第10話 夜の公園のすずめ
「可那が何処にいるか、知ってるの?」
思わずジャングルジムの上を見上げ、幸一は呟いた。
「さあ、どうでしょう?憶測は幾つか出来るけど、知っている訳じゃない。だから教えてあげるとは言ってない。一緒に探してあげると言ったんだよ。幸一君」
そう言うと、すずめは幸一に背を向け、ジャングルジムをスルスルと降り始めた。
途中振り返り、幸一の方を見ると、まだすずめの方を見ていた。
「見上げても、パンツは見えないよ。幸一君。真っ暗だからね」
すずめはそう言いながら、ジャングルジムを降り続けた。
そして片方の足のつま先が地面に触れたのを確認すると、ピョンっと軽く飛んで、横に一回転して、幸一の方を向いた。
「どうする?一緒に探す?」
首を傾げ、はにかみながらすずめは言った。
幸一は暫く黙って考えてから、口を開いた。
「いいよ。警察も捜索を打ち切っちゃって、調べてはいるみたいだけど、アテに出来ない。どうせ一人でも探そうと思ってたし。いいよ」
それを聞いてすずめは満面の笑みでニヤリとした。
「じゃあ契約は成立ね。いい?幸一君はこれから私に守られるんだよ。分かった?」
「守られるって、どういう事?」
「知らぬは本人ばかりなり」
そう言うとすずめはまた、ニヤリと笑った。
「幸一君はずっと佐藤可那さんに守られていた事を知らないんだね。ホント可愛い。可那さんがいなくなって、もう一週間経つ。そろそろ色々動き出す筈だから、おいおい分かる」
微笑みながらそう言うすずめの顔が、幸一は怖かった。
夜がどんどん更けていく中、二人は街灯のない暗い公園の中で、そのまま黙って二分位立ち尽くしていた。
「帰る」
突然すずめが声を出した。
「急に言うからビックリした。何処へ帰るの?木野さんちって、どっち?」
突然の声に驚きながら幸一は聞いた。
しかし、その声が聞こえなかったかの様に、すずめは幸一の脇を通り、公園の出口へと向かった。
そして公園を出た瞬間、幸一の方を振り返り言った。
「はてさて、すずめのお宿はどちらでしょう?」
「またそれかい?ねーねー、木野さんって何者?」
幸一は勇気を振り絞って聞いた。
すずめはまた、不敵な笑みを浮かべた。
「時を駆けてきた少女。わかる?ストレートに言うとヤバイでしょ。そういう事」
そう言うとすずめは片手を上げて、幸一にバイバイしながら、公園の前の道路を歩いて行った。
幸一はすずめの姿が見えなくなると、身震いした。
「何、あいつ?怖っ。・・・僕も帰ろう」
つづく
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