第11話 こちらのつづき
ここはヘッドルーム。
可那とオウンジは広い平野をただ真っ直ぐに歩いていた。
芝生並みの草、と言うよりは、多分芝生の地面。たまに、杉や松の様な木がポツポツと生えている。
そして四方どの方向にも、遠くに山が見えた。
そこから推測出来る事は、この辺りに海はなく、多分日本人の頭の中ではなかろうか?という事だ。
しかし、当然可那がそんな事を気づく筈もなかった。
「ね、あれなに?」
また何かを見つけて、可那は指を差して言った。
それは三メートル程先の芝生の地面に、ポッカリ空いた直径二十センチ程の穴から顔を出していた。
「あーあれかい。あれはジョウトウウサギだ」
それは目つきの悪い、ピンクのウサギだった。
「へー、初めて見た」
そう言いながら、可那は腰を屈め、少しずつジョウトウウサギに近づいて行った。
「ウサギは初めてかい」
オウンジが後ろから可那に言った。
「ピンクのは初めて!白いのは見たことある!」
そう、元気良く可那が言った瞬間、驚いたジョウトウウサギはサッと、穴の中に隠れてしまった。
「あー、もう。オウンジが聞くから~」
可那がオウンジの方を向いて文句を言うと、オウンジは違う方を見ていた。
「どうしたの?」
可那はオウンジの方に駆け寄りながら聞いた。
オウンジは左前方十メートル程先にある、松の様な大木の方を見ていた。
「いや、今あの木の所に、以前お前の様にわしが拾った女の子に似た子がいてな。しかし、とっくに旅立って、この辺にいる筈はないんだが」
何かおかしいという顔で、オウンジは言った。
「あの木の所?誰もいないよ。私みたいに落ちて来た人って、名前覚えてる?知り合いだったりして」
「ハハハハ、お前は殆ど前の世界の記憶がないんだから、例え知り合いでも、きっと分からないよ。はて、名前はなんだったかな・・・たしか・・・たしか、つばめとか言ってた様な」
「つばめ!」
可那は叫んだ。
「なんだ知ってるのか?」
「ううん、知らない!でも、つばめって言葉は聞いた事ある様な・・・」
そう言いながら、可那は一所懸命何かを思い出そうとした。
「ほー、微かに記憶が残っているのかな?それは良かった。ヘッドルームから脱出するのには、記憶がある方が有利だと言うからな」
「そうなの?」
下を向き考えていた可那が顔を上げ、オウンジの顔を見上げながら言った。
「そう聞いてるよ。それで何か思い出したかね」
「全然!」
可那は微笑みながら大きな声で言った。
つづく
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