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Ⅰ「ここは異世界みたいだ。(白目)」

めちゃくちゃ遅くなってしまった。

ごめんなさい

人は幼いころにたくさんの夢を持っている。それが誰しもに当てはまるかと言われればNOだがたくさんの人が夢を抱いていただろう。

例えば仮面ラ○ダーになりたいとかプ○キュアになりたいとか。俺にもそんな時期があったような気がしないでもないが今はそんな純粋な思考は薄れてしまった。

仮面ライダーなんてなれるわけがないと気が付いたときにはサンタクロースがいないと知った時並の絶望を味わった。

俺の夢といえばやはり男の子なので美少女とお近づきになることが夢だ。

できれば心の優しい純粋な女の子でお願いします。夢のくせにやたらと範囲が厳しい。まぁ夢ゆえにか。

俺は今こんな夢を見ていたような気がする。自分でも何を言っているのかわからない。

というか夢がゲシュタルト崩壊しそう。

なんだかやけに布団が気持ちいい。そう、お日様に当たっているかのような。

更に付け加えるなら同じように太陽のような心安らぐ香りがする。太陽の匂いと言っているものは厳密には違うものであるがいい匂いであることには変わりないのでここではおひさまと言うことにする、

お日様最高。

「おはよう…ございますっ。」

あれ。昨日何かアニメ見てそのまま動画再生しっぱなしだったかな。ヘッドフォンもしたまま寝てしまったみたいだ。

少女と言うのにふさわしい若干幼さの残る声が真横から聞こえた。よく聞けば僅かな息遣いまで聞こえる。

どちらかというと添寝ディスクでも聞いていたのか。いや持っていないけれども。

「あ、あの…?おきてください…?」

ほほにふにふにと柔らかい指が当たる感触。指なのかはよくわからないが指じゃなかったら何なんだって言う恐怖に駆られている為指と断定する。

ここまでやっておいてやっとわかった。多分これは夢じゃないかもしれない。

「うぇ…?あっれぇ…?」

おかしい。眩しい光に目を細めてしばらく光にならして目を開けるとそこはまるっきり見覚えの無い空間だった。

壁は緑色の柱に壁紙は白に近い薄桃色。壁の下の部分は石垣になっており、日本の現代建築ではないように思えた。

目に入ったテーブルやタンスも木製なのだが作り方の趣向が俺の知っているものとは少し異なっており、独特の良く分からない模様が作られていたりする。

「ねぇってばぁっ!」

起こした上体に別の体が触れた。それは俺のような男性のものではなく明らかに女性のものだった。

何処で判断したかなんて聞くんじゃない。直感だ。

「う、ぅ?ってうわぁ!?」

いま自分がおかれている状況を今更理解した俺。どう考えても遅過ぎである。

「な、なんで俺ここにっ!?」

「あ、落ち着いてくださいっ!そうですよね不安ですよね…。すみません本来ならあらかじめ挨拶にいって許可をもらって勇者様をお呼びするのですが手違いがありまして…。

強制的に連れてきてしまって!申し訳ありませんっ!」

なるほど。本来ならある説明をすっ飛ばして俺を召喚してきたという訳か。マジでわけわからん。

というか何でこんな美少女と俺は隣で寝てたんだよおかしいだろ。

水色の髪の前髪はヘアピンのようなもので留められ、後ろは背中の半ばほどまで伸びた髪の毛をうなじのあたりで結わえている。

顔は小さめで輪郭は女性らしい丸みを帯び、髪の色と似た碧い瞳は大きい。小さな口も可愛らしい。

頬は俺が見ていることに反応してか心なしか赤く染まっているようにも見える。

白いワンピースのようなものを着ているが恐らく寝間着だと思う。外に出るものとしてより着やすさを重視したように見えるからだ。

率直に言おう。

俺の今まで見てきた人間の中でぶっちぎりに可愛い。正直な話惚れた。

こう…守ってあげたくなるよね。誰に同意を求めているんだ俺は。

「かぁいいなおい…。」

「ひえっ!?」

「あ・・・その…」

しまった。まさか心の声が出ているとは。初対面のやつからそんなこと言われたら引くよね。

あぁ終わった。完全に終わった。BADENDかな?

「あ、ありがとう、ございます…。でも、わたし、半分だけですけどオーガの血が入っているので…。多分嫌いになっちゃうと思います。」

オーガ…。鬼だろうか。とてもそんな風には見えない。

角も生えていなければ巨体でもないし牙が生えているわけでもない。ただ普通のか弱い女の子、それだけだ。

何でこんな子がそんなことを気にする必要があるのだろうか。俺たちがいた学校にこんな子がいたらそれこそ男子から引っ張りだこなんだけど。

「もしかして差別とかあるの…?」

びくり、わずかに彼女の体が震えた。そして顔を俯かせて絞るように声を紡いだ。

その声は今にも崩れそうなほどか細いものだった。

「はい…。いっつもみんなに蹴られたり…ですね。ひどいときには持ち物を鋏で切られたり…。

本気でやり返したらみんな死んじゃうからやめてって言うしかなくて。」

・・・くそっ。異世界ならいい世界かなと思ったけどやっぱり人間はその程度だったか。

しかもやり返しができないということを分かっててやっているとか最低だ。

悔しくて唇を噛む。人間ってのはいつもこうだ。だからこそ俺は人を傷つけないように生きてきた。

メッセージの一つでも受け取る側の気持ちを熟考する。それなのにそんな人間がまだ生き残っていたのか。

「ごめんね…すごく嫌なこと聞いちゃったみたいで。

忘れてくれ。

・・・さて、話を変えようか。俺はどうしてここに連れてこられたんだ?連れてきたってことは理由があるんだろ?」

俺が多少強引に話題を変えると翳っていた表情を少し明るくさせて照れたようにはにかんだ。

「えっと…この前もいじめられて…。誰かに助けてほしいってずっとお願いしてたら目が覚めたときにあなたが居たんです。

あ、気にしないでください。すぐにでももとの世界にもどしてあげますから…。」

無理に笑ったように見せかけているが目は泣き腫らしている状態だし涙の痕も残っている。

こんな少女にこのような思いをさせるのが世界だというのか。なんの理由もない。ただ他の種族の血が入っているというだけで。

確かに前の世界に戻りたいというのが嘘ではない。

前だって興味のある代物はいくつかあったし勉強して入った高校にちゃんと行きたいってのはある。

友達だってできたし遊ぶ約束だってしてる。行ってみたい場所なんて山ほどあるしまだまだ気になることだらけだ。

・・・でもそんなことよりもっと大事な事なんじゃないかって思う。これまで並べてすべてのことがそんなこと、で済ませられるくらいに。

目の前に困っている女の子がいる。

その子が藁をもつかむ気持ちで助けを求めてくれた。なのになかったことにしようとしている自分が情けなかった。

「荷物とかないからさ。荷物だけ持ってきて戻ってくるって可能?」

本格的に移住計画を立てる俺に何故か戸惑う少女。

「は、はい。できますけど…戻ってくるって…。」

「俺じゃ何ができるかもわからないけど、君の支えくらいにはなれると思うな。」

そう言った瞬間、俺の体が淡い光に包まれた。その光は徐々に数を増やし、俺の意識は吸い込まれていった。






十数分後。

俺は再びあの部屋で目を覚ましていた。沢山の荷物を持って。

モデルナイフやモデルガンはもちろんBB弾やスマートフォンに充電器…は使えるかわからないけれど一応。

あとは親が勉強熱心な俺に対して大量に買った高校から大学すぎた後でも使えるようなレベルの問題集の山。それと勉強用のノート。

あとは筆記用具と着替えくらいのものだ。並べてみると案外沢山と言うほどでもないのかもしれない。

でも個人的に沢山だと思ったので沢山だと明記する。異論は認める。

「あ・・・ほんとに帰って来てくれた…。」

少女が神でも見るような目で俺を目をやり、その目をキラキラと輝かせながら両手を組んで胸の前にくっつけている。

決して豊かでもないが貧しすぎない程度に膨らんだ胸の押し付けられ、わずかに形を変えていた。

その手の経験に乏しい俺は目を離すことができなかった。

「わ、私をそんな目で見ても、おいしくないですよ?」

いいえすごくおいしそうわなにをするやめ



冗談はさておき。やや広めの家で、大きな部屋の中心にテーブルがあり、奥にはキッチンらしきものが、壁際には棚などがおかれている。

ベッドは壁の周りをぐるりと回るようにして配置してある。一つだけだからそうじゃないのか。

でも棚とかでぐるりと囲んでいるからそうなのかな?

考えても仕方ねえや。思考を放棄して荷物の整理に入る。

「あ、着替えとか棚ないじゃん。」

うっかりしてた。この俺としたことが。しょうがない。鞄の中に入れて放置しておけばいいか。

「あ、わたしの棚でよければ…っていやですよね、ごめんなさい。」

「え?いやいや全然!むしろこっちが迷惑かって思っちゃうくらい。気にする必要はないんだよ。」

気を使わせてしまっただろうか。この子の反応は今までの境遇がよほど酷かったということなのだろうか。

「あ、それと学校に行った方がいいかもしれません。この世界で生きていくには常識がないと大変ですから。

それに…ここに飛ばされてきた方は他にもいるんです。ここにいる人は全員大なり小なり能力を持ってるみたいです。」

・・・は?

なんて?能力?何そのガチな異世界みたいなの。おかしいでしょ。

どうせならめっちゃくちゃ強い能力だったらいいなぁ。

敵を一瞬で滅ぼすとかさ!

・・・考えてて馬鹿みたいだ。やめよう。

「へ、へぇ。君は能力あるの?」

すると少女はわずかに困ったような顔をして空笑いを漏らした。

「別にすごいものじゃないんですよ。皆みたいに氷や炎が出せるわけじゃないんです。

ただ力が瞬間的に爆発的に向上するだけですから。」

氷や炎ってのも気になるけど普通にそれ強くね?

「それって強くないの?めちゃくちゃ汎用性高いと思うんだけど。」

それを聞いた少女はうーん、と唸り絞り出した結論を口にする。

「でも他の人達の能力は基本的に遠距離から攻撃できるものなので私みたいに超近距離でしか対応できない能力じゃとっても分が悪いんですよ。」

なるほど。遠距離から大量の攻撃が降り注ぐ中を掻い潜って素手が届く距離に近づかないとダメってことか。

そりゃ使い勝手が悪い。だって攻撃する前にやられるんだから。

どんなに強い能力でも当たらなければ意味がないのだ。

というかこの世界にも学校ってあるのか。でも世界が違うから内容とか全然違うんだろうなぁ。

俺が通っていた高校は全国でも指折りの頭のいい高校で、中の上辺りをうろうろしている薫でも並大抵の大人よりは知識や計算能力などを兼ね備えている。

英語が個人的に苦手だがその他の数学、現代文、科学などの教科で圧倒的な点数を取るため、平均して中の上なのである。

「んで・・・。その学校とやらはどこにあるんだ行くにしても場所が分からないし時間も気になるから…。」

するとんー、と可愛らしくこてんと首を傾げながらわずかに逡巡する。

アイドルなどがするようなものに似たあざとさは微塵もなく、普通に可愛い。無意識ゆえの可愛さとでも言おうか。

「行きたい時に行って行きたくないときには行かなくていいってものなんですよ私たちのところ。

予定表が配られて、好きな教科の時だけ行くみたいな感じでいいんですよ。どうせ将来には関係しませんし。

ちなみに私はもう少ししたらある錬金術の時間に顔を出そうかなと。」

「じゃあ俺も一緒に行こうかな。少し気になるし。服はこのままで大丈夫なのかな?」

「一応配布されるものもありますけどみんな自分の服着てるので恐らくは…えっと、お名前は。」

名前を聞かれ、ついでに自己紹介でもしようと少女の前で正座をして口を開く。

「…そっか。まだ自己紹介もしていなかったのか。では改めまして。

御厨みくりやかおるです。カオルでいいよ。趣味は読書にサバゲーかな。

特異なことはは人の顔色をうかがうこと。相手を怒らせるも喜ばせるも自由自在さ。」

少しおどけた口調で自己紹介を行う。向こうでも珍しかった御厨という苗字はこちらの世界ではさらに新鮮だったようだ。

というか苗字があること自体に驚いているのかもしれない。ここでも身分制度か何かだろうか。

「苗字をお持ちなんですね…。やはり私なんかとかかわるべきではないような…。

いえ、せっかく私のそばにいてもらっているのにそんなことをいうのはよくないですよね。

…こほん。

私の名前はライラです。苗字はないのでライラとお呼びください。

能力は不遜なるクロスイーター。先ほども申し上げた通り肉体強化の能力です。そのため使い勝手はよくないです。

不束者ですがよろしくお願いいたします。」

「こ、こちらこそ末永くよろしくお願いします。」

お互いが見つめ合ったまましばし硬直。

そこでお互いが発した言葉の通常使われる状況を想像したのかお互いのほほが時間と比例して徐々に赤くなっていく。

傍から見ればお前ら結婚するのかとでも言いたげな状況である。初々しさ溢れすぎだろ。

「おーい。ライラ、いるのかー?ボク入っちゃうよー。」

その静寂を遮ったのはハキハキとした、だがそれでいて柔らかさのある女性の声だった。

いや、おそらく女子といったほうが近い。ライラを呼びに来た友達といったところだろうか。

…それにしても。リアルでボクっ娘とはいかがなものか。あれは二次元の女の子だからこそ許されることであってだな。

リアルでやると気持ち悪いとか思われて人が離れていくんだよ。

わかってねえなぁ。まったくこれだから…。

「…前言撤回。」

人知れず呟いていた。正座をして対面していたがその入ってきた娘のほうを見ているため隣になっているライラが怪訝そうな顔でこちらを見ていたが気にしない。

神話に出てくるような天使の羽。穢れ一つないどこまでも白い羽はそれだけで圧倒的な存在感を醸し出している。

少女の顔立ちも整っており、シャープな顔立ちでありながら目元にはかすかに優しげなものが感じられる。

身長はモデルなのかというくらいに高く、出ているところは出ているし引っ込むべきところは引っ込んでいる。

世の女性の憧れを寄せ集めたようだ。そんな印象すら浮かんできた。

茶色いショートカットの髪はくせ毛なのか前方にややはねているがそれをヘッドバンドで抑え込むようにしてまとめている。

一言でいえば天使。もっと言えば女神だろうか。それほどまでの美しさを兼ね備えているからこそボクっ娘否定の発言を取り消したのだ。

「ね、ねぇライラ、その人は誰?見たところ純粋な人間っぽいのだけど…。」

若干戸惑いを帯びた声音であごに手を当てて尋ねるとライラはすこしの硬直を経て言葉を紡ぎだした。

「う、うん。この人はカオルさんです。私が一人で寂しいって話したら一緒にいてくれるって。

なので信用して大丈夫だと思います。」

「それは怪しいんじゃないのか…?ボクとしては男の人と一緒ってのはちょっと心配だなぁ。

君、すごくかわいいからさ。血迷ってもおかしくない。」

「おい待てこいつがかわいいってのは全面的に同意するけどそこまで警戒すんな…ってすまん。

無理があるわな。俺でも警戒するもん。ってそれより君は何か用があったんじゃないのか?」

強引に話題を逸らすための俺の指摘にあ、と声を漏らした。

ちなみに隣でライラが顔を赤らめていたのは俺は知らない。そうだ、知らない。

いいな?知らないんだ。

「そうだった。ライラ、錬金術の授業はもうすぐだ。そろそろ行かないと間に合わなくなる。」

言うが早いかライラを無理やり着替えさせるとあっという間に出て行ってしまった。

引っ張るようにして。ちなみにライラたちはペンと羊皮紙のようなものを持って行っただけだったので俺も慌てて未使用のノートと筆箱を抱えて後を追う。

幸い時間には余裕を持たせてあるのか、歩きながら進んでいるため、少し後ろという距離を保って行動できた。

町並みは民家が高低差のある地形に合わせてばらばらに作られており、大きな段差の下をくりぬいて家をはめ込んだようなものもあった。

見るものすべてが今まで調べた土地とは違う感覚ですごく興味をそそられた。

見たこともない蝶が飛んでいたりしていて思わず一匹捕まえそうになったが。

そのままついていくとそこには馬鹿みたいにでかい敷地とそこに点々と存在する二教室分くらいの建物が俺の目に移りこんだ。


閲覧ありがとうございました。

次回は六月末ごろに投稿したいと思っておりますので是非。

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