第6話 こちらのはじまり その③
「説明してもいいかな?」
ナシ鳥を眺めている可那に、オウンジは申し訳なさそうに聞いた。
可那はまたオウンジの方を振り返り、
「いいよ」
と、元気に言った。
「やれやれ、まず、君の名だ?名前は何と言う?まだ覚えてるかい?」
「佐藤可那。みんなにはカナブンって言われてる」
「おお、大丈夫な様だな。カナブンか」
「そう」
言いながら可那は、ニコッと笑った。
「じゃあ、カナブン、この世界について説明しよう。まず、この世界の名前『ヘッドルーム』だが、これは誰かの頭の中って事だ。誰の頭の中を指してるかは誰にも分からない。大抵の奴は、この世界を作った神様の頭の中だろうと言うが、カナブン、君の親の頭の中かも分からない。本当の事は誰にも分からないし、分かった奴は此処から出られると言う。昔からの言い伝えだ。わしは此処で生まれ育ったからな」
「ふ~ん」
可那は詰まらなそうに、地面に腰を下ろした。
しょうがないので、オウンジも腰を屈めた。
「それからこの世界に入って来ると、頭の中に霧が出来る。そんで、記憶の一部を薄らかして、実年齢より、少しお馬鹿にしちまう。この世界により早く馴染ませる為だ。もう、突然空から落ちて来て、この世界に来た事を、驚きもしないだろ?」
どうだ?という顔で、オウンジが聞いた。
「んー、分かんない。最初から違和感なかったて言うか、外国に来たぐらいの感じ」
「その前の事は?その前の事は覚えてるか?」
オウンジは少し鋭い目をして聞いた。
「えー、何処にいたっけ。忘れた」
「やはりな。都合の悪い部分は消されてる」
オウンジは呟いた。
因みに作者の都合で、消した訳ではない。
「カナブン、わしは今まで、何人も空から落ちて来た者を拾ったが、みんな、その前の記憶がなかった」
「ふーん。困ったね」
「本当に、困ってるか?」
オウンジは可那の言葉に困惑した。
頭の中の霧により、可那の思考能力は小学生中学年辺りまで下げられていた。
つづく
いつも読んで頂いて、有難うございます。