第32話 パンツよ続くよ何処までも
可那は履きかけの真新しい白のパンツの両脇を、持つ手でギュッと上げた。
「装~着!」
つばめも去り、周りには転がっているデロロ以外は誰もいない事が分っていたので、つい言ってみる。
可那は新しいパンツを手に入れた!
レベルUPはしていない。関係ない。
そしてこれもずっと履いている赤に黒のギンガムチェックのスカートを履く。
残ったのはこちらに来てからずっと履いていたパンツ。
問題はこれをどうするかだった。
つばめのよこした袋に一緒に入れるか?
しかしそこにはパンツだけではなく、生きて行く上で貴重な食料である果物も4~5個入っている。
そこに自分が履いていて、嫌な感触しか残らない古びたパンツも一緒に入れるなんて事は、可那の中ではあり得ない選択だった。
「そうだ」
フッとある事を思い付く。
可那は脱いだ古いパンツを片手にスタスタと、つばめの開けた壁の穴へと向かった。
そしてポイッと、その穴にパンツを投げ込む。
可那にとってつばめの開けた抜け道は、ゴミ箱に最適だった。
「よし! ついでつばめさんが履いたっぽいパンツも捨ててくか」
そう言うとその場にしゃがみ込み、袋の中身を漁り出した。
新品のパンツと、つばめが一度履いたというパンツを、見た目と臭覚を頼りに器用に選別して行く。
つばめが履いたらしい怪しいパンツが4枚発見された。
それを人が履いたパンツなので可那は、親指と人差し指の先で僅かに摘み、ポイ! ポイ! と、穴へと投げ込んだ。
「よし! これでOKだ!」
誰もいないのだから口に出して言う必要もないのだが、読者の為に可那は口に出して言ってみた。
そして袋を持って立ち上がると、転がっているデロロの方に向かった。
袋を肩に背負い、デロロを拾い上げ、抱きかかえる。
目線は元来た道の方を向く。
可那は元々歩いていた一本道の方に向かい、歩き出した。
「早くアルルに会いたいな。まだパンツ履いてなかったら、分けてあげよう。喜ぶかな」
そんな独り言を言うと、自然に笑みがこぼれた。
「遅い! 遅すぎるぞ!」
可那がこれから通る道上で、一人呟き、怒っている男がいた。
「予定ではもうとっくに着いている筈だ。何をやってるんだ!」
男は一見すると少女に見えた。
身長140センチ程。髪はサラサラの金髪に両脇にピンクのリボン。服装はピンクのワンピース。
しかし男なのだ。
男の事を人は呼ばないが自分ではこう呼んでいた。
-悪の大魔王・ぐりんぐりんー
「カナブン! カモーン!」
つづく
いつも読んで頂いて、有難うございます。
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