナナシはもう死んでいるものだと思っていたが。ここまで流暢に喋る白髪の生首には流石に気味が悪くなる。

手放しても良いが、そうすればまた面倒なことになりそうなので生首のジャックを手放さないように注意する。


テラスはその生首に驚いて尻餅をついていたが、それも気にせずにナナシはナナシで魔獣に対話を試みる。


「おい伝説の殺人鬼、切り裂きジャックさんよ。お前はどうしてこの世界にいるんだ?俺の元いた世界じゃ確か女性を何人も殺して消えたそうだが、そん時にこの世界にきたってことか」


「あー! やはり私を倒した貴方は私の世界から来た者でしたか!しかも私は伝説になっている、これはこれはとても良いことですね♪ 嬉しくて心臓が跳ね上がりそうだ!」


ジャックは笑顔で口を動かし、ギャグなのかわからないことを言ってくる。

要領を得ない答えだったので、ナナシは今度はナイフをジャックのほおに刺す。

急に刺してきたことに驚いてジャックは短い悲鳴をあげるが、それも無視してもう一度問う。



「いつ、この世界に、来たんだ?」



一言一言区切りながらもう一度聞くナナシ。

その質問に涙目になりながらジャックは答える。


「か、神に呼ばれたのです! 私たちは神にその所業を認められ、この世界で罪人を罰するために私たちは集められたのです! 神は偉大なり! 神こそ我らに人智を超えた力を与えて下さった尊く尊大なお方なのです!」


その言葉に引っかかるものを感じた。


「神に…私たち?」


「ハイ、神と私たちです」


血を流しながら笑顔で答えるジャックの顔を凝視しながら、ナナシは違う質問をする。


「俺は、その神に呼ばれたってことか?」


「サァ? もし呼ばれたのなら貴方も私たちと同じように魔獣になれるはずですが……それ以前に魔力が無いですね貴方♪」


「ならなんで俺はここにいるんだよ」


「それこそ神のみぞ知るってヤツですね♪」



右目を器用に閉じてウィンクするジャックにムカついたので、壁に何度も打ち付けながらナナシは考える。


どうやらこのジャックとやら以外にもこの世界に来ている者たちがいる。

それが自分のいた世界の住人かは知る必要も無いが、問題はそれらの者たちを招集した張本人である神という存在だ。


今このジャックが言ったことが本当なら、この伝説の殺人鬼を魔獣とやらにし、他の者達も同様な力を与えていることになる。

神を信じないナナシは、目の前で無残にも壁に打ち付けられている殺人鬼がわざと大元の正体を脚色していると判断し、とにかく話を合わせることにした。



「分かった、とにかくお前みたいなのが他にもいるんだな。他のはこの国にいるのか?」


「ぶっべ!? い、いや…いばい…」



晴れた顔で答えるジャックにそうかと答え、最後に最も知りたかった事を尋ねる。



「お前ってどうやれば殺せんだ?」


「さ、さぁ……私は死んだこと無いので知りませんよ…」


ジャックがそう言うので、ナナシはため息をついてジャックの頭を地面に投げつける。

ゴキンと頭の骨が砕ける音がしたがそれも気にせずにテラスに向き合う。

テラスはまだ地べたに座っていた。



「と言うわけだ」


「……えぇ!? つまりシャデアの仇は…」


「無理だな、放っておいてもいずれ復活するかもしれねぇ。見ろよあの肉片、細切れにしたのにいつの間にか元に戻ってるし、この首に向かって少し動き出してる」



そういってナナシが指さした先に、さっきまでバラバラだった肉片が一つになって人の形となり、それが徐々に首に向かってほふく前進している。

それにはテラスも悲鳴を挙げそうになるが、騎士として声に出すのを堪える。



「あぁ!我が肉体は神に愛されている良い子だ!! 私という主格を取り戻そうとこちらに向かってくる! さぁこっちだ! 一つになろう! そうして多くの罪人を共に処断しよう♪」



ナナシの足元で歓喜の声をあげて自分の肉体に賛美の言葉を並べるジャックをとりあえず踏んづけてから、向かってくるジャックの身体から遠ざけるように壁に向かって蹴る。



「ぐえぁ!?」



悲鳴と同時に、ジャックの体も痛みを共有しているのか頭があった場所を抑えるような格好になった。



「まぁこいつ自身が馬鹿だったから良かった。対処法はお前のところの騎士団に任せても大丈夫だろうが、問題は……」


「討伐は無理か……」


「………そういうことだな」


テラスが落ち込んで地面を見つめる。

そして同じようにナナシも落ち込む。



テラスとは違い、ナナシは魔獣を殺せると思っていたからこの敵討ちに参加したのだが、このような結果になってしまってとてもショックだった。

まさか殺せないとは、それだけでテンションがだだ下がりだ。

このモヤモヤとした気持ち……。

どうしようか考える。

だが答えは出ない。


「ックソ!」


ナナシは舌打ちしながら鬱憤晴らしにジャックの頭を何度も蹴って壁にぶつけた。






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