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第31話 パンツありますか?

 「アリガト山に行けば帰れるって聞いたけど。大きな船が刺さってるって」

 つばめの言葉に可那は、自分がオウンジから聞いた話を伝えた。

 「アリガト山には行った。しかし、船には入れなかった」

 何かを思い出す様に、遠くを見つめながらつばめは、少し悔しそうな表情で言った。

 「えっ! 入れなかったの? なんで?」

 可那は驚いて尋ねた。

 「扉が開かなかった。私は、この世界を作った奴の望む人物じゃなかったようだ。しかし、それなら何故私を呼び込んだんだ!」

 話しながらつばめは怒った様に持っていたかけやを片手で大きく振り上げ、地面に振り下ろした。

 

   ドン!

 

 大きな音が、実はあまり広くない空間に響いた。

 つばめの行動に少し驚いた後に、何かに気付いた様に可那は明るく話し始めた。

 「じゃあさー、きっと私なら入れるよ!主役だもん!そしたらつばめさんも一緒に入れてあげる」

 明るく笑顔で言う可那の顔をつばめは神妙な顔つきで眺めながら呟いた。

 「何故主役だとわかる?」

 「なんでって……」

 つばめの凄みのある言葉に、思わず可那は言葉を失くした。

 「だって、私主役だよね~?」

 誰もいない方向に向かって話しかける可那。

 実はそうとは決まっていないのです。

 「そんな」

 呟く可那の顔は青ざめていた。

 「君は一体誰と話してるんだ?」

 突然変な方向を向いて話しだした可那を見て、怪訝そうにつばめは言った。

 顔面蒼白状態で、今にも泣き出しそうな顔で可那はつばめの方を振り向いた。

 「そうとは限らないって。作者が…」

 「君は作者と話せるのか? スゲーな」

 可那の言葉に半信半疑のつばめは半分笑いながらそう言った。


 「さてと、それじゃあ私は裏道を通ってドデスカデンに戻るとするか。君は、真っ直ぐ正規の道でドデスカデンを目指せ。シナリオ通りの行動をしないと怪しまれる。本来君と私は此処で出会う予定には入っていないはずだからな。ドデスカデンに着いたらまた会おう」

 つばめは持っていたかけやを肩に担ぐと、そう言って可那に軽く手を振り、自分の開けた穴の方へと歩き出した。

 「あ、待って!」

 「ん?」

 呼ばれて振り返るつばめ。

 「あの、食べ物と、その……パンツなんてありますか? 新しいの」

 口篭りながら恥ずかしいそうに言う可那に、つばめはほんのりと赤い唇の隅を上げて、ニヤリと笑った。

 「パンツはな。私も最初困ったよ。何日も同じの履いて。ちょっと待ってろ」

 そう言うとつばめは、自ら開けた穴を跨いで、中へと入って行った。

 待つこと1分30秒程。

 つばめはまるでサンタの様な大きな白い布製の袋を担いで出て来た。

 「ほら、分けてやるよ。持ってけ」

 そう言われ可那の前に投げ出された袋の口を覗く。

 中には何十枚もの白いパンツと、一緒に果物と思しき物が入っていた。

 「うわ~!パンツだ!良かった~」

 そう言いながら喜んで可那は中のパンツと果物を幾つか取り出して見た。

 「あれ、でもこれ、ちょっと色が変なのも混ざってるよ」

 真っ白ではないパンツを摘み、目の前に翳しながら可那は言った。

 「あ~、私が一回くらい履いたのも混ざってるからな」

 気にする程ではないという風に言うつばめ。

 「え~人が履いたのは嫌だ~!」

 凄い嫌そうな顔で可那は叫んだ。




        つづく


いつも読んで頂いて、有難うございます。

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