第21話 自転車で行こう その①
「さてさて、こっちの方角で合ってるの?」
自転車を押して歩きながら、可那は横を歩くアルルに尋ねた。
「大丈夫。私はアリガト山までの全ての道を頭に入っているから。何故だかは分らないけど」
「えー、自分の事なのに分らないの?大丈夫~?」
可那は右手で自分の頭を指して、馬鹿にした様にアルルに言った。
「ん~、じゃあ自分は分ってるの?カナブンは自分の事分ってる?此処に来る前、前の世界での事、ちゃんと覚えてる?」
「ズルイ!それはズルイよ!前の事覚えてないのは私の所為じゃないもん!」
可那はアルルの言葉に頬を膨らませ怒ってみせた。
二人の後ろに見えるオウンジの家も、もう相当小さくなっていた。
そして二人は、言葉を交わさなくなった。
「あのさー、二人しかいないんだよ。なんか喋ってよ」
暫くして、沈黙に耐えられなくなった可那が口を開いた。
「・・・・」
「あのさー、遠くに山は幾つか見えるけど、見渡す限り平らなゴルフ場みたいな所で、木もこの辺は生えてないし。超詰まんないんだよね」
「ゴルフ場?」
沈黙を続けていたアルルが、その言葉に反応した。
「あ、分らないか。短い芝生みたいな、この草が一杯生えている場所があるの。前いた世界に。その場所の名前」
「ふーん。ただの草原に名前があるんだ。これは何なの?」
そう言うとアルルは自転車を指差した。
可那の説明は上手く伝わらなかったようだが、アルルは可那のいた世界に興味を持ったみたいだった。
「これ?これは自転車。あ、そうだ!」
可那はアルルの質問に答えながら、ある事を思い付いた。
「これに乗ると、歩くより全然楽に速く、前に進む事が出来るんだ。アルル、ちょっと前に乗ってみて」
そう言うと可那は自転車のスタンドを立てた。
「こお?」
アルルは水色のワンピースの短い裾をフワリとさせ、サドルに座ると、グリップを握った。
「お、アルル、パンツ見えそう!」
中年親父の様にはしゃいで声を出す可那。
「パンツ?穿いてないよ」
アルルはあっけらかんと答えた。
「えー!穿いてないの!さすがエロ女!」
可那はびっくりして声を上げた。
「町では穿いてる人もいるって聞くけど、此処ではお父さんと二人暮らしだから、必要ないでしょ。滅多に誰にも会わないし。それからなに、そのエロ女って!」
アルルは最後の方は少し怒っていた。
「ん~。なんか納得いかないけど、納得した。じゃあさー、ブラは?」
「ブラって?」
アルルの発言に驚いた可那は、
「どうやらノーブラみたいですよ。読者の皆さん」
誰もいない方に向かって、そう言った。
「誰に向かって話してるの?」
つづく
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