第13話 こちらのつづき その③
「娘の、アルルだ」
オウンジは可那に娘を紹介した。
黒髪にツインテール、瞳の大きな女の子だった。
「この子?夢に見た子」
「そうだ、カナブンだ」
オウンジは今度はアルルにカナブンを紹介した。
「こんにちわ。よろしくね」
アルルがそう言って可那の方に手を伸ばす。
可那なかなか手を出さず、躊躇している様だった。
「どうした?カナブン」
思わずオウンジが声をかける。
「ねーねー、この人、本当にオウンジの子?似てなくない?」
可那が背伸びして、少し屈んだオウンジの耳元で囁く。
ボコッ!
「いった~い」
オウンジは軽く可那の頭の天辺に拳骨をお見舞いした。
「わしの子だ!」
そう言うとオウンジは、両手で頭を押さえていた可那の手を片方無理矢理引き離し、アルルの手と握手させた。
「ふふふ、面白い子ね」
「最初に空気を吸い過ぎたらしい。相当子供に戻ってる。これでは旅に出せない」
「私の出番ね」
「ああ、頼むよ」
可那は二人の話を、まだ痛い、頭を押さえながら聞いていた。
オウンジの家の中は、意外とシンプルだった。
入って直ぐの広いリビングにはテーブルと戸棚が幾つかあるだけで、広々として見えた。
丁度、50年代のアメリカの家の内装に良く似ていた。
「ここに座れ」
オウンジはテーブルの周りに配置されているソファーらしき椅子に、可那に座る様に促した。
「ホイ」
可那は一声出して、勢い良くそこへ座った。
ソファーらしき物は柔らかく、可那の体を包み込んだ。
「さて、わしらも座ろう」
オウンジがそう言うと、オウンジもアルルもそれぞれ座った。
「それでは頭の中の霧を取って貰おうか。な、アルル」
「いいよ」
オウンジの言葉にアルルは答えて、可那においでおいでと、手招きをした。
可那はソファーから身を乗り出す。
アルルも可那の方に身を乗り出すと、二人の顔が直ぐ側まで近づいた。
そして、可那の耳元に唇を近づける。
「くすぐったい」
可那がアルルの吐息に笑って声を出す。
「シッ」
アルルが嗜めながら、可那の耳に唇を這わせた。
可那はまた声が出そうなのを我慢した。
そしてアルルの口は可那の耳を咥え込み、
スーッ
と、息を吸い込み始めた。
十秒程、アルルは可那の耳の穴を吸っていただろうか。
クチャ
アルルの口が、可那の耳に唾液の糸を引きながら、離れて行く。
「はい。おわり」
アルルが言った。
つづく
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ラストの方はちょっと遊んでみました。全体に遊びの様な話だけどね。