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第20話 旅のはじまり

 翌朝、早いのか遅いのか分らないが、可那とアルルはオウンジの家を出て、旅立つ事になった。

 それは、話が進まないという事情とは関係ない。

 「ついでに時間も分る様にしてよ!」

 「急に、誰に言ってるの?」

 玄関先で突然可那が発した言葉に驚いて、アルルは尋ねた。

 きっとそれは僕にだろう。という訳で、

 「時計ならあるぞ。ほれ」

 可那の話が聞こえたオウンジが、家の中から、縦15センチ・横20センチ・奥行き3センチ程の置時計の様な時計を持って現れた。

 「これ目覚まし時計じゃん!でけー!邪魔くさーい!」

 その時計を見た可那が言った。

 確かにそれは、目覚まし時計にそっくりだった。

 「この世界にも時間はあるし、時計はあるよ。ウチにある一番小さい時計がこれだ。持ってきなさい」

 オウンジは諭す様にそう言うと、可那の前に差し出した。

 「ぶーー」

 しかめっ面をしながら、可那はそれを受け取った。


 「じゃあ、もういいわね」

 アルルはそう言うと皮製のリュックの様な物を背負って、家の前の通りに向かって歩き出した。

 「ちょっと待って!」

 可那は玄関脇に立て掛けて置いた自転車に手を掛け、自転車を押しながらアルルの方へと駆け寄った。

 「それ持ってくの?」

 横に並んだ可那の方を見ながらアルルは尋ねた。

 「うん、持ってくよ。歩くより楽だもん。それより・・・」

 そう言うと可那は後ろを振り向き、玄関先から見送っているオウンジの方を一瞬眺めた。

 オウンジは、ニコニコ笑顔で手を振っていた。

 「アルル、私と行って大丈夫なの?オウンジ一人になっちゃうよ」

 前を向き直して、可那は尋ねた。

 「え?大丈夫だよ。私の代わりは幾らでもいるから」

 「え、とってもヤバイ、どこかで聞いた台詞なんだけど」

 可那は顔面蒼白になって言った。

 「んっとね。これまでも、空から落ちて来た人達と一緒に旅に出てるのよ。そうして、この家から私がいなくなると、次の日には新しい私が家の中に現れる。お父さんから教わったの。だから大丈夫なんだって」

 「なんじゃそりゃ! なんでもありか? いやいや、とりあえずクローンじゃなくて良かった。多分」

 可那は不自然な汗をかきながらそう言った。

 二人は家の敷地を抜けて、一路アリガト山に向けて、旅立った。




          つづく

 

 

いつも読んで頂いて、有難うございます。

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