第12話 こちらのつづき その②
「これは困ったな。カナブンは随分頭の中に霧が充満しているようだな。このままでは旅に出せない。娘に頼むしかないか」
オウンジは可那を見ながらそう言った。
「娘!娘がいるのオウンジ?」
「ああ、いるよ。わしに似た可愛い娘だ。お前より少し大きいかな。わしが夢のお告げで、落ちて来る人が分かる様に、あの娘には頭の霧をある程度掃う能力がある。そうすればカナブンももう少しマシになるだろう」
「人をポンコツみたいに言うなよ!」
可那は怒った様に言った。
「ポンコツだろ?」
「・・・・・・・」
オウンジの言葉に返す言葉も無かった。
「ほれ、もう少し歩くとわしの家がある。頑張って歩こう」
オウンジが落ち込んでいる可那に声をかけた。
「あのさー、オウンジが肩に担いでる自転車を使えば、早く着くんじゃない?」
可那が言った。
「わしはこんな小さな物に乗れん。お前が一人で乗って、先に行っても、不安しかない」
オウンジは可那の顔を見て、険しい顔をして言った。
「オウンジと私、相性悪いかもね」
可那はそう言うと、プイっと横を向いて、二人は黙って歩き続けた。
暫く行くと、芝生の平野の中に一軒。坪数38坪程の総二階建ての最近の日本住宅の様な家が現れた。
「さあ、着いた」
オウンジが言った。
「すごーい!真ピンク!誰の趣味?娘さん?奥さん?」
屋根の瓦がオレンジ以外、外装の色は全てピンクの家を見て、可那が叫んだ。
「いや、誰でもない。わしらが此処で生まれた時からこの家はピンクだった。わしらこの世界の創造主が生み出した者には皆、役割があり、代わりに生活の保障がされるらしい。家は最初からあり、食べ物も、朝起きるとテーブルの上に置いてある。しかし、お前達、外から来た者は別だ。全て自分達でなんとかしなくてはいけない。言ってる事分かるか?」
「でも、古く見えないね。新しいお家みたい。それと、なんで食べ物が現れる瞬間確認しないの?起きてて」
可那はオウンジの話とは関係なく聞いた。
「わしらはある時間になると必ず眠くなる。起きている事は出来ない。上手く出来ているんだよ」
少し寂し気にオウンジが言った。
その時だった。
家のドアを開け、一人の娘が現れた。
「お父さん」
オウンジの娘、トマツ・アルルだった。
つづく
いつも読んで頂いて、有難うございます。
ブックマーク・評価・感想など頂けると励みになります。