第24話 なにか
二人を乗せた自転車は、相変わらず真っ平らな芝生の様な所を、かれこれ2時間程走っていた。
「飽きたー!飽きたー!」
後ろに乗る可那がまたもアルルの胸をプニプ二しながら叫ぶ。
「ちょっとーやめてよ!」
ハンドルで両手が塞がり、拒めないアルルが叫ぶ。
「だって暇なんだもーん。揉み解してあげてるんだからいいじゃ~ん」
「もういや!なんでもいいから出て来てカナブンの相手をして~!」
「ずーっと先まで真っ平らだもん。なんにもないよ」
ぷにゅ
そう言ってはアルルの右胸を揉む。
ぷにゅ
次は左胸。
もはやアルルの体は可那のおもちゃにされていた。
「あはははは」
「誰か助けて・・・」
笑いながらアルルの体を弄ぶ可那に、アルルは半泣きで呟いた。
「無駄無駄。誰もアルルを助けやしないよ」
もはや可那は主人公と言うより、悪役だった。
「「やめなさい!」」
その時何処からともなく声がした。
「え?」
「ブレーキブレーキ!」
可那がブレーキをかける様に叫ぶ。
「え?ブレーキって?」
「そこのハンドルの所のレバーをギュッと握るの!」
「へ?レバー?これ?」
良く分らないまま、アルルはブレーキレバーをギュッと握り締めた。
キキィー!
音を立てて自転車が止まる。
勢い良く荷台から飛び降りた可那は、目を輝かせて辺りをキョロキョロ見渡した。
「今、声聞こえたよね?」
何かを探しながら、アルルの方は見ずに可那が声をかけた。
「ええ。やめなさいって」
アルルは自転車のスタンドを立てながら答えた。
「二人で聞こえたって事は、空耳じゃないって事だ」
「そう。ね」
言いながら、アルルは可那の方へと寄って行く。
「誰もいないな~」
一通り辺りを見回した後に、可那が寂しそうにポツリと言った。
「ここよ~」
「ここだよ~」
諦めかけた時、また声がした。
「だから何処だよ?」
声に反応して、何処へともなく可那が尋ねる。
「お前じゃないよ~」
「そうそう。そっちのお姉さん」
「わたし?」
アルルが自分の顔を指差して尋ねる。
「そうそう」
「可哀想に、嫌がってるのに胸を揉みまくられて。待っててね。今私達が助けてあげるから」
相変わらず声が何処から聞こえて来るのかは分らなかったが、可那は既に拗ねていた。
「ちぇ、なんかつまんなーい」
「カナブン」
嗜める様にアルルはそう言うと、当てもなく声をかける。
「何処にいるの~?」
「ここだよここ」
「下を見て。下よ」
その言葉にアルルと可那は、アルルの足元を見た。
つづく
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