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オキュパイド・アース ~占領下の地球~ 原案  作者: 振木岳人
ぺイル・ライダー覚醒編
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僕は…ちょっと怖いです




「ズール1の3機、他艦のAPEに合流!ポイント・アルファまで15秒」


「旗艦【出雲】からDLデータリンク通信!ポイントアルファ到達後、ミッションフェイズ1に即時移行!」




あわただしい会話が繰り広げられる、リスキー・ビスキー2のCIC。


壁にズラリと並ぶモニターを見詰めるエルアラメイン少佐や士官達。

椅子に座り目の前のモニターを凝視するオペレーター達。

様々な階級と役割を持った者達が、「フェイズ1」開始を、固唾を飲んで見守っている。


そのCICの一角に、リスキー・ビスキー2の前身である、リスキー・ビスキーを良く知っている者達が固まっている。


ジョーカー1訓練小隊の小隊CIC要員として詰めている、伊達庸子「少尉」そして、エレノア・シグニス「准尉」。

更に彼女達を統括し、APEパイロットに指示を出す、部隊長の朝霧少佐が詰めていた。




朝霧少佐「伊達少尉」




伊達「はい」




朝霧少佐「ジョーカー1の現状報告」




伊達「ジョーカー1の4名、チェックを終わらせて待機室にいます」




朝霧少佐「そうか、ちょっと席を外す。後は頼むぞ」




そうい言いながら、ツカツカとCICを退出して行く朝霧少佐。

ジョーカー1出撃まで後15分に迫っている中、

指揮官のCIC退出に、伊達とエレノアは目を丸くさせていた。




艦内通路に出て、格納庫に向かう朝霧少佐。


厳しい表情は崩す事無く、脳裏には別の思いが…。


前の訓練航海で、和泉艦長の誘いにより、メリル中佐と艦長室で夕食を取った際の会話を、思い出していた。




寝台と机でその面積がほとんど取られてしまう、狭い艦長室。

無重力状態の中、パイプ型のシートに身体を固定しながら、

チューブ入りの味気ない夕食を口にする三人。




和泉艦長「いくら夕食会と言っても、こんなチューブ食じゃ味気ないもんですね(笑)」




まるで、朝霧少佐とメリル中佐の衝突を気にしていないかの様に、和泉艦長は苦笑しながら、

「ビーフシチュー」とラベルの貼られた宇宙食を、口をすぼめて吸っている。




朝霧少佐「…」




メリル中佐「…」




当の本人達二人は、何故艦長が急に呼び出したのか、理解しかねており、

怪訝な表情を浮かべながら、極めて無口に振る舞っている。




和泉艦長「…さてと、朝霧少佐?」




朝霧少佐「はっ!」




和泉艦長「そうかしこまらないでください(笑)これは、艦長日誌にも記載されない、完全オフレコの食事会ですから」




朝霧少佐「…はぁ」




当惑する朝霧少佐を後目に、和泉艦長はズバンと核心を切り出した。




和泉艦長「朝霧少佐、近々第3軍に、作戦命令が下ります。もちろん、ジョーカー1訓練小隊を含めた作戦命令が」




朝霧少佐「ジョーカー1も!?」




和泉艦長「そうです、ジョーカー1も戦列に参加させよとの命令がありました」




朝霧少佐「お言葉ですが艦長!」




和泉艦長「少佐の訓練レポートは、毎日欠かさず確認しています。少佐の気持ちは痛いほど判りますが、激昂なさらず私の話を聞いてください」




朝霧少佐「…取り乱してすみません」




和泉艦長「私も実は、少佐と同じ意見なのですよ」




朝霧少佐「…艦長」




朝霧少佐は、ジョーカー1訓練小隊の出撃を拒否する構え。

何故なら、ヒヨッコの子供達を戦場へ送り出したくないから。

そして、朝霧少佐の揺らぐ事の無いその信念に、和泉艦長も同調している…。


メリル中佐は二人の会話に割って入る事は無く、

沈黙を保ったまま一つしかない瞳を鋭く輝やかせた。




和泉艦長「ただ、一つだけ…ジョーカー1に関して、非常に疑問に思う事があります」




朝霧少佐「…?」




和泉艦長「第3軍総司令部が、リスキー・ビスキー2出航当初から、私が日々提出する日誌に関しては、

【ジョーカー1訓練小隊の報告を日々求む】と、厳命して来たの」




朝霧少佐「総司令部が!?」




朝霧少佐は驚愕する。


当たり前の話、総司令部が報告を求めるのは、佐官クラスの部隊長に対して、部隊運営の結果全体であり、

小隊の…それも未成年者を集めた訓練小隊の動向など、総司令部が報告を求めて来るレベルでは無いのだ。




朝霧少佐「彼らは…特別な存在だと言う事ですか?」




和泉艦長「少なくとも、総司令部にとっては…ね」




朝霧少佐「…」




ぽん♪


真剣な顔付きだった和泉艦長が、小さい華奢な手を叩き、

急にいたずら小僧の様な訳ありの笑顔にと変わる。

そして、視線をメリル中佐に切り替えながら、こう切り出したのだ。




和泉艦長「そこで、メリル中佐に質問です♪」




メリル中佐「艦長、私は…」




(なるほど、そう来たか…)

個別に追及されるのではなく、和泉艦長と朝霧少佐が結託し、最重要機密情報に触れようとして来た。

いたずらっぽい笑みを浮かべながら迫って来る和泉艦長に、メリル中佐の表情が険しくなる。




和泉艦長「まあまあ、そんなに身構えなくて良いですよ(笑)中佐の立場もあるでしょうから。

ですから、基本的なところで、お互い誤解の無い様にしておきたい。そう言う事です♪」




メリル中佐「はあ…」




和泉艦長「今時点での、最初で最後の質問です。どうせ実戦が始まれば、私も朝霧少佐も、嫌でも知る事になるでしょうから」




メリル中佐「…」




和泉艦長「ジョーカー1訓練小隊の秘密…プロジェクト・フォー・ホースマン(Four Horsemen)とは、

【彼ら】に隠されているのですか?それとも、【4機のプロトタイプAPE】に隠されているのですか?」




朝霧少佐「…プロジェクト・フォー・ホースマン?」




朝霧少佐のつぶやきに、笑顔で返す和泉艦長。


沈黙する事数十秒…メリル中佐は躊躇している。

いずれは、関係将官に対して隠す事すら困難になるであろう内容だが、

【プロジェクト・フォー・ホースマン(Four Horsemen)】は優先事項特1。

つまり、軍内では最上級の秘匿条項である。


それに今、メリル中佐の権限で、目の前の二人に話せる事があったとしても、

話した内容を二人がどう受け止めてくれるのかも、疑問である。無用の動揺は避けねばならないのである。


沈黙したまま、思案に暮れるメリル中佐。

そんなメリル中佐の背中を押す様に、和泉艦長は再び口を開く。




和泉艦長「我々現場責任者は、いざという時どちらを大切にすべきか…。それを教えていただきたいのですよ。

助けるべきは子供達なのか、APEなのか。メリル中佐、お教え願えませんか?」




メリル中佐「…両方です。それ以上は、今現在私が答えられる立場にありません」




メリル中佐はとうとう答えた。


カオル達も特別で、4機のプロトタイプAPEも特別な存在なのだと。




場面は戻り、リスキー・ビスキー2の艦内通路。

ツカツカと、大股で歩く朝霧少佐。


ややクセの強い黒髪を肩甲骨まで垂らし、キリっと整った顔立ちの彼女。

瞳には彼女の固い意志を映し、一切視線を動かす事無く、視線の先の扉へと足を速める。


扉には大きな文字で「パイロット待機室」と表示されていた。


バアアンッ!!!


パイロット待機室に誰がいるのかなどお構いなしに、朝霧少佐は時間を惜しむかの様に勢い良く扉を開ける。

待機室内には、その扉を開ける勢いに驚いた4人の少年少女が、それこそ、

目をまんまるに見開きながら、椅子に座りながらも背筋をピンと立てて硬直している。




カスミ「た、隊長…」




驚きを隠せず、カスミがヨレヨレの声で反応し、慌ててカオルが席を立つ。




カオル「き、気をつけ!」




ザッ!


カオルの号令に反応し、直立不動の姿勢を取り、朝霧少佐に向かって敬礼するカオル、恭香、カスミ、ヒロノブ。

朝霧少佐は軽く返礼し、そのままじっと4人の顔を見回す。




ヒロノブ「…隊長?」




ヒロノブが耐えきれずに声を出した時…




朝霧少佐「カオル、恭香、カスミ、ヒロノブ」




苗字を呼ばず、そして階級をも付けず、朝霧少佐は4人を名前で呼ぶ。

動揺し、どう反応して良いか反応に困るカオル達。




朝霧少佐「君達にとっては初めての実戦だ、怖いか?」




カスミ「訓練の延長線上、単なる通過点です」




ヒロノブ「姉さんに同じく♪いつかは通る道です」




朝霧少佐の唐突の質問に、カスミとヒロノブが即答する。




恭香「わ、私も…大丈夫です」




カオル「僕は…ちょっと怖いです」




カスミ「カオルさん?」




カオル「怖いから、だからしっかり見て、しっかり判断して、みんな無事で帰って来たい…そう思います」




恭香「カオル君」




朝霧少佐の口元に、かすかだが笑みが漏れる。

そのまま、朝霧少佐はカオルの肩に手を乗せながら、




朝霧少佐「撃墜王はまだ先の話だ。今日はとにかく、全員無事で帰って来る事を考えろ」




カオル「…隊長」




朝霧少佐「良いな、命令だぞ」




4人の顔を再び見回しながら、朝霧少佐は待機室を出て行った。





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