第30話 謎がとまらない
今回はほぼ会話文です。いつもだけど(笑)
思わずその手を可那は握った。
「佐藤、佐藤可那です。つばめさん?つばめさんって。行方不明になったすずめちゃんのお姉さん!?」
「あ~、行方不明?私はそういう事になってるのか?すずめ?お姉さん?私に妹はいないぞ。今は分らんが、当時は一人っ子だった。あれからどれだけ経つのか」
「五年です。五年前にいなくなった事になってます。新聞やテレビのニュースにも出たって。でも・・・え~!すずめちゃん知らない!なんで!同級生のすずめちゃんにお姉さんの事聞いたんですよ!」
可那はつばめの言葉に驚きを隠せなかった。
「知らないものは知らない。君の記憶か、私の記憶が、この世界のガスでおかしくなっているのかも知れないが。記憶にない」
「おかしいよ~!私はアルルに頭の中綺麗にして貰ったばかりだから、きっとつばめさんが忘れてるんだよ~!」
「アルル?アルルとは、ルルシリーズの事か?しかし私は裏道を使い、なるべくガスを吸わないで過ごしているからな。大抵の記憶はちゃんとあるぞ。その上で、そんな子は知らない」
「え~!なんだよ!この謎が謎を呼ぶ急展開って!え~!」
口を大きく開けたまま、そう言うと可那は一瞬固まった。
正直、先程から入って来る情報に、可那の頭の情報処理能力は追いついて行けないでいた。
「あ、ルルシリーズ?何それ?」
少ししてやっとその点に気付いて、可那は口を開いた。
「オウンジの娘さ。空から落ちて来た人を、道案内する娘。一人が旅に出ると、新しいのが現れる。君のはアルル?私のはプルルだった」
「へ~!プルルは何処にいるの?顔とか同じなのかな?」
可那はそう言うと辺りをキョロキョロ見回した。
「プルルはドデスカデンの町にいて、私が戻るまで待機している」
「ドデスカデン?」
「多分、君が次に行く町さ。いいかい、この世界は双六と同じさ。行く道は決まっている。何処へでも自分の意思で行ける様に見えて、実は道はこんなに狭く、町で一度ホールの様に広がっては、また道で狭くなる。それの繰り返しで、ほぼ、1本道が続く。後は私みたいに監視を逃れる裏道を開けるか。この世界は誰かの頭の中なんだろ。人間の頭レベルでは、例えば地球を丸ごと再現する事は無理さ。手抜きも出てくる」
「手抜き?」
「この壁さ。広大に見せかけてる」
そう言ってつばめは、壁に手を掛け、撫でた。
「しかし惜しかったな~。もう少しでオウンジの家の中に進入出来たのに」
「オウンジ?私さっきまでいたよ」
つばめの言葉に反応して、可那が答えた。
「あの家はこの世界でも特殊だ。謎が多過ぎる。裏道で側まで行ったんだが、見つかってしまった」
「オウンジは昨日気付いてたよ。つばめさんが側にいるのを。私を家に連れて行く途中で見つけてた」
「ちっ!気付かれてたのか」
「オウンジは優しそうなオジサンだよ」
「本人はそうだろう。しかし、ヘッドルームの操り人形さ。ルルシーリーズも。きっと本人の意思と関係なく、私たちの事を誰かに伝えている。そして、進む道を示す。私はずっと帰る道を探してるんだ」
つづく
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