第7話 こちらのはじまり その④
「まーいい。今度はわしの事だ。わしは、お前ら空から降ってくる奴を、夢に見る能力がある。昨夜も夢に見た。子供が、変な輪っかの付いた塊と落ちてくる夢だ」
「輪っか?」
「それだ」
オウンジは自転車の方を指差して、言った。
「あー、自転車!自転車知らないの?」
そう言いながら、可那は側に落ちていた自転車の方に行った。
ペダルを手で回してみる、チェーンが動き、車輪が回る。
「大丈夫かな」
可那は、自転車を起こし、乗り、オウンジの周りを、漕いで一周回って見せた。
「おお、それは乗り物なのか!」
オウンジは驚いた。
「車みたいなものか?」
「え、車あるの!」
今度は可那が驚いた。
「此処にはないが、大きなドンペリの町にはあると聞く」
「ドンペリ?へー、車あるのに自転車ないんだ。変なトコ。へー」
可那は自転車から降り、スタンドを立てながら、言った。
「わしが知らないだけで、あるかも知れん」
「なんだよ」
可那はオウンジの事を白い目で見た。
「ゴホン!」
オウンジは気まずそうに咳払いを一つした。
「とにかくだ。夢に見たら、落ちて来るお前達を迎えに行く。それがわしの昔からの使命だ。そしてお前達の行く方向を教える」
「何で?誰に言われたの?頼まれたの?そのお仕事」
「昔から、頭の中で声がするんだ。誰の声かは分からん。ただ、わしは、言われた様にするだけだ」
「ふーん。断れば良いのに。面倒臭い」
「それは・・・考えた事もなかった」
オウンジは涙目をした。
「とにかくだ。これからカナブン、お前はアリガト山の中腹に刺さっていると言う、木で出来た大きな船を目指さなければならない」
「アララト山?」
「アリガト山だ。とりあえず、わしの家に行こう。道すがら、この世界の事をもう少し詳しく、教えてやる」
「はーい」
可那は大きく手を上げて答えた。
つづく
いつも読んで下さる皆様、有難うございます。
次回は、現実パートになります。