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11話 12騎士団(欠席1人)

ナナシとシャデアが稽古をしている中、2人の騎士が馬に跨り、王国の中央にそびえる王城に向かっていた。



一人は、『ジゴズ騎士団団長』 ジゴズ・クァンジュ。

筋骨隆々とはまさに彼のことを指すかのように鎧の隙間から見える肌身にはしっかりした筋肉が見える。

顔は武人そのもので、ボサボサの髪と鋭い目つきが特徴的だ。


もう一人は『ルミエル騎士団団長』ルミエル・ジ・ハード。

金髪のサラサラとした髪が特徴で、顔も美形だ。

着ている鎧はジゴズと同じものだが、彼の方が圧倒的に着こなしている感が出ている。


二人は昨日の夜に起きた騎士の殺害事件の犯人を他の騎士団と一緒に寝ずに捜索していたのだ。

そして、人攫い事件の犯人の残虐性に全ての騎士団から団長が王城に呼び寄せられ、そこで今後の対策を練る事になったのだ。



「ルミエルよ、ルーヴァン街で成果は出たか?」


「こちらはダメだ、目撃者は二人の騎士と死んだ騎士のみ、裏街の連中にも聞いたというのにだ。あまりにも情報が無さすぎる……」



自分の騎士団の騎士が殺された事に苛立つルミエル。

それもそのはず、殺されたのは彼の教え子だったからだ。



「……まだ18だったんだってな、見回りに若いのを回すのは今後は考えた方が良いな……」


「剣の腕こそ秀でているわけではなかったが、何事も積極的にやってのけたやつだった」



そう言って忌々しそうに何処かにいるはずの殺人犯に憎悪を向けるルミエルに「もうすぐだ」とジゴズは言う。



王城【デザールハザール城】


初代王が建てた城で、そこに大昔の戦火の匂いは感じさせず、白い壁と色鮮やかな装飾が見るものすべてを魅了する。まるで芸術作品のような城だ。


その城の前には、すでにいくつもの人影と馬が見える。



「どうやら12騎士団勢揃いらしいな…」


「……いや、サツキとラーズバルカンの姿が見えない。どうやらいつも通り欠席のようだ」


「ったく、あのバカどもは何で実力あるくせに来てねーんだ」



ジゴズが二人にブツブツと文句を言うとそれにルミエルが苦笑する。


二人は城の前に集まった騎士達と合流する。

その中で白いひげを長く伸ばした体格の良い老騎士が二人に挨拶を交わす。



「これはこれは、ジゴズ殿にルミエル殿……と挨拶の前に、ルミエル殿、貴殿の部下の不幸お気の毒じゃった」


「グランダーロ様、こちらも本日はお忙しいところ集まっていただき感謝いたします……今回犠牲になった彼は騎士として、二人の仲間を逃した立派な者だと私は誇っています。ですので御心使いに感謝します」


「グランダーロ様、ご無沙汰しております」



二人はそう挨拶を交わして会釈をし、多くは語らずグランダーロと同じように門前で彼の横に並ぶ。

二人は周りをちらりと見る。

他の騎士団の面々はみな渋い顔とオーラを醸し出し、それこそ騎士団長の名に恥じない威風堂々とした態度をしていた。


やがて王城の門が開き、馬の手綱を引いて全員入場する。

大勢の王国兵士が迎える中、彼らの前に一人の女騎士が出てくる。



「やぁ久しぶりです、私のこと覚えていますか?」


「……サツキ、お前先に来てたのかよ」



そう言ってジゴズが呆れる視線の先に、黒い綺麗な髪を後ろでしばってまとめた綺麗な女性が立っていた。



【サツキ騎士団長】サツキ・ヒビノ。


この国で魔法を扱う事に長けた最強の騎士団の団長であり、この王城の門番長でもある彼女は、不敵な笑みを浮かべて今来た騎士団長たちを見つめる。



その態度に、ルミエルは苛立って彼女に聞く。



「……なぜ、先に来ているのだ?」


「王にご報告すべきことがあったので」



そう言ってさっきまでの不敵な笑みを消し、神妙な面持ちで語る。



「今回の人攫い……殺人犯は、凶悪な魔獣であることがわかりました。そのため急いで王城の守りを固めると共に私の騎士団の精鋭を置いたのです」



それを聞いて騎士団長たちは騒ぎ出す。

魔獣という言葉に驚いているのもあるが、それ以前にこの国に魔獣が入り込むのは不可能であるからだ。


目の前にいるサツキはもちろんの事、この国は初代から有能な魔法使い達によって魔獣が入り込めないように結界が貼られているのだ。

だからこそ、ここは多種族にとっても商売のしやすく、産業がなに不自由なく発達したのだ。



【デザールハザール最大の安全神話】



その神話を知っているからこそ、今目の前でサツキが語ることの意味が理解できない。


サツキはデザールハザール王国で屈指の強力な魔法を扱うことができる騎士で、国の防衛担当を担っている。


ふざけた態度をとるが、王に対して堅い忠誠を誓っており、その信頼は厚い。



「…魔獣は結界を破って侵入したのか?」



「そのようです。調べてみると南西の壁の結界が少し破れていて、そこから侵入したことがわかりました。さらに被害現場の魔力を調べたところ、普段ならありえない数値の魔力が計測されました。これらのことから侵入者は魔獣であり、とても強力な魔力をお持ちのようです…」



ジゴズの質問にサツキは視線を空に泳がせて答える。



「…おそらく、この場にいる私たちしかその魔獣に敵う者はおりません」


「しかし、最近じゃ魔獣ハンターとやらも成果を上げているではないか。彼らにこの魔獣の一件を任せるのは」


「桁が違いますね、会ってすぐに殺されるのが目に見えます」



一人の騎士長が魔獣を倒して賞金を得る魔獣ハンターに任せる案をだしたが、サツキはそれをすぐさま否定する。


その冷静な言葉に、すべての騎士長は緊迫した面持ちと変わった。面倒くさいことを嫌う彼女を知っているからこそ、今の発言から相手がとんでもない者なのだと再確認する。



「では、すぐに会議を行います。全員……ラーズバルカンの馬鹿はいないですが、ともかく会議室にいらして下さい。ことは一刻争います」



その言葉に従うように、一人ずつ馬から降りて王城内に入り込む。

その姿を見ていた兵士たちも、緊張で汗を大量にかき額から目に入るが、擦ることもせずに体は動けないでいた。



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