表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/51

16話 赤髪の女騎士が守りたいもの

自分の判断がとんでもない魔獣に隙を与えていたと失念するとともに、絶望している場合ではないと剣を杖代わりに必死に立ちあがる。


背後にいるテラスは今の現状に歯をガチガチと鳴らして見ていた。



「…あ……あぁぁぁ……」



テラスはあまりの出来事に呆然としてしまっている。

恐怖で動けなくなっている。



-早く逃がさないと、テラスまで殺されてしまう-



シャデアはテラスに顔を向けて、必死に喉を掻きむしるように声を出す。



「逃げ……て!」



だがテラスは声が出せない代わりに首を横に振る。



-いやだ-



テラスは恐怖でいっぱいの顔をしながらも、片手は少しずつ剣の柄に伸びて抜こうとしている。

彼は昔から臆病で傲慢で優しくて……だからこそ戦うという選択肢を選ぼうとしていた。



だがそれではダメだ。

一緒に死んでしまうのは、ダメだ。

いやだ。

嫌だ。



-----------絶対に、嫌だ!---------



「テラスはその……女の子まで……死の危険に晒すというのですか? それは民を守る騎士とは、違うと思いますよ」



シャデアは最後の力……いやその一部を使ってテラスに言った。


その一言で、テラスの手は止まる。

それを見て、シャデアは視線の先でバッと涙を流しているテラスに微笑んで、ただ一言。



生きて、と。



テラスはそれを聞いて涙を拭くとすぐさま少女を抱えて走り出す。


その際に涙ぐんだ声で「死ぬな」と言ったのを聞き、それが自分の中で温かく響くのを感じる。

それが源になったのかわからないが、自然と剣を地面から離して立つ。


痛みは引いており、自分でも驚いてはいるが、それでも冷静だった。


思考がクリアになる。

胸中から強い鼓動を感じる。

まるで目の前の魔獣を倒せと何かが言っているかのように。


その姿に、さすがの魔獣も驚いている。



「……なぜ立つのでしょうか? 神というものは人間に痛みを与え、そこから痛みによる停止を命じさせていたはずですが……なぜ動けるのでしょうか? あなたは一体……」



さっきまでふざけていたとは思えない非常に落ち着いた声にシャデアは少し安堵感を覚えるが、化け物の不思議そうな顔に少し微笑んで答える。



「……愛、じゃないかな? これさえあれば……人間なんでもできるんだよ」



そう言ってフラつきながら剣を構える。

化け物はその姿に感銘を受けたのか、今度は真っ向からナイフを構え出す。



「……あなたは頑張りました、えぇ頑張りましたとも。この私に傷を負わせ、愛のために彼らを逃がした……立派だ。これほど綺麗な愛は見たことがない……私が殺し食らった者たちよりも食べるのが惜しいほどだ」



そう言って敬意を表す化け物だが、それだけだ。

次の瞬間には艶かしく動き出してシャデアに襲いかかる。


シャデアもただではやられない。




「ウアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーーーーーーー!!!!!!!!!!」



剣とナイフがぶつかり、彼女の雄叫びが国中に響いた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ