第14話 こちらのつづき その④
「アルル。なんか、エロいな~」
にやけた顔をして可那が言うと、
「そお?」
と、しっとりとした唇を指でなぞりながら、アルルは言った。
「なんだ、その感じでは駄目だったか?」
にやけた顔の可奈を見ながら、オウンジが言う。
「だめじゃないよ」
笑いながら、オウンジの方を振り向いて、可那が言った。
「記憶、戻ったみたい。前の世界の事、全部じゃないけど、思い出した」
「そうか!でかしたぞ、アルル」
オウンジは可那とアルルの両方の顔を、見比べながら言った。
「でも、いつもの事だけど、また段々記憶は薄れていくわ。ここの空気を吸っている限り」
「そうか・・・そうだな」
アルルとオウンジがそう言いながら目配せをした。
「なに、戻っちゃうの?記憶なくなっちゃうの?」
驚いた可那が二人の方を向いて言う。
「ああ、早ければ2週間程で、もっても2ヶ月というところか」
可那の目を見ながら、真面目な顔でオウンジは言った。
「それじゃあ、アルジャーノンだ!」
可那は天を仰ぎながら言った。
「アルジャーノン?」
アルルが聞き返す。
「ダニエル・キイスの小説!何にも知らないだからぁ。あー、馬鹿に戻るのは嫌だー」
可那は頭を抱えてそう言った。
「前とあんまり変わってない様に見えるが」
「でも、霧は取れたし、本人も記憶が戻ったと言ってるんだから。元々の性格なんじゃないの?」
「そうなのか・・・」
オウンジとアルルは、頭を抱えている可那を見ながら、そう話した。
「これこれ、大丈夫だ。カナブン、お前の旅には、アルルも同行する。定期的に霧を取って貰えばいい」
それを聞いた可那は頭を抱えていた手を離して、二人の方を見た。
「レズ女と行くの?」
「アルル!」
アルルは怒鳴った。
「冗談だよ、アルル」
可那は小さい声でそう言ってから、普通の声で続けて言った。
「でも、さっきオウンジが言った、つばめ。思い出したよ。同級生の行方不明になったお姉ちゃんの名前と同じだ。五年前にいなくなった子。同じクラスのすずめちゃんのお姉ちゃん」
つづく
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