第25話 マンドラゴラ
「げっ!なんじゃこりゃ!」
可那は思わず苦虫を噛み潰したような表情で、叫んだ。
「あらあら、マンドラゴラよ」
「マンドラ・・・なんだ?」
アルルの言葉を聞いて、繰り返そうとする可那。
「マドラゴラ。根の部分が人間の形をした植物よ。この子達は肩まで地表に出してるわね。こんにちは」
アルルはそう言うと、マンドラゴラに挨拶した。
それは、肩から下が地面に埋まった人間が、頭の上に草を生やしている様だった。
大きさは人参ぐらいか。
「こんにちは。お姉さん!」
「こんにちは!」
並んで生えてる2体のマンドラゴラは、順番にアルルに挨拶をした。
「すげー!この人参喋るよ!」
可那は見たこともない不思議な植物に興奮している様だった。
「こいつ嫌らーい」
「今、やっつけてやるからね。お姉さん」
可那の言葉にマンドラゴラは口々に言った。
「まあ、ありがとう。私はアルルよ。こっちはカナブン。あなた達は?」
マンドラゴラ達の言葉に微笑みながら優しくアルルが言った。
「私の名前はキッキョーよ」
色の黒いマンドラゴラが言う。
「僕はフタバン」
こちらのマンドラゴラは色白だ。
「「私達、双子の姉弟なの」」
二人は同時に言った。
「あらまー」
「ほえ~」
その言葉にアルルと可那も次々に声をあげた。
「ねえねえ、アルル。私を抜いて」
キッキョーが言った。
「やめときなよ、アルル。気持ち悪い」
「煩い!カナブンは黙ってて!」
「そうだ!そうだ!今、やっつけてやるからな!」
可那の言葉に二人は直ぐに声を荒げた。
「そうよカナブン。気持ち悪いなんて酷いわよ。こんなに可愛いのに。いいわ、抜いてあげる」
アルルはそう言うと、キッキョーの頭の草を掴み、力一杯引き抜いた。
「キャーーー!」
奇怪な悲鳴をあげて、キッキョーは引き抜かれた。
引き抜かれた先の部分は、人間の女性の形をしていた。
顔と体つきから推測するに、人間に直すとおよそ15~16歳位だろうか。
「おー!すっぽんぽん。裸じゃないか!」
可那の中の中学生気質に火が点いたのか。そう言うと、可那は素早く隣のフタバンの頭の草に手を掛け、引き抜こうとし始めた。
「するとこちらは男の子」
何やらよからぬ事を考えて嬉しそうにそう言った。
「嫌だ!お前は嫌だ!やめろ~」
フタバンは必死に抵抗して叫んだ。
「キャーーー!」
しかし、抵抗も虚しくフタバンは奇声を発し、引き抜かれた。
手で、前の方を隠し、恥ずかしそうにするフタバン。
ニヤニヤと、嬉しそうに眺める可那は、もはやイメージは鬼畜。
それを見ていたアルルがワンピースのポケットから、タオルハンカチを取り出して、裂いた。
「あらあら、裸じゃ恥ずかしいし、寒いわよね。はい。これを体に巻いて」
そう言うと二人にそれを渡した。
「ぶー」
可那は明らかに詰まらそうな顔になった。
「「ありがとう」」
二人は喜んでそれを受け取ると、体に巻いた。
「よし!これでカナブンと戦えるぞ!」
「アルルを助けてあげるんだから!」
二人は口々にそう言った。
つづく
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マンドラゴラは、男が色白で、女が色黒で、性別があるそうです。ハリーポッターでも出ていたと思いますが、僕は昔読んだ「マカロニほうれん荘」という漫画の方で知りました。




