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第34話 坂道は辛いよ

 「はあ はあ やっぱり自転車のが楽だ」

 自転車を立ち漕ぎしながら、肩を左右に揺らして、可那は言った。

 前の籠にはデブ猫デロロがすっぽりと入っていた。

 つばめに貰ったパンツと果物の入った袋は、後ろの荷台に仕様がないので貰ったパンツを一枚裂いて、それを紐代わりに括り付けた。

 春の様な陽気の少し生暖かい風が体に当たり、少し汗ばんだ可那のショートヘアを僅かに揺らす。

 自転車を探して走って戻った道は、自転車に乗って通ると、楽チンで爽快だった。

 鼻歌でも歌いながら町を目指したい気分だった。

 彼に出会うまでは…


 平坦な道から急な上り坂にさしかかり、それまで勢い良く漕いでいた自転車が徐々に減速を始めた。

 「ひ~! 重い! 重すぎる!」

 必死の形相で可那は自転車を進めようと足を前へと出そうとする。

 しかし急坂に思い通り漕げず、自転車は次第にふらつき始めた。

 ゆらゆらと左右に蛇行し始める自転車。

 もう諦めて、可那は足を着こうと思ったその時だった!

 突然、それまで掛かっていた重力が半減して、自転車が軽くなったのを可那は感じた。

 「あれ?」

 思わず声を出して、ペダルに掛けた足をスッと前に出す。

 確実に先程より軽く出る足。

 「あきらめるな!」

 突然自転車の後ろの方から声が聞こえた。


 「何?」

 思わず声のした方を振り返る可那。

 そこにはピンクのワンピースにピンクのリボンを付けた男。自称悪の大魔王・ぐりんぐりんがいた。

 彼は可那の自転車の荷台に手を掛けて、歯を食いしばりながら、坂を上へと押していた。

 「だ、誰?」

 「振り向くな! 前を見て一所懸命漕げ! もう少しで坂を越えられる!」

 振り向いたまま尋ねた可那にぐりんぐりんの怒号が飛んだ。

 「はい!」

 その声に威圧されて思わず前を向くと可那はそう答えて、力強くペダルを踏んだ。

 「そう! それでいい」

 何事が起こったのか全く分からないまま、可那はぐりんぐりんに言われるままペダルを漕ぎ続けた。

 「俺はお前が来るのがあまりに遅いので見に来たのだ。そしたらこの坂に苦戦している今のお前に出くわした。そして急坂に諦めて足を地面に下ろそうとしているお前に気付いてしまった。それが俺には許せなかったんだ~!」

 荷台を押しながら話すぐりんぐりんの声が、前で自転車を漕ぐ可那の耳に届く。

 しかしそれは全く以って意味不明な言葉で、何一つ可那にとっては謎のままだった。

 「声、男の子みたいだね。そんなに可愛いのに。有難う!押してくれて」

 だから可那は笑顔で優しく、女の子に話すようにぐりんぐりんに話かけた。


 「キィー!」





                つづく

 

いつも読んで頂いて、有難うございます。

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